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違法な表示 線引き困難 食材偽装 消費者庁が指針案

食材の虚偽表示問題を受け、どのような表示が、実際のものより著しく優良だと誤認させる違法な「優良誤認」にあたるのか議論になっています。消費者庁は昨年12月に肉、魚、野菜などで具体例を列挙した指針案を提示しましたが、単純な線引きが難しいケースも。特にニジマスとサケの表示を探ると、事業者側がもっと生産の実態を消費者に伝える努力が必要のようです。

●「優良誤認」とは

メニューや料理などの表示で主に問題になったのは、景品表示法(景表法)上で優良誤認に該当するかどうかという点です。その根拠は、製品・食品を提供する事業者側がどう考えるかでなく、表示の受け手の消費者から、実際のものより「著しく優良」と認識されるかどうかがポイントとなります。

一枚の牛肉 ステーキを食べる様子(イラスト)議論のたたき台となっているのが消費者庁がQ&Aの形で示した「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」と題した指針案です。一連のホテル・レストランの虚偽表示で、実際にあった事例などを盛り込んでいます。

例えば、生肉、脂身などを人工的に張り合わせた「成形肉」。「ビーフステーキ」と表示して提供すると、消費者は一枚肉の牛肉だと連想して誤認するため優良誤認に該当し、景表法違反となります。

しかし、外食チェーン店のカレーライスにサイコロ形の成形肉が使われた場合は、消費者が一枚肉を想定していないので、「ビーフカレー」と表示しても違反ではないといいます。同庁が問題視するのはあくまで一枚肉を連想させるステーキのケースで、「違反かどうかの目安は、あくまで消費者目線で判断する」と話しています。

牛肉の産地については、消費者が一般的に和牛を高級とイメージしているため、豪州産牛肉を「国産」と表示した場合は優良誤認となります。

一方で、高級感の比較が微妙なケースも。代表例は「ニジマス」と「サケ」です。同庁の指針案では、「サケではない『サーモントラウト』(標準和名・ニジマス)を『サーモン』と表示すれば、その表示で顧客を誘引しようとしていると考えられ、優良誤認表示になる」と説明しました。「サケ」の方が高級との判断です。

●サケの方が高級?

そもそもサーモントラウトとは、ニジマスを海で養殖して大きく育てたものを水産業界が慣例で呼んできた名称です。主にチリで養殖され、輸入されています。

トラウトは「マス類」を指すが、専門の大学教授は「ニジマスは、生物学的にはシロザケ(アキザケ)やギンザケとともに太平洋サケに属し、同じ仲間の魚」と説明します。海で取れるベニザケも、淡水で育てれば、「ヒメマス」と名前に「マス」が付くようにサケとマスの呼び名に厳密な区別はありません。

ニジマス?サケ? スーパーで切り身を手に取って悩む様子(イラスト)生物学的に違いがない中で景表法上の問題となるのは、消費者目線でマスとサケに印象の違いがあるかどうかという点です。消費者団体「消費科学センター」の担当者は「最近は養殖技術が進んでいるので、海で育ったニジマスがサケより低級というイメージは個人的にはない」と話します。だが、逆にサケの方が高級と考える消費者もいるはずです。

流通段階での価格を調べると、チリでサーモントラウトを養殖して輸入する三菱商事は「卸売価格で見る限り、季節にもよるが、サーモントラウトはシロザケ(アキザケ)やギンザケより高く、少なくとも北海道沖で取れるシロザケに劣ることはない」と強調します。サケだと思って食べたら、もっと高級なサーモントラウトだった場合は、消費者がだまされたことにはなりません。

店頭ではどうでしょうか。今月上旬、千葉県内のスーパーでは、チリ産のサーモントラウトの切り身は100グラム当たり200円台。これに対し、チリ産ギンザケやロシア産ベニザケは100円台とサーモントラウトの方が高い価格で流通していました。こうした実態に消費者のイメージが追いついていないようです。

●業者の努力必要

表示問題に詳しい消費生活コンサルタントは「サーモントラウトを使った場合はむしろ積極的にサーモントラウトと表示すべきだ。その方が表示としても正しいし、そのおいしさや高級感を消費者に伝えるよいチャンスになる」と話し、事業者側が消費者の認識を変える努力をすべきだと指摘しています。

森雅子・消費者担当相は今月6日、「サケ弁当」に関しては、サーモントラウトを使ってサケ弁当と表示しても、必ずしも違反とはならないとの見解を示しました。消費者庁の指針案には約500件の意見が寄せられ、関心の高さがうかがえます。同庁は今後、ニジマスとサケの関係も含め指針案を見直す方針です。

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2014年3月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。