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食中毒が多発しています
富山、福井の焼き肉店で生肉のユッケを食べ、4人が死亡した集団食中毒がありました。生の牛肉は広く提供されていますが、厚生労働省によると、国の衛生基準を守って出荷された牛肉はほとんどありません。グルメ志向と日本独特の生食文化が土壌となった事件です。今こそ、食中毒の怖さを知っておきたいものです。

食中毒の原因は腸管出血性大腸菌O111でした。腸管出血性大腸菌は家畜の腸に生息し、解体する時に肉の表面に付着して流通すると食中毒の原因となります。

厚生労働省によると、この菌による食中毒は昨年、27件で患者数は358人でした。食中毒の総数1254件の2%ですが、病院の受診患者も集計した国立感染症研究所の調べでは3000〜4000人もの患者がいるといいます。

生肉の周りにばい菌がいる様子(イラスト)主な原因はユッケなど生の牛肉です。厚労省は96年に牛の生レバーで起きた病原性大腸菌O157の食中毒事件を受け、98年に「生食用食肉の衛生基準」を策定し、食肉処理場や飲食店に対し、「肝臓(レバー)を取り扱う場所は他の内臓の取扱場所と明確に区分する」「(大腸菌の付着が考えられる)肉の表面は専用ナイフで削り取る(トリミング)」などを守るよう通知しました。

ところが、この衛生基準を守っているのは馬肉だけです。全国約150カ所の食肉処理場で国の基準を順守して生食用の馬肉を出荷しているのは青森、福島、長野、熊本など12カ所しかありません。ほとんどの牛肉は生で食べられる状態で出荷されていないのです。生の鶏レバーや半生の鶏ワサで食される鶏肉は、基準すらありません。

馬刺しを提供することの多い熊本市では、市食肉センターが独自の厳しい衛生管理マニュアルを作っています。担当者は「確実なトリミングや包丁の熱湯消毒など、厳しい基準を守る必要がある」と話しています。

基準外の生肉が流通する事態に、専門家は「腸管出血性大腸菌による食中毒患者は減少していないので、生食は避けて」と警告していました。内閣府食品安全委員会も昨年4月、「牛肉を生で食べるのはひかえること」とホームページで呼びかけていました。

腸管出血性大腸菌は馬より牛のほうが数が多く、食品安全委によると、家畜処理場に運び込まれた牛の約10%が、O157など腸管出血性大腸菌をもっています。牛肉への平均付着率は0.1〜0.2%、最も高い牛レバーは1.9%です。

牛肉で馬肉並みの衛生管理はできるのでしょうか。食中毒問題に詳しい獣医師は「生食用の馬の解体や加工は病院の手術室のようなところでやっている。同じことを牛でやれば労力と費用がかかり、生肉の値段のアップは避けられない」と話しています。集団食中毒を起こした焼肉店はユッケを1皿280円で提供していました。安価なのには理由があったわけです。

家族で焼き肉を食べている様子(イラスト)

また飲食店内で、肉に付着した大腸菌を除去し、他の食材に移さないようにするには相当の配慮が必要です。食品の衛生管理の実情に詳しい専門学校教授は「生肉を扱うのに、菌を分析する装置を備えていない店もある。生肉にさわった手でサンドイッチを作る例もある」と話し、業者が衛生への意識を高める必要性を指摘しています。

消費者も十分な警戒が求められています。東京都食品監視課は「肉の表面を削っても、完全に菌が取りきれるわけではない」と述べ、生肉は基本的に危険との意識を持つよう呼びかけています。

食中毒から身を守るには生食を控えるしかありませんが、殺菌が十分でないとサラダで感染することもあります。調理の際はどんな注意が必要なのでしょうか。食品のリスク評価に詳しい大学教授は、次の点を守るようアドバイスしています。

<1>75度以上で1分間以上加熱する
<2>調理後すぐ食べる
<3>まな板は食材ごとに洗い、肉にふれた包丁は必ず洗ってから野菜を切る
<4>生食用の野菜はよく洗う
<5>乳幼児やお年寄りは生食を避ける

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2011年6月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。