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工事過程や売買履歴を残す「家の血統書」 手抜き防止に効果

家を建てたりリフォームしたりする際、心配なのが業者による手抜き工事です。そこで東京の市民グループ「みんなのおうち」(新山芳雄代表)が、工事の過程を写真やイラストで記録し、売買の履歴も残す「家の血統書」という仕組みを考え、建築現場で取り入れられています。資産価値を決める目安にもなるとして注目されています。

家の血統書?建築中の家の様子(イラスト)東京都文京区で事務所を開く1級建築士の吉田知代さんは、テレビ番組でこの市民グループの取り組みを知り、05年から「家の血統書」の考えを取り入れました。第1号は同杉並区の男性会社員(50)の新築住宅。男性は6人家族で、鉄骨3階建ての住宅には免震構造を採用することにしました。

建設会社へ一括発注した場合の見積額は4500万円を超えましたが、吉田さんは予算額の3000万円以内に抑えるために、住宅の基礎や水回りなど工事ごとに業者を替えて発注。工事全体を管理するのに有効と考え、建築の過程を記録する「家の血統書」を取り入れることにしました。

住宅建築は基礎工事から棟上げ、屋根ふき、内装と多くの工程を経ます。男性宅の建設で採用した血統書でも(1)工程ごとのポイントを抜き出し、設計図に沿ってイメージをイラストで表現する(2)それぞれの段階で工事後の現場写真を撮影する(3)その工事内容の解説を文字で残す――の順番で所定の形式で書類に記録しました。さらに、工程ごとの資材の値段や工賃も記入し、徹底的に消費者目線にこだわりました。

男性は「記録を見れば家の性能や、どうしてこの価格になったのかが理解しやすい。消費者側から『家の血統書』を求めるようになれば、取り組みが広がるのではないか」と評価します。吉田さんは「この新しい取り組みを施工業者に説明し、理解してもらうことは大変だったが、工事をしっかり行ったという証明にもなり業者側にもメリットがある」と説明します。

建築中の様子を写した写真(イラスト)「みんなのおうち」代表の新山さんは、同北区で焼き肉店を経営しています。牛海綿状脳症(BSE)や食品偽装問題で、生産履歴を管理するトレーサビリティー制度が話題になっていた頃、客として来店していた建築家や法律家との会話から、「住宅建設にも当てはめられないか」と考えたのが、「家の血統書」の始まりでした。「自動車の整備記録のようなもので、住宅にそれがないのは、よく考えるとおかしいと思った」といいます。

この取り組みは、工事の透明性を確保する以外の利点もあります。住宅に関わるもめ事が起きた時、原因の解明を「家の血統書」に求めることで、紛争の解決につながる手立てになり得ます。また、リフォームの際にそれまでの工事の過程を把握したい場合にも役立てられるほか、家の性能が写真やイラストなどを通じて分かりやすく示されるため資産価値を明確にでき、中古住宅市場の活性化にもつながると期待されています。既に「家の血統書」がある住宅の場合、ローンや住宅保険が割安になる商品も開発されています。

「家の血統書」の書式の著作権は新山さんにあります。消費者に利益を還元することを条件に利用は無料にしていますが、建築士や工事業者には「業務提携書」の提出を求めています。「建築業者は建築関連の法律の施行や改正を受け、消費者への説明義務が求められている。この取り組みを広く市民に知ってもらい、住宅建築の仕組みがよりよく変わり、産業の活性化につながってほしい」と話しています。

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2013年2月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。