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電柱大国
空一面に張り巡らすように電柱から広がった電線。都市部ではおなじみの光景ですが、地震や台風などで倒れた電柱が道をふさぎ、避難や救助活動の妨げになる恐れが指摘されています。防災や安全面から、電線や通信ケーブルなどを地中化する動きが日本でも少しずつ広がりつつあります。

電柱から広がった電線の風景(イラスト)「日本は約3,300万本の電柱が立つ『電柱大国』」。電柱をなくす運動に取り組むNPO「電線のない街づくり支援ネットワーク」(大阪府吹田市)は指摘します。国土交通省によると、ロンドンやパリは70年代後半に無電柱化(地中化)率100%を達成しました。ニューヨークも同時期に70%を超え、現在はほぼ100%に。一方、日本で「無電柱化計画」が始まったのは86年で、07年3月末の無電柱化率は市街地の幹線道路でさえ11.8%、全体では約2%にとどまります。

95年の阪神大震災では、倒壊した電柱が道路をふさぎ、消火や救助活動が遅れるケースが各地で相次ぎました。地中化の最大のメリットは強い耐震性にあります。同ネットワークによると、地中化は電線や電話線を地下溝内の配管に通す「共同溝方式」が主流です。阪神大震災の際、神戸など5市の電話回線の被災率は、地上部分の2.4%に対し、地中は0.03%と約80分の1でした。

ロンドンやパリ、ニューヨークに比べて電柱だらけ(イラスト)毎年のように台風に見舞われる沖縄県も、防災の観点から地中化に取り組んでいます。県道路管理課によると、宮古島では03年9月の台風14号で電柱約900本が倒れ、ライフラインが寸断されたり、道路がふさがれる被害が出ました。県は04年度から5年計画で県内の幹線道約37キロの整備事業を進めています。うち11キロは沖縄本島以外の離島で、同課は「港や病院と住宅地を結ぶ道路を中心に進めている」と言います。

災害時に限らず、地上から電柱がなくなることで歩道が広がり、ベビーカーや車椅子が通行しやすくなるなど、日常生活にも地中化のメリットは浸透しつつあります。

無電柱化で街がスッキリ!(イラスト)一方、最大の課題は巨額のコストです。共同溝設置は長さ1キロ当たり約5億6000万円かかります。工費は国・自治体と電線管理者の電力・通信業者が6対4で負担していますが、自治体の財政状況や電力・通信の需要予測の難しさも絡み「頭の痛い問題」と国交省。復旧工事も地上の方が容易で、「地中化すると被災場所の特定が難しい」(関西電力)という一面もあります。

しかし、同ネットワークは「電柱は災害時、命を奪う凶器にもなる。災害に強い街をつくるには、地中化を一層進める必要がある」と力説します。国交省道路局地方道・環境課も「防災や安全、快適な歩行スペースを確保する点からも地中化のニーズは高まっている。今後、自治体や電力会社の負担を軽くする制度を検討したい」と話しています。

毎日新聞生活家庭部

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