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増えるペットの認知症
神奈川県藤沢市の動物病院の院長が、子犬のころから診てきたウイペット種のメス犬「プリン」の異変に気がついたのは2年前でした。人懐っこく、名前を呼ぶとすぐに駆け寄ってきたのに、急に反応が鈍くなったのです。15歳のプリンは人間でいうと「おばあちゃん」。病院の院長は「認知障害症候群(認知症)」を疑いました。

ワシ、こう見えて本当はおじいさんなのよ(飼い犬の心の声)飼い主の60代男性にプリンの家での様子を尋ねると、昼に眠って夜に起き出し夜鳴きを繰り返したり、散歩やゲームに興味がなくなったということでした。好き嫌いがなくなり、よく食べるようになりましたが、ガリガリにやせて1年後に多臓器不全で死にました。ひどい夜鳴きに悩まされながらも、飼い主は最期まで愛情を注ぎ、介護に尽くしました。

ペットフード協会が10年度に行った調査によると、飼い犬の平均寿命は13.9歳で、医療技術の進歩やペットフードの改良で、延びているようです。

飼い主とペットが一緒に過ごせる時間が長くなる一方で、高齢化したペットが認知症を発症するケースが目立ってきました。動物病院の院長は「ここ数年、相談に来る飼い主が確実に増えている」と話しています。犬に比べると少ないものの、猫も発症するそうです。

犬の認知症は20年ほど前から研究が始まり、10年前に一般的に知られるようになりました。段階的に進行する人間のアルツハイマー型認知症と似ていて、早ければ11歳で発症し、13歳を過ぎて急増します。発症すると、夜鳴きを続けたり、家から抜け出し徘徊(はいかい)するなど、飼い主を悩ませるようになります。

犬と散歩する様子(イラスト)認知症は根本的な治療法がなく、「名前を呼んだときの反応が鈍くなった」などの初期症状を見逃さず、病気の進行を遅らせるように対処することが重要です。しかし、犬の年齢を人間の年齢に置き換えて考えることができず、「15歳はまだ子ども。ボケるわけがない」と愛犬の認知症を受け入れられない飼い主が多いようです。介護に手を焼き、飼育放棄する人もいます。

愛犬に認知症の兆候が出た場合、どのような処置が有効でしょうか。「年だから眠っているのだろう」と放置せず、なるべく話しかけたり、遊んだりして刺激を与えることが大切です。また、動物病院にかかり、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を投与すると、症状が改善することもあるそうです。

徘徊やグルグルと同じ場所を回り続けるようになった場合、係留飼育は避けた方がよいようです。リードが犬の首や体に巻きついて危険なためです。前進しかできなくなるので、四角い室内では壁に頭をぶつけてしまいます。そこで行動範囲を柵で丸く囲うと歩き続けることができ、ストレスが軽減されます。

認知症になった犬向けのドッグフードも販売されています。日本ヒルズ・コルゲート(東京都江東区)の「サイエンス・ダイエット シニアプラス」はビタミンC、ビタミンE、ベータカロテンなどの抗酸化物質を多く含み、病気の進行を遅らせる効果があります。同社に勤める獣医師は「いつもの散歩コースを忘れるなどの兆候があれば、すぐに使ってほしい」と話しています。

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2011年5月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。