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自然志向の高まりで注目される樹木葬

樹木の根元に遺骨を埋める「樹木葬」が注目されています。「自然に返りたい」という自然志向が高まっているほか、墓を作っても墓を守れる継承者がいないという事情もあります。いずれ同じ木の下で眠る人たちが集い、「墓友(はかとも)」としての交流も生まれています。

樹木葬のイメージ(イラスト)樹木葬は、岩手県一関市の知勝院が99年、ツツジなどの下に埋葬したのが日本初とされています。故人が花に生まれ変わるようにとの思いが込められました。都市部にも徐々に広がり、埋葬などの形態は各墓地により異なっています。永久的に遺骨を納める方式のほか、30年など一定期間が過ぎると掘り起こして合祀(ごうし)する場合も。遺族が納骨に立ち会えるか、などの対応もさまざまです。

「桜葬」はNPO法人・エンディングセンターが05年、東京都町田市の「町田いずみ浄苑」で初めて企画しました。一本の木の下に多数の個別区画がある集合墓。墓や家族形態の変容を研究しているセンターの理事長は、「核家族化が進み、子どもが都会に出たり、各地を転勤する移動社会では、お墓の継承は無理。跡継ぎ制が制度疲労を起こし、人々を苦しめている」と指摘しています。

桜葬墓地の購入者に理由を尋ねると、①子どもが娘だけ②息子がいるが墓を継承できない③子どもがいない④単身⑤夫の家の墓に入りたくない――の順に多かった。息子がいても独身だったり、親より先に亡くなるケースもあり、「息子がいれば安心」という時代ではないといいます。

東京都町田市の女性(82)は一昨年、「町田いずみ浄苑」の桜葬墓地を購入しました。13年前に夫を亡くし、手元にある夫の遺骨とともに、いずれは自分も一緒に入ります。一人息子に負担をかけたくないことも理由でしたが、何より、大好きなサクラの近くで眠れると思うと心が弾むといいます。

墓友「はかとも」イメージ(イラスト)今年4月、墓地から帰るバスで、70代の女性と乗り合わせた際、話が弾んで夕食もともにし、互いの家庭事情や思いを語り合いました。女性とは今も、交流を続けています。「私の方が年上だから、あなたはゆっくりおいで。待っていてあげるからね」と声をかけているといいます。

センターでは、サクラの開花時に合同慰霊祭を開いたり、俳句やウオーキングのサークルなど「墓友」同士の交流をサポートしています。「語り合いの会」に参加した時、町田市の女性は「夫の葬式が済むまで涙も出なかった。自分を非情な女だと思った」と、誰にも話せなかった思いを打ち明けました。他の参加者から「本当につらいときは涙が出ないものよ」と声を掛けられ、心が軽くなったといいます。

東京都立小平霊園(東村山市)でも今年、「樹林墓地」が登場しました。約800平方メートルの敷地に、コブシやヤマボウシ、ネムノキなど8本を植えています。武蔵野の自然と一体化し、外観は緑地公園のよう。27カ所の穴に各約400体を納めるもので、計1万700体を埋葬できる。穴の底はむき出しの土で、「自然に返ることができる」といいます。7月に500体分を募集したところ、説明会は定員300組に2500組が応募する人気ぶりでした。使用料は遺骨1体13万4000円、粉状の遺骨は4万4000円です。

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2012年9月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。