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6歳以下は3D映像に注意

テーマパークのアトラクションや映画で3D(三次元)映像が普及してきました。一方で業界関係者などは、6歳以下の子どもの視聴は控えるよう呼びかけています。子どもに3D映像をどのくらい見せてもいいのか、不安を感じる保護者も少なくありません。3D映像と子どもの成長への影響について、専門家の話をまとめました。

日本弱視斜視学会は、3D映像と目の機能の関係を調べる参考として、3D映像を見たことのある子ども(11〜12歳)6人とその保護者(4人)にその感想を尋ねました。子どもは6人全員が「面白い。また見たい」と答えましたが、保護者は4人中3人が「子どもの目の健康にやや不安」と答えました。

3D映画を観る子供の様子(イラスト)実際、3D映像は私たちの目にどんな影響を与えているのでしょうか。

人間は、左目で見た世界と右目で見た世界のわずかなズレ(両眼視差)によって、ものの立体感や遠近感を理解しています。3D映像は、左目と右目に別々の映像を見せて人工的にズレを作り、立体感を出しています。

現実の空間では両方の目で一つの像を見ていますが、3D映像を見ている時は、左目と右目が「分離」された形で、それぞれの目が別々の像を見ています。このため、両目で一つの像を結ぶ力が弱い人が3D映像を見ると、斜視になる恐れがあります。

また、現実の空間では、両目の視線の先に対象物があり、そこに目のピントが合っています。ところが3D映像を見ている時、目のピントは映画館のスクリーンやテレビの画面上に合っているのに、視線が合う対象物は画面よりも手前に出たり奥に引っ込んだりして、ピントと視線のズレが生じています。3D映像を見て不快感や目の疲れを感じる人がいるのは、現実とのこうした矛盾のためです。

対象物を立体的に見る力(立体視)は、生まれた後に両目でものを見るうちに発達し、6歳くらいまでにほぼ完成します。弱視斜視学会の専門医師は「この時期に3D映像を見ると、素因のある子どもはまれに斜視になる場合がある」と注意を促しています。6歳以下は視聴を控えた方がよいと言われるのは、こうした理由によります。

実際、3D映画視聴後に急に斜視になった▽飛び出す3D本で約1カ月遊んでいた子どもが複視(ものが二重に見える)を訴えた――などの例も報告されています。

専門医師は「目の機能が正常な子どもは、3D映像を見ても問題はない」と説明しています。斜視の素因がある子どもの場合でも、問題が起きるのはごく一部ですが、「斜視のスクリーニング(検診)はほとんどされておらず、注意が必要だ」と呼び掛けています。斜視の素因があるかどうかは、眼科医を受診すればほぼ分かるので、気になる人はまず受診しましょう。斜視の素因がなくても、左右の視力に大きな差がある場合などは、眼精疲労や複視が起きる可能性があります。

家電メーカーや学識経験者らでつくる「3Dコンソーシアム」は10年4月、快適に見られる3D映像の条件に関する安全ガイドラインを発表しました。「映像の飛び出し方が少ない」など、条件を守った映像なら医学的に問題はないようです。

「なんか2つに見える」子供の様子(イラスト)3D映像のテレビを扱う家電メーカーの店頭カタログには、6歳未満の子どもの3D視聴について「必要に応じて医師に相談ください」との注意書きがあります。10年7月に3D機能を搭載したテレビの販売を始めたシャープ(大阪市阿倍野区)東京広報グループの担当者は「使用上の注意点をきちんと理解して使ってほしい」と呼びかけています。

アニメを中心に子ども向け映画を上映する映画館では、3D映像を見て気分が悪くなった場合の対処について「保護者の方はお子様の健康にご留意ください」などと注意を促していますが、子どもの視覚に限定した対応はしていないようです。あるシネコン(複合映画館)の広報担当者は「映画は上映時間が短い。子ども向けの場合、製作者も急に対象物が飛び出すような映像は使わず、奥行き感を出すことに3Dを使うなど配慮している」と話しています。専門医師は「親が近くで様子を見て、異変があればすぐに止めることが大事」と助言しています。3D映像は今後、教育現場で使われる機会が増える可能性があるだけに、「3Dが苦手な子どもがハンディキャップを負わないよう配慮が必要」と指摘しています。

3D映画の人気は、09年公開の「アバター」の大ヒットからです。同作品のジェームズ・キャメロン監督は97年の「タイタニック」を3Dにリメークしました。邦画では3D作品の観客数が伸び悩んでいますが、シネコンの中には、サッカーやプロレス、音楽ライブなどを3Dで生中継する例もあります。

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2012年7月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。