お役立ち情報/情報ものしり帖

「体にいい」を分かりやすく

野菜や果物などの農林水産物やその加工品を食べたり飲んだりすると、私たちの健康にどんな良い機能があるのでしょうか。政府の規制改革会議は6月、こうした健康機能を農林水産物にも表示すること(機能性表示)を認める方針を打ち出しました。ただ、消費者に分かりやすく健康機能を伝えるのは難しく、関係者の試行錯誤が始まっています。

「β―クリプトキサンチン みかん約3個分。農研機構果樹研究所の研究成果を活(い)かして開発した商品」

ポンジュースで知られるえひめ飲料(本社・松山市)が3月に通信販売を始めた、温州(うんしゅう)ミカンを原料にしたジュース「アシタノカラダ」のパック容器に、こんな言葉が書かれています。体に良さそうな印象は与えますが、どのように「体にいい」のかを、一般の消費者が理解するのは難しいきらいがあります。

みかん 体にいい?(イラスト)●データあるのに

β―クリプトキサンチンは、温州ミカンに含まれる抗酸化物質(カロテノイド色素)の一つ。静岡市にある同研究所のカンキツ研究拠点は、浜松市に住む閉経後の女性212人(平均年齢60.5歳)を4年間追跡調査した結果、β―クリプトキサンチンの血中濃度が高い人は、低い人に比べて腕の骨密度が高く、骨粗しょう症になりにくいことを突き止めました。研究論文は昨年12月、米国の総合科学誌「プロスワン」に掲載されました。

調査を行った同研究所カンキツ研究領域の主任研究員は、β―クリプトキサンチンの健康機能について「肝機能の改善や、動脈硬化の予防との相関関係もみられる」と指摘。「温州ミカンを食べることで、これらの疾病の予防になるかどうかを検証する試験をやる価値はある」と訴えています。

しかし、科学的に信頼できるデータがあっても、現在の食品衛生法や健康増進法、薬事法では、特定保健用食品(トクホ)を除き、医学的な効能や効果を表示することはできません。えひめ飲料の営業担当者は「信頼性の高いエビデンス(科学的根拠)があるのに、何も表示できないのは本当に残念」と嘆きます。

●効果、国が独自公開

同じような悩みは、ムラサキサツマイモにもあるようです。

ムラサキサツマイモの機能性を18年にわたり研究してきた九州沖縄農業研究センターの作物開発・利用研究領域長によると、ムラサキサツマイモには肝機能を改善したり、血圧を下げたりする効果があることが、ラットや人間への試験で確かめられているといいます。しかし、現在販売されているムラサキサツマイモのパウダーやジュースには、こうした機能性は表示されていません。

ムラサキサツマイモのイメージ(イラスト)「データの信頼性は、トクホを取得できるほどのレベルだ」と領域長。「医学的な効果を表示するのが無理でも、何らかの作用を知らせる表示があれば、消費者が自己責任で商品を選び、食生活に活用できるのではないか」と、表示の実現に期待を寄せています。しかし、肝機能の改善に関する機能性表示は、トクホでさえも認められていません。

農林水産物の持つこうした機能性をどう消費者に伝えたらよいかは、関係者にとって悩ましい問題です。消費者庁が近く、表示のあり方について検討作業に入るほか、農林水産省も、科学的な研究成果が確認された情報を独自にホームページで公開する方針です。

●神奈川で先行例も

国を先取りする動きも出ています。

神奈川県は8月、農林水産物の健康機能を生活習慣病の予防に生かそうと、県立保健福祉大学と協力して「医食農連携プロジェクト」をスタートさせました。今後3年間で、県内のスーパーなどに「栄養ケアステーション」を設置。管理栄養士が常駐し、消費者に農林水産物の機能性を生かしたレシピを紹介したり、栄養指導をしたりしていくといいます。

黒岩祐治知事は「医食同源の考えから、病気を未然に防ぐプロジェクトとして神奈川モデルを発信したい」と、新たな健康プロジェクトへの意欲を示しています。

毎日新聞生活報道部

Copyright© 2003 - 2013 Kyoei Fire&Marine Insurance Co.,Ltd. All rights reserved
※掲載されている情報は2013年10月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。