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高級鋳物鍋が人気です

2年前の2月に発売された国産の鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」が人気を集めています。すでに1万2000個以上売れ、昨年末の予約待ちは約1万9000人にのぼり、最大14カ月待ちになったこともあります。価格は2万3800〜2万5200円(税込み)と安くはないのに、なぜ売れるのでしょうか。人気の秘密を探ってみました。

両手で鍋を持っている様子(イラスト)東京都目黒区に住む主婦(35)は昨年、バーミキュラを購入するかどうか、夏ごろから迷っていました。「友人がバーミキュラで作ったラタトゥイユを振る舞ってくれて、あまりのおいしさに私もほしいと思うようになった」と話しています。なすやピーマンなど野菜の甘みがしっかり出て、「ピーマン嫌いの息子も残さず食べた」といいます。

さらに驚いたのは、友人から「水も白ワインも使わずに調理した」と聞いたことでした。「食材から出る水分を生かすので、野菜のうまみや甘みが出せるのだろう」と興味がわいたそうです。

ただ値段と重さ(4.2キロ)を考え、購入には慎重でした。「気軽に払える金額ではない。重さを考えると、毎日使えるかどうかも分からない」と、他社製品とも比較しました。結局、「ピーマンがおいしく感じた」という息子の言葉が決め手となり、購入を決めました。

開発したのは船舶などの機械部品を製造している愛知ドビー(名古屋市中川区、社員50人)です。バーミキュラの最大の特徴は、食材の水分を引き出す「無水調理」です。これを可能にしたのは「高い密閉性と食材への熱の伝わり方を研究したためです」と同社専務(34)は打ち明けてくれました。

鍋の底にリブと呼ばれるでこぼこをつけることで鍋と食材の接地面を少なくし、食材に熱が直接あたらないように工夫しました。さらに、ホーローによる遠赤外線効果で食材を中から温めて水分を出し、鍋の密閉性を高めて鍋の中に蒸気の対流を生じさせ、食材全体に熱を加えていきます。

鍋の蓋を取って「あ!おいしそう」(イラスト)商品には、部品製造で培った職人技が随所で生かされています。鋳物で作る鍋の本体やふたは、その日の気温や湿度によって、溶かした鉄を型に流し込むスピードを秒単位で変える必要があり、経験を積んだ職人の感覚が頼りです。  鍋の密閉性を高めるため、本体のふちとふたの接合部の隙間は1000分の1ミリ以下になるまで、精巧に削られます。3層のホーローを吹き付ける作業も、厚みを均一にする必要があるので、熟練した技が求められます。専務は「町工場でしかできない、世界最高のものをお客さんに届けたいと思った」と話しています。

バーミキュラのホームページでレシピを公開している管理栄養士は、発売当初からの愛用者で、カレーを作った際にその実力を実感しました。カレーは無水調理で、野菜に含まれている水分だけを使います。「野菜から出たとろみやうまみのある水分にルーを溶かしているので、味がまったく違ってコクが出る。濃い味付けをしなくていいので、カレーのルーが従来の半分ですんだ」と話しています。

無水調理をすると栄養素が破壊されにくいという利点があります。

バーミキュラとその他の鍋を使用した場合の栄養素の変化を調べた日本食品分析センター(東京都渋谷区)によると、生のジャガイモ100グラム中に39ミリグラム含まれていたビタミンCは、他社の鋳物ホーロー鍋で煮たり、高機能ステンレス鍋で無水調理をすると27ミリグラムに減少しましたが、バーミキュラで無水調理すると33ミリグラム残っていました。生のブロッコリー100グラム中に9.1マイクログラム含まれる糖度は、他社の鋳物ホーロー鍋で煮ると4.3マイクログラムまで減少しましたが、バーミキュラで無水調理をすると8.1マイクログラムまでしか減りませんでした。

「ふっふ おいしいね」無水調理した野菜を食べている様子(イラスト)管理栄養士は「素材の味を楽しめ、栄養もちゃんととれる。重いと出し入れが面倒で使わなくなるかもしれないが、もったいない。私は毎日使っている」と話しています。

人気の呼び水となったのはネット上の口コミでした。愛知ドビーはバーミキュラの発売前、料理研究家やブロガーに鍋を提供し「正直な感想をブログに書いてください」と頼んだところ、ツイッターやフェイスブックで評判が広がり、注文数は順調に伸びました。

バーミキュラは、インターネットで注文を受ける工場直販が基本ですが、日本橋三越(東京都中央区)など国内3カ所の百貨店では商品を展示し、注文を受け付けています。三越伊勢丹のバイヤーは「メード・イン・ジャパンへの信頼感や、震災以降は日本のものを見直そうという機運の高まりがあって、人気は途切れない。待ってもいいからと来店するお客様が多い」と話しています。

愛知ドビーによると、現在は約10カ月待ちの状態です。顧客の要望に応えて体制強化し、月200〜300個だった生産量を、2000〜3000個にまで増やしました。同社では、さらなる増産体制を目指しています。

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2012年1月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。