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不況反映、お父さんのランチ事情 飲み代確保に食費削減 弁当持参派も

長引く不況の重苦しさとは対照的に、お父さんの財布は軽くなるばかり。ランチ事情も悪化の一途をたどり、サラリーマンが昼食にかけるお金は30年以上前の水準まで下がっているとか。お父さんのランチ事情はどんなことになっているのかを探ってみました。

10月のある日。銀行系シンクタンク研究員の男性(52)は、職場に近い東京・神田の居酒屋でランチを食べました。注文したのはしょうが焼き定食(600円)。食後に近くの喫茶店で飲んだコーヒーと合わせても、700円台に収めました。「入社したばかりのころは、バブル経済まっただ中。会社から車で郊外に出かけて、2000円のステーキランチを食べたこともある」と懐かしみます。

500円以下・・・ショーウィンドウの前で安い定食を探す様子(イラスト)男性は数年前、「2人の子どもの教育費を貯蓄するため」と、妻からお小遣いの大幅カットを言い渡されました。月2万円から1万5000円へ、実に25%の減です。夜の飲み代を確保するためには「ランチを我慢するしかない」と肩を落としつつ、1杯170円のホットコーヒーを胃袋に一気に流し込み、足早に職場へ戻りました。

外で食べるのは高過ぎる――というわけか、社員食堂で済ませる人も多いようです。教育出版大手・学研ホールディングス内部統制室の景山美昭さん(52)もその一人です。

本社がある東京都品川区は典型的なオフィス街。サラリーマン向けの飲食店も多いのですが、ランチはいつも本社ビル13階の社食で済ませます。理由は「何と言っても値段が安いから」。

この日のメニューはイクラアナゴ丼とサラダで、計650円なり。「大学生の長女(19)の教育費や、96年に買った都内のマンションのローン返済が家計を圧迫している」ため、昼食代を削ろうというわけです。

手っ取り早く食費を浮かせたいなら、やはり弁当持参に限ります。大手電機メーカーの中間管理職の男性(42)は、持参した愛妻弁当を自席で食べながら仕事をこなします。

「私立の小学校に通学する長女(8)の分のついでに私の分も作ってもらうのですが、妻の狙いはお小遣いの節約」と男性は苦笑します。「ランチタイムになるとタクシーで築地のすし屋に乗り付けるつわものの先輩もいた」というバブル期とは隔世の感があります。

◇平均510円、時間も短縮

ランチタイムといえば、多忙なサラリーマンがリラックスできる貴重な時間。だが、その現状は寂しい。

新生銀行が今年4月、全国の20〜50代の会社員やパート、アルバイトの男女に実施した「サラリーマンのランチ事情調査」によると、1回の昼食代の購入費は平均510円。3年連続で「ワンコイン」ランチの水準に落ち着いた。

同行が過去に行った調査と比べると、バブル末期の92年は746円でした。だが、21世紀に入ってからは、01年の710円をピークにほぼ右肩下がりが続き、現在の水準はオイルショック直後の79年(565円)と同レベル。バブル期の約3分の2、実に30年以上前の水準まで戻ってしまったわけです。

減っているのはランチ代だけではありません。ランチにかける時間も短くなっています。同じ調査によると、昼食にかける時間は平均20分。全体の約6割が20分以下で済ませていました。毎年の調査はしていませんが、83年調査では平均33分、93年調査では同28分となっており、こちらも大幅に短くなっている。83年調査では昼食にかける時間が「10分以下」という人はゼロでしたが、今年の調査では2割に達しました。

調査結果について同行は「お店選びも、味や店のきれいさよりも、安くて近いところを好む傾向が強くなっている」と分析しています。

同僚とお弁当を食べながら「バブル期の頃はなぁ・・・」「それは言わないの!」(イラスト)


◇栄養面は大丈夫? 社食の質向上も

「最近のサラリーマンの昼食は、従来以上に野菜が少ない」。企業や自治体の委託を受けて個人栄養指導を行う「日本医療栄養センター」所長の井上正子さんは心配します。「忙しい職場ではおにぎり2個で昼食を済ませてしまう人もいる」。これでは、栄養バランス以前に、栄養自体が足りません。

さらに井上さんは「職場の仲間と話しながら食べれば、10分以下なんてあり得ないでしょう。昼食時にリラックスしていないと、精神面への影響も心配。栄養の吸収も悪くなってしまう」と嘆きます。「この状態が10年、20年続いたら健康への影響は深刻」と井上さん。「個人の努力の域を超えている。国も企業も、食事の改善に真剣に取り組むべきです」

こうした懸念を反映してか、最近の社員食堂には、社員の健康管理に気を使うところが増えています。学研グループ広報室は「メニューにカロリー表示するなど、社員の健康管理にも配慮している」。社食を紹介するウェブサイト「社食ドットコム」の藤井なおき代表も「外食より昼食代が抑えられるだけでなく、料理の質も年々向上している。社外の人との打ち合わせに利用する企業もある」と語ります。

忙しくても、自分で栄養を改善できる方法はないか。井上さんのお勧めは「キュウリやミニトマト、ミカンやバナナといった簡単に食べられる野菜や果物を、職場に置いておくこと」。昼食に合わせる飲み物も「ジュースなどの嗜好(しこう)品ではなく、牛乳、みそ汁、スープなどに替えるだけでも、栄養バランスの改善に役立ちます」とアドバイスしています。

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2012年11月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。