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風評被害と闘う福島米

福島県の今年の作況指数は104と、まずまずの豊作でした。東京電力福島第1原発事故による風評被害は今も払拭(ふっしょく)されていませんが、生産者たちは徹底的な除染を行い、出荷前に全ての米袋を検査しています。「放射性セシウムが基準値以下だと確認して市場に出している」。生産者は福島米のおいしさと安全性のアピールに懸命です。

お米の検査をする様子(イラスト)県中央部にある人口約3万人の米どころ、本宮(もとみや)市。倉庫のような検査場に、生産者から集められた重さ30キロの米袋が山積みになっていました。

米袋はベルトコンベヤーに乗せられ、セシウムを測る箱形の測定装置へ。1分間で4袋が検査されます。国の基準値(1キロあたり100ベクレル)に合格すると、パネル画面に「○」印が現れ、米袋に「放射性物質検査済」のシールが貼られます。逆に、基準値を超えると検査装置が止まる仕組みとなっています。

本宮市では昨年、約27万袋が検査されたといいます。同市農政課主幹は「検査した米の99.9%は25ベクレル以下です」と安全性をアピールしました。

●出荷前に全袋検査

県内には同様の検査所が173カ所あり、県内の生産者が作った米は、出荷前に全て検査所に集められて検査を受けます。昨年は約1000万袋(1袋30キロの玄米)が検査されましたが、99.8%が25ベクレル以下と、基準値の4分の1にもなりませんでした。基準を超えたのは71袋(0.0007%)。最高は360ベクレルでしたが、この値でも欧州連合(EU)の基準値(1250ベクレル)よりは低くなっています。

これだけ数値が低い背景には、生産者たちの涙ぐましい除染努力があります。

米生産者のイメージ(イラスト)セシウムは肥料のカリウムと似た性質を持つため、カリウム肥料を多めに与えると、稲が吸収するセシウムが少なくなることが、福島県農業総合センターなどの研究で分かりました。土壌改良材のゼオライトを土壌に入れるとセシウムを吸着し、稲が吸収するセシウムが減ることや、収穫後の稲わらをそのまま水田に残すと、残さない場合に比べセシウムの残留が少なくなることも分かりました。

こうした研究データを基に、生産者たちは除染に熱心に取り組んできたのです。

本宮市に隣接する大玉村在住の生産者(58)は、米作り歴40年。「エコファーマー」として、農薬の使用を減らした環境に良い米作りを実践してきました。村内の食味コンクールで1位になったこともある米作り名人だ。「カリ肥料やゼオライトをしっかりと入れ、除染に努めてきた。おいしさと安全性には自信がある」と胸を張ります。

●消費者に伝わらず

だが、福島県中央部で取れたコシヒカリの平均価格は、原発事故以前は全国平均を上回っていましたが、事故のあった11年は全国平均を100とした場合91〜95。昨年は96〜98と全国平均を下回っていました。県産の米の生産量は事故前は約45万トンで全国で4位でしたが、事故後の昨年は約37万トンで7位に落ちました。

消費者庁が8月、全国の約5100人を対象に実施した「風評被害に関する消費者意識の実態調査」によると、17.9%の消費者が「福島県産品の購入をためらう」と答えました。半年前の19.4%からわずかに減りましたが、依然として約2割の人は購入をためらっていることが分かります。消費者庁は「正確な情報が消費者に伝わっていないことが背景にある」とみています。

県農産物流通課は「生産者が一丸となって除染に努め、全袋を検査して基準値以下の米だけを出荷しているが、そのことが全国になかなか伝わらない」と指摘。懸命な除染と厳しい検査態勢を知ってほしいと訴えています。

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2013年12月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。