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学生の読書離れを止めようと大学が奮闘しています
大学生は放っておいても本を読む。それが常識ではなくなりつつあります。全国大学生協連の昨年の調査では、1日の読書時間ゼロの大学生が約4割にのぼっています。社会人になる前の「最後の砦」として、学生の本離れを食い止め、読書指導をしている大学が増えています。

本を読む大学生(イラスト)

フェリス女学院大学緑園キャンパス(横浜市)内にある付属図書館は01年に建てられた全面開架式(蔵書約27万冊)です。図書館の入り口近くには現代作家の文庫約5000冊を集めたコーナーもあります。明るい館内にはゆったりしたソファ席もあり学生たちが静かに読書をしていました。

毎週月曜日の昼休み、「読書運動プロジェクト」(読プロ)の学生メンバーが図書館で会合を開いています。メンバーは文学部の学生を中心に約10人で、読書会のテーマ設定や講演会の講師選定などを話し合います。リーダーで文学部3年の女子学生は「読んだことのなかった分野の本も読むようになった」と話しています。

「読プロ」は、学生が社会に出る前に読書の楽しみや喜びを知る機会を提供することを目的に、開館直後の02年度に始まり、学生、教員、職員の3者が運営しています。学生が課題図書「フェリスの一冊の本」を選び、読書会で意見交換したり、筆者や研究者らを招き講演会も開いています。これまでに「風の歌を聴け」(村上春樹)▽「銀河鉄道の夜」(宮沢賢治)▽「バッテリー」(あさのあつこ)——などが選ばれました。今年は環境をテーマに「センス・オブ・ワンダー」(レイチェル・カーソン)▽「おくのほそ道」(松尾芭蕉)を選びました。

屋外読書会、フィールドワークのほか、学生対象のエッセーや創作のコンクール、学外での朗読活動などもあり、「個の読書」から「コミュニケーションの手段としての読書」へと輪が広がっています。

「読プロ」がスタートした02年の貸出冊数は前年より約1万冊増え、現在は学生1人当たり年約20冊を借りています。担当教授は「効果はすぐに表れるものではないが、学生時代に読書の種をまくことは有効」と話しています。

帝京大学では今年度から、教育学科2年生の必修科目「教育研究リテラシー」に読書指導を取り入れました。「教師を目指す学生が本を読まなければ将来生徒に読書指導はできない」と同学科の担当教授は話しています。授業を担当する各教員が推薦図書リストを作成し、読んだ本の内容や感想などの読書記録をつけさせています。

大学で学生が本を読んでいる様子(イラスト)

読書記録のノートの巻末には、分野ごとに読んだ冊数を棒グラフにできる欄があり、読書の偏りもわかります。大学1年生までほとんど本を読まなかったという同学科4年の男子学生は、読書ノートをつけるようになって読書量は増え、2年間で約600冊読破しました。担当教授は大学生の読書を「問題を解決するための情報収集の一つ」として、社会に出る前の大学時代にこそ身につけてほしいと期待しています。一過性ではなく継続的に読書をするには記録をつけ続けることが大切だという。

全国の212大学生協が加盟し、約150万人の会員を抱える全国大学生協連では、40年前から読書情報誌「読書のいずみ」を発行しています。創刊当初は年1回の発行で、大学教授が選んだ古典や名著中心の図書目録でした。「大学生になったからには、最低限これだけは読んでほしい」という学生の読書の羅針盤としての役割を担っていました。

1981年に学生の1日の平均読書時間が1時間を切り、より読書の動機付けになるようにと読み物主体に編集方針が変わりました。現在は年4回発行し、学生中心の編集委員会で記事内容を企画し、取材、執筆もしています。「カレーライス」「犬」などの身近なテーマを選び、本の紹介だけではない特集を組んでいます。編集長は「以前の学生は古今東西の古典や名著を読んでいないことを『恥ずかしい』と思ったが、今の学生はまったくそうは思っていない」としたうえで、「本を通じた教養の共有ができにくくなっているが、読書が楽しみの一つになってほしい」と話しています。

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2010年6月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。