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野菜行商プロジェクトとは

外出が難しいお年寄りなど「買い物弱者」向けに、リヤカーで新鮮な野菜を売り歩く松本大学(長野県松本市)の「野菜行商プロジェクト」が注目されています。買い物を手助けするだけでなく、1人暮らしのお年寄りが元気かどうかを確認する見守りサービスの一環にもなっています。

「お野菜いかがですか〜?」リヤカーを曳く若者たちの様子(イラスト)肌を刺すような寒風が吹く昨年12月中旬の朝、リヤカーを引く若者6人が松本市内の住宅地に集まりました。松本大総合経営学部観光ホスピタリティ学科の学生たちです。ダイコン、シメジ、パン、缶詰などを積み、「さあ、引き売りだ」とかけ声をかけ、二つのルートに分かれて出発しました。

「チリン、チリン」……。鐘を鳴らしながら4年の男子学生が、民家の玄関先で「野菜いかがですか」と声をかけると、すぐにお年寄りの女性(85)が出てきました。「朝取りのキャベツだよ」「新鮮ね。いくら?」。会話が弾みます。女性はキャベツなどを買い、「孫が時々来てくれるようで、助かります」と話していました。

引き売りは毎週火曜午前に実施しています。デイサービスでお年寄りが集まる福祉施設にも立ち寄ります。近所をリヤカーが通ると、わざわざ家の窓を開けて「こっちへ来て」と声をかける人もいます。鐘の音を聞き、手押し車の女性(81)が急いでやって来ました。脳卒中の後遺症を患っているという女性は「この前のイチゴは硬かった」と注文をつけながら、「タクシーで買い物に行くしかないこともあり、本当に力強い味方」と笑顔を見せていました。

「助かるヨ」行商の若者から野菜を買うお婆ちゃんの様子(イラスト)男子学生は「人と話すのが苦手で、初めは声を出すのも恥ずかしかったが、今は慣れた。お客さんから野菜の料理法を聞かれることもあり、もっと勉強しなくては」と意欲的です。

プロジェクトは10年6月、同大教授のゼミの授業の一環として始まりました。最初は「規格外の野菜を捨てるのはもったいない」と規格外野菜を売り始めましたが、活動をするうちに買い物に行けない人の存在に気づき、昨年からは買い物弱者支援が重点になりました。

教授は「住民のニーズをつかみながら商品を売るので、学生にとっては経営学の勉強にもなる」と話しています。業者との仕入れ交渉も手掛けるゼミの4年生は「行商で身につけたコミュニケーション力が就職試験の面接にも役立った」と言います。

経済産業省によると、買い物弱者は全国に約600万人います。教授は「戸別訪問売りはお年寄りへの声かけや、障害者施設で作ったパンを売るなど福祉支援の機会にもなり応用範囲は広い」と話し、地域の実情に応じたさまざまな支援が広まるよう期待が高まっています。

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2012年2月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。