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肺がん治療薬「イレッサ」
日本人は1年間に約33万人が、がんのために亡くなっています。この中で最も多いのが肺がん(約20%)です。7年前に登場した肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)は劇的にがんを縮小させ、症状を改善させる一方で、副作用のために患者が相次いで死亡しました。使用の是非をめぐって激しい議論が起きました。どういうがん患者に有効なのでしょうか。

医師から肺ガン治療の説明を受ける様子(イラスト)イレッサはがん細胞の増殖にかかわる因子(上皮成長因子受容体=EGFR)の働きを阻害し、分子標的治療薬と呼ばれます。

有効の是非をめぐる議論をきっかけに研究が進み、アジア人、女性、非喫煙者、肺がんのうち腺がんに効きやすいことが分かってきました。そして、人によって効果が異なる原因の解明が重要になりました。

その突破口となった成果が04年の米マサチューセッツ総合病院の研究チームの発見です。イレッサの標的となるEGFRを作る遺伝子の一部が変異していると標的薬の効果が高いことを解明しました。変異の頻度はアジア人、女性、非喫煙者、腺がんに多かったのです。

2008年9月には、スウェーデンで開かれた欧州臨床腫瘍(しゅよう)学会で、中国の研究者が世界の注目を集める分析を発表しました。2006〜2007年、日本、中国、韓国などアジア9カ国が実施したイレッサに関する大規模な臨床試験の結果です。喫煙歴や抗がん剤による治療歴のない重い症状の非小細胞がん患者1217人(うち日本人は233人)が参加。イレッサと従来の抗がん剤(カルボプラチンとパクリタキセルの併用)の効果を比較しました。

薬を飲む様子(イラスト)遺伝子変異のある患者261人をイレッサ群(132人)と抗がん剤群(129人)に分けて解析すると、症状が落ち着いている生存期間は、イレッサ群が抗がん剤群に比べて長く、逆に変異のない人は抗がん剤の方が長いことが分かりました。

一方、国内でも遺伝子変異をもった重い非小細胞肺がん患者148人を対象にした東北大などの七つの臨床試験で、イレッサの効果が確かめられました。喫煙者と非喫煙者で効果の差がほとんどなく、変異があれば喫煙者でも効果が認められました。

肺がん治療に詳しい医師は「臨床経験と過去の臨床試験結果から見て、遺伝子変異のある人とない人では、効果に劇的な差がある。変異のある人ではがんが小さくなる度合い(奏功率)が約80%なのに対し、ない人は10%程度だ。変異のある人はイレッサを使う価値は高い」と話しています。

また、別の医師は自らの臨床治療経験から、「イレッサを使った場合、平均的に言って、変異のある患者は、ない患者に比べ、生存期間が1年半〜2年程度延びるといえる。また、イレッサを最初に使っても、従来の抗がん剤のあとに使っても、効果に大差はない」と語っています。

毎日新聞生活家庭部

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