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「懐かしの昭和の歌クイズ」 歌詞の空欄埋めて若返り

「我は海の子白浪の」「桃太郎さん桃太郎さん」――。皆が知っている童謡や歌謡曲など63曲の歌詞を集め、一部に空欄を設けて「穴埋め」を楽しむ本「書いて歌って楽しく若返る 懐かしの昭和の歌クイズ」(WAVE出版)が出版されました。歌の効用に加え、空欄を埋めることで記憶を刺激したり、コミュニケーションの活性化にもつながるとあって、高齢者福祉施設でも好評です。

えーっと何だっけ? アレだよ アレっ 歌詞を思い出して書いている高齢者の様子(イラスト)♪みかんの花が咲いている――。横浜市磯子区の「横浜市滝頭地域ケアプラザ」で先月、要介護・支援認定を受けている高齢者約30人が、女性ボランティアのリードに合わせ、本から選んだ「みかんの花咲く丘」を歌いながら、「穴埋め」に取り組んでいました。空白部分でボランティアは口をつぐみましたが、高齢者の口からは、歌詞がすらすら流れていきます。

82歳の女性はプリントを配った途端に、歌詞を指さしながら、うれしそうに口ずさみ、85歳の女性は「穴を埋めるのが楽しい。古い人間だからわかるのよ」と得意げです。穴埋めが終わると、皆で歌詞を読み、手ぶりをつけたりピアノ伴奏で歌ったりしました。

クイズを考案したのは、福岡県久留米市に住む元教諭、緒方昭一さんです。中学などの数学教諭を経て、市議も務めました。06年に妻を亡くして落ち込んでいると、教え子が「介護施設のレクリエーションのボランティアをしませんか」と声をかけてくれました。

昔話、紙芝居、なぞなぞ。いろいろやってみましたが、一人一人の知識の差もあり、積極的に参加してもらうのは難しかったのです。ある時、施設の人たちが歌う表情を見て「歌なら、みんなが知っている」と思い至りました。

しかし、「皆で一緒に歌うなんて子どもみたい」という声も多くありました。悩んだ末に、歌詞に空欄を作って、プリントして配ってみると、「なんで空いているの?」などと質問がどんどん寄せられました。

み〜かんのは〜ながぁ♪歌っている高齢者の様子(イラスト)80代の女性は「これは学芸会で歌ったったい」とうれしそうに話してくれました。脳の障害で字を書くのを嫌がっていた男性が、歌詞を見ながら口ずさむと、隣の人が「知っとるじゃんね」と後押し。男性は「あ、覚えとった」と鉛筆を握りました。

「窓を空ける(空欄を作る)ことで、教え合ったり、筆記用具を貸し借りしたりして、交流も生まれます」と緒方さん。歌詞をきっかけに「お母さんが作るちまきはおいしかった」などと思い出話も広がりました。

「かつての生活で得た感触、におい、手触り。それらを思い出してもらい『いい宝物を持っていますね』と伝えたい。私も同じ気持ちなので」

「高齢者アクティビティ開発センター」(東京都中野区)の多田千尋所長は、「歌のレクは肺活量を高めるのにも効果的ですが、受動的になってしまう場合もあります。歌う前に穴埋め作業があると、能動的で踏み込んだレクにできます」と指摘します。本を手にして「歌った当時を思い出し、かつての自分と『世代間交流』できます。施設だけでなく、家事援助に行くホームヘルパーの方も、本を渡せば会話のきっかけになるのでは」と話しています。

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2012年8月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。