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定年後の生き方 堀田力さんに聞く

人生80年の時代、「定年後」は大きな関心事です。検察官から福祉の世界に転身、「現役」で活躍する財団法人「さわやか福祉財団」の堀田力理事長(79)に、幸せな定年後の過ごし方を聞きました。

「まずは本当に好きなもの、打ち込めるものを見つけることです」。こう堀田さんは提案します。

仕事では、能力を生かして成果を上げれば報酬がもらえます。家族や社会に対する責任を果たしているようなやりがいを感じることができます。同僚との出世競争に勝てば、それ自体をやりがいのように感じることもあります。結果的に本当に仕事が好きかどうかは分からないまま、自分を捨てて仕事に打ち込む――。堀田さんはこうした感覚を「仮の生きがい」と呼んでいます。

・・・定年退職し会社を去る様子(イラスト)「やりたいこと」は趣味でもいい。私の先輩に、亡くなるまでたいして外出もせず人にも会わず、誰に見せるわけでもない小説を書き続けた人がいました。でも家族から話を聞くと、彼は幸せな人生を送ったんだと分かるんです」

では「やりたいこと」が見つからなかったら、どうすればいいのでしょうか。堀田さんは「学生時代に何がしたかったか。たいていの場合、思春期に興味があったものがその人の『本物』」と話す。例えば野球なら地元の少年野球チームのサポート、演劇なら地域の劇団を探してみましよう。

●人の笑顔が報酬

「社会貢献」も大事にしたいキーワードです。「誰かの役に立っている実感や喜んでもらえた手応えは、元気のもと」と堀田さん。他人の笑顔や「ありがとう」の言葉は、時に収入以上の報酬になります。

東京地検特捜部時代にはロッキード事件など大きな事件の捜査を担当し「カミソリ堀田」の異名をとった堀田さん。実は30代後半、出向先の米国で知ったボランティアの世界にずっと興味を持っていたといいます。1991年、57歳で惜しまれながら退職し、以来高齢者問題に取り組んできました。

当時から定年後にやりたいことに「社会貢献」を挙げる人は多くいまたが、実行に移すのは1割程度でした。「男性は気持ちはあるのに、行動できない。肩書のない自分に何ができるのか、自信が持てず迷ってしまう」と堀田さんは指摘します。

ボランティア情報は居住地域の広報誌、書籍やインターネットでも簡単に入手できます。ピンとくる団体がなければ、仲間を募って自分で作ってもいいでしょう。

例えとして堀田さんが挙げるのは「近所の子どもと一緒に過ごすボランティア」。少子化なのに子育て世代は人手も時間もなくて苦労しています。一方で高齢者は大勢いるのに、地域の中で居場所を探しています。共生・共助のかけ声はありますが、実態はまだ追いついていないのが現状です。

新しいことを始めるなら、「目指すべきは、すべての世代にとって住みやすい社会」という堀田さんの言葉にヒントがありそうです。

定年後やりたいこと?机に向かって考える様子(イラスト)●肩書はリセット

新しい世界に飛び込む時に気をつけたいのが、人間関係の築き方です。序列社会の企業で生きてきた男性は、退職後も自分や相手の肩書に縛られがち。無意識のうちに言葉遣いや態度を使い分けてしまいますが、それでは真の人間関係は築けません。

堀田さんが「さわやか」を設立した当時、笑い話のようなルールがありました。堀田さんを「理事長」と呼んだら100円、「理事長」と呼ばれて返事をしたら1000円払う――というものです。

「すぐに名刺交換したがるのも悪い癖」と堀田さんは指摘します。仕事をしていた時のポストや人間関係はリセットし、裸の人間同士として相手と向き合いましょう。

思考を切り替え、新たなやりがいが見つかれば、日常生活のハリが出てきます。ハリのある日々は、健康と何より幸せな夫婦関係の構築にもつながることでしょう。

■人物略歴
◇ほった・つとむ
1934年、京都府出身。検察官、法務大臣官房長を経て91年退職。現在は弁護士。「高齢社会NGO連携協議会」代表などを歴任。著書に「第二の人生、勝負の時である。」など。

毎日新聞生活報道部

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