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森林セラピーで癒やし体験

木々の緑に包まれてリラックスする「森林浴」が人気ですが、科学的データに基づいた「森林セラピー」を体験しました。

4月初め、肌寒さが残る東京都奥多摩町の「森林セラピー基地」を訪ねました。NPO法人「森林セラピーソサエティ」(今井通子理事長、本部・東京都千代田区)が認定した都内唯一のスポットで、おくたま地域振興財団が運営しています。

JR青梅線の終点、奥多摩駅(標高343メートル)で降りると、初めに町福祉会館でガイダンスを受け、血圧などの健康チェックします。森林セラピーの特徴として、ストレス度の指標となる消化酵素「唾液アミラーゼ」の簡易測定もしました。

森林セラピーの様子その1(イラスト)

森林の中を渓谷が縫う奥多摩の基地は1.3〜12キロの5コースがあります。今回は「登計(とけ)トレイル」(1.3キロ)を中心に歩きました。千葉大のランドスケープ研究者らが設計した森林セラピー専用コースです。

案内役の女性のリードでストレッチ体操をした後、多摩川に沿って歩き始めました。先を急がず、気に入った場所で立ち止まり、おいしい空気をたっぷり味わいます。森を抜ける風、川のせせらぎに耳を澄ませます。

つり橋を渡っていると「怖くなければ、ここで一つしたいことがある」と案内役から提案されました。「奥多摩式森林呼吸法」です。7秒かけて鼻から息を吸い、へそ下約3センチの丹田に落とし込む感じで、5秒止めます。最後に10秒かけて口からゆっくりはきます。「仕事でイライラしそうになった時もスイッチが切り替わりますよ」という。

樹木は幹や葉から、揮発性の有機化合物「フィトンチッド」を発散しています。殺菌作用があり、免疫力を高めるとされています。深く吸い込み、全身に広がるのをイメージします。

歩行中に強調されたのは「五感を働かせること」です。例えば、足裏です。針葉樹と広葉樹では落ち葉の踏み応えが違います。岩が露出した所、ウッドチップの道と、変化を感じ取れます。

森林セラピーの様子その2(イラスト)1時間ほど歩くと、眺望のよい丘に出ました。ベンチは背もたれの角度が深く、木々のてっぺんと空が自然に視界に入ります。ハーブティーを飲みながら、解放感を味わいました。昼食後、30分ほど歩いてゴールに着きました。再び唾液アミラーゼを測定しましたが、期待に反し、出発前より高い値になっていました。森林セラピーマネジャーは「仕事として歩いたからでは。楽しくてはしゃぎ過ぎても、高い値が出やすい」と解説してくれました。

奥多摩では年間1000人以上が基地を利用しています。「30〜40代の働く女性に人気」とのことで、「森の匂いや風を感じられた」「日ごろの忙しすぎる時間を忘れられた」などの感想が寄せられています。参加7人ごとにガイド1人が付き、弁当を含め1人6000円から。ヨガやアロマ教室、そば打ちや草木染めなどのセットメニューもあります。

森林セラピーソサエティは06年から、「基地」の認定事業を始めました。従来の森林浴は感覚的な効果にとどまっていたため、医学的なエビデンス(科学的根拠)を重視していました。森林では、ストレス指標となるホルモン分泌や交感神経活動が抑制され、逆に、リラックス時の副交感神経活動や、免疫力を示すナチュラルキラー(NK)活性が高まります。

昨年10月には、森林セラピーのイベントが全国28カ所で一斉開催され、東日本大震災の被災者も招かれました。福島県広野町から神奈川県山北町に避難している女性(68)も、夫婦で参加しました。みんなで手をつないで巨木を囲んだり、町を一望できる丘に立って景色を楽しみました。この女性は「アミラーゼの数値が半分以下に下がり、驚いた。広野に戻れるかも分からない中、ひとときでも不安を忘れられ、ありがたかった」と振り返っています。宮城県の登米町森林組合も南三陸町の被災者らを招き、森林セラピーで心を癒やす企画を進めています。

31都道県で、コース中心の「森林セラピーロード」と、宿泊施設なども整備された「森林セラピー基地」の計48カ所が認定されています。他の主な「森林セラピー基地」は、秋田県鹿角市▽宮城県登米市▽山形県小国町▽群馬県上野村▽山梨市▽長野県上松町、信濃町▽富山市▽鳥取県智頭町▽山口市▽福岡県うきは市▽宮崎県日南市などです。森林セラピーソサエティのサイト(http://www.fo-society.jp/)はイベント情報も紹介しています。

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2012年5月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。