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放射線に効くって本当?
東日本大震災による福島第1原発事故で、放射汚染への不安が広がっている中、放射線が人体に与える影響を減らすためのさまざまな情報がインターネット上などで飛び交っています。国の暫定規制値の放射線量を超えた食品はごく一部ですが、少しでも影響を軽減したいという消費者の思いが背景にあります。「みそがいい」「ビタミンCがきく」など各種の情報は、どこまで信頼できるのでしょうか。

よく知られているのが「玄米とみそ汁、海藻の食事には効果がある」という説です。1945年8月9日、長崎に原爆が投下された後、長崎市内の病院の医師だった故秋月辰一郎氏が献身的に進めた食事療法が基になっているようです。秋月氏は塩をふった玄米のおにぎりや、ワカメやカボチャなどをたくさん入れた濃いみそ汁を患者らに勧め、砂糖の摂取を禁じました。この食事療法を実践した人たちが「長く生き延びた」とされています。

福島県郡山市のクリニック院長は秋月氏の食事療法について、「今の科学的な根拠から見ると、塩の取り過ぎは健康によくない。しかし、穀類や豆類、野菜、果物を中心とした食事は、今でも健康によい食事であり、貴重な歴史的体験だった」と評価しています。

よーく洗って・・・野菜を洗っている様子(イラスト)みそを食べると放射線の障害を軽減できる、との説は他にもあります。広島大原爆放射能医学研究所の元教授らが90年代に実施したマウスの注目すべき実験があります。乾燥させた赤みそを10%混ぜたえさをマウスに1週間食べさせた後、放射線の一つであるX線(6000〜1万2000ミリシーベルト)を照射したところ、普通のえさや食塩を混ぜたえさを食べたマウスに比べ、小腸の細胞がより多く再生されたという結果が得られました。発酵時間が長く熟成されたみそほど再生の効果が高くなりました。詳しいメカニズムは分かっていませんが、X線を照射した後にみそを食べさせた実験では再生効果はありませんでした。「事前にみそを食べれば、放射線の害が軽くなる」という実験結果です。実験を担当した元教授は「人に当てはまるかどうかは分からない」としながらも、「みその料理を食べること自体に害はないので、個人的には勧めたい」と話しています。

ビタミンCが放射線障害を防ぐ、との説もあります。防衛医科大などの研究グループは、マウスに大量の放射線を当てた場合、事前にビタミンCを与えておくと、胃腸の粘膜がはがれ落ちる度合いが減って生存率が上がる、という実験結果を昨年発表しました。ビタミンCが放射線の急性障害を軽くしたといえます。海外でも、ビタミンCの事前投与でマウスの精子の生存率が上がるなど、ビタミンCの効果を示す動物実験の報告例が多数あります。

東京都健康長寿医療センター老化制御研究チームは「マウスの実験を人に適用できるかは疑問だ。現状では確実なことを言えるデータはない」としています。ただ、ビタミンCは健康維持に必要であるうえ、精神的なストレスなどで消費されやすいのも事実で、研究チームは「放射線障害の問題とは別に、被災者はビタミンCの摂取を心がけた方がよい」と指摘しています。

食物繊維の一種であるリンゴのペクチンがよい、という説はどうでしょうか。チェルノブイリ原発事故で被ばくした子供たちの治療の一環として、ウクライナの学者グループがリンゴなどに含まれるペクチン(1日2グラム)を加えた食品を18〜25日間与える試験をしました。ペクチンを摂取した子供たちは、比較のため偽の食品を摂取した子供たちより、体内のセシウム量が減少しました。「ペクチンがセシウムと結合して排せつを促した」とされました。

この結果を疑問視する専門家もいますが、ペクチンの作用を約30年間研究した専門家は「人の試験なので貴重なデータだ。水溶性ペクチンは加熱すると増えるので、電子レンジでリンゴを温め、1日1〜2個食べれば効果的ではないか」と話しています。ただし、ペクチンの取り過ぎは有用ミネラルを減らすため注意が必要です。

いただきまーす! 家族でご飯を食べる様子(イラスト)

各種のサプリメントに関する情報も多くありますが、動物実験が中心で、人に応用できるほど科学的根拠が確かなデータはほとんどありません。放射線医学総合研究所の専門家は「低線量の放射線で問題になるのはがんになる可能性だ。がんを促す喫煙、食べ過ぎ、紫外線、運動不足などに注意すれば十分だ」と強調しています。

とはいえ、健康への影響が心配で、自衛策を求める消費者は多いようです。食品を介した放射性物質の摂取を減らすため、家庭でも簡単にできる方法があります。

まず、台所では「水洗い」が基本です。ホウレンソウなどの野菜や魚を水洗いすれば、表面に付着した放射性物質は半分程度が除去できるとされています。煮れば煮汁に溶け出すのでさらに減ります。ただし煮汁は捨てましょう。また野菜は皮をむくことも大切です。ジャガイモやニンジンは皮をむけばセシウムが半分に減るとされます。

セシウムがどの部位に多いかを知っておくと便利です。米については、根からセシウムを吸い上げた場合、セシウムの約7割は茎に移り、食べる部分である白米には約7%しか移行しません。魚は内部に放射性物質を取り込んだ場合、内臓や骨より、身の部分に多く含まれます。ただ、魚の身には脳血管疾患の予防になるDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれているので、健康維持には必要です。

ある消費生活アドバイザーは「放射性物質を避けようとして野菜や魚を食べないと、逆に健康にマイナスになることもある。冷静な判断が必要だ」と強調しています。

毎日新聞生活報道部

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