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心をリセットする「座禅」
座禅を学び、実践する人が増えているようです。都心のホテルでは出勤前に連続講座が開かれ、伝統教団の本山では一泊の参禅会が盛況です。座禅で現代人の何が変わるのか体験しました。

座禅をする様子(イラスト)平日の午前6時45分。東京タワーを望む「東京グランドホテル」(東京都港区)にコート姿の人たちが集まりました。「朝活禅」と題して曹洞宗総合研究センターが企画した、初心者向けの全6回の座禅講座です。参加したのは約20人で、20〜30代の女性会社員が目立ちます。

「口をすぼめ、ゆっくり静かに長く息を吐く。骨盤を立たせることが重要。おなかの底から呼吸するイメージです」。参加者は和室で1人ずつ座蒲(ざふ)という丸い座布団に座り、僧侶から姿勢の指導を受けます。座蒲には半分より浅く座り、両足をそれぞれ反対側のももの上に乗せ、両膝とお尻の3点で体を支えます。両足を組めない人は片足だけ組みます。

続いて隣の研修道場に移り、座蒲に座って足を組んで壁に向かいます。視線は半畳先に落とし、鐘が3回鳴るのを合図に座禅を開始します。聞こえてくる音は右から左へ受け流し、約20分間、自分と向き合います。

座禅中に眠気に襲われる(イラスト)インテリア業界でマーケティングなどを担当する東京都内の女性(36)は禅語の本を読み禅宗に興味を持ちました。仕事では日夜頭を働かせ、考えすぎるほど考え抜いています。「座禅は正反対。余分な考えを捨てていき、本来の自分に戻る。あれやこれやが、さまつなことに思え、集中すべきものが見えてきた」と話しています。

曹洞宗大本山の総持寺(横浜市鶴見区)では週末、「禅の一夜」と題した一般人対象の一泊参禅会があります。学生から高齢者まで31人が集まった1月末に体験しました。

用意された服に着替えて衆寮(しゅりょう)と呼ばれる座禅堂に入ります。長い廊下を歩き薄暗い衆寮に着くと、僧侶の指示で座禅が始まりました。

「後ろ頭で天を突く感じで、背筋をまっすぐに。一呼吸一呼吸を実行します」。僧侶の声が響きます。警策(きょうさく)(修行者をたたいて励ます棒)を持った修行僧の歩く影が壁に映りました。集中できていないと思ったら自分から合掌し、肩をたたいてもらいます。雑念は追いかけてはいけません。頭に浮かぶままにしておくのは、初心者には難しく、足が痛くなり、組み替えたいのをひたすら我慢しました。

警策でうたれる様子(イラスト)40分で座禅は終了しました。すぐに一息ごとに半歩歩く経行(きんひん)という禅に移り、その後再び座禅です。ここで足を組み替えやっと楽になりましたが、今度は寒さが気になりました。眠気に襲われウトウトしては、背筋をまっすぐに直します。

精進料理の夕食の後、仏教の講義を1時間受け、午後9時に就寝しました。翌日は午前4時前に起床し、衆寮を掃除しました。長い廊下をみんなで雑巾がけしますが、バケツの水が氷のように冷たく感じました。

2日目は40分の座禅を3回行いました。前日で慣れてようやく両足を組め、姿勢が楽になりました。隣の人が何度も警策でたたいてもらっています。警策がしなる音を聞き「嫌だなあ」と思っていると、背中をつつかれました。「合掌して、合掌して」と小声が聞こえ、何だろうと思っているうちに右肩をバシッとたたかれました。痛い、というよりは、熱い。集中していないのを見抜かれたようです。

2度目の参加という千葉県船橋市のケアマネージャーの男性(43)は、禅の映画を見て関心を持ち、毎朝6時前に起き、40分座禅して出勤するといいます。親の介護を押し付け合う家族の間に入って、介護の計画を立てる仕事です。認知症の高齢者を抱えた家族からの相談も年々増え、ストレスはたまるばかりだと言います。でも「参禅会から帰宅すると、数日間は気持ちが動揺しない。いらいらや逃げ出したい気持ちがきれいさっぱり消えうせ、リセットされます。座禅は歯磨きや洗面と同じ生活の一部。心を整える習慣です」と話していました。

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2011年3月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。