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ゆっくり楽しむ春山登山

ゴールデンウイークを控え、この春、山歩きを始めたい人も多いのでは。しかし、初心者には自分の実力に合った山選びは難しいものがあります。「歩き方は?」「服装は?」。山岳ガイドとして活躍し、初心者向けの登山学校を開校している大蔵喜福さん(63)に、春山の楽しみ方を聞きました。

●30分で5分休憩

「春山の楽しみは、ゆっくり登って、ゆっくり自然を味わうことです」と大蔵さん。「花をめでながら、会話を楽しみながら歩いてほしい」

登山の様子(イラスト)では、どんな山に登ればいいでしょうか。

まず「体力の目安」として示してくれたのは、「普通の道を1時間に4キロ歩ける体力」。大人ならゆっくり歩きに相当します。山に置き換えると、「1時間に3キロ歩く。さらに標高差も300メートル程度の山がいい」。

歩行距離が6キロの山を選んだとすると、「歩くだけで2時間、標高差300メートルの登り下りで1時間程度。全部で3時間ほどの歩行時間が目安」と語ります。

初心者はどうしても速足になりがちです。他人と競争したり異性にいいところを見せようとしたり。結局バテてしまって、難行苦行に陥ります。「慣れていない人は、30分で5分の立ち休みを。1時間通してきっちり歩く必要はありません」。また「休む場所は、景色の良い所、寒くない所を選びましょう。春は暖かくても風が寒い」。

服装についてはどうでしょうか。「防寒具になる物は必ず持って。暖かい下着を上下、ウールの薄いカーディガン、フリースなどを着てください。ウインドブレーカーも持って行きましょう」と説明します。「登山用の雨具なら、防寒具にもなります。なければ傘でもいい。その前に天気が悪い時には、寒い思いをすることもあるのでやめた方がいい」とアドバイスします。

●足裏地面に着けて

では、疲れにくい歩き方はあるのでしょうか。「昔のわらじで歩く歩き方が人間にはぴったりです。足の裏全体を地面にぺたんと着けて歩く」。登山用語で「フラットフィッティング」と呼ぶ歩き方です。

「足を下ろす時に、足の指のつけ根の膨らんだところでまず地面にフッと下ろす。犬や猫の肉球のあるところですね。この段階ではまだ足の指は微妙に地面に着いていませんが、指を下ろすと同時にスーと膝が前に出ます。筋肉で歩く移動ではなくて、体重で移動する感じです」と説明します。

ああ空気がおいしい!山頂での様子(イラスト)「歩幅は狭くします。前の足のかかとと、後ろの足の爪先の間をできるだけ狭くします」。さらに「段があったら段の高さに合わせるのではなく、細かくステップを切って登ります。そうすると滑りませんし、疲れも少なくなります」と話してくれました。

山歩きをすると、登りよりも下りが難しいことに気がつきます。「下りが不安な人は、ストックを持って歩くといい」。木の根や木道の保護のためにゴムのキャップは必ずつけて、と付け加えました。
 ザックの荷物については「軽くすることが大切です。最低限必要な物は、登山用の雨具かその代わりになる物。ヘッドランプ、地図に磁石ですね。国土地理院の地形図でなくとも、登山地図で十分です」と述べます。

初心者へのアドバイスとして「日常生活にはない、ゆったりした時間を持つのが大事です。無理やり登る必要はありませんし、頂上に行く必要もありません。とにかく自然と仲間との会話を楽しんでほしい」と語ってくれました。

■人物略歴

◇おおくら・よしとみ

山岳ガイドとして国内外で活躍する傍ら、2000年度に北米大陸の最高峰・マッキンリー(6168メートル)の気象観測や若手育成の功績で秩父宮記念山岳賞を受賞。初心者向けの登山学校「ミズノアウトドアスクール」(http://www.mizuno.jp/outdoor/school/)校長を務める。日本山岳会元常務理事。

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2014年5月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。