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職場の妊婦 上司の配慮は

今や大企業に限らず、働く妊婦の姿は珍しくありません。そうした中で、特に男性の経営者や上司が、妊婦の体調にどう配慮すればよいか分からずに重要な仕事から外したり、そもそも体調に配慮せずに負担となる残業や夜勤などを強いたりするケースが絶えないといいます。経営者や上司は職場の妊婦にどう対応すればよいのでしょうか。

●休憩できる体制に

「若い女性を集めたら次々に妊娠してしまった。もう採用しない」「妊婦には怖くて荷物も持たせられない。胎児に何かあったら困るから妊婦を退職させてほしい」。横浜市の特定社会保険労務士の女性が企業経営者から聞いた声です。「妊娠したら戦力にならないと考える男性は多い」といいます。大丈夫かな?心配・・・妊娠している部下を思う上司の様子(イラスト)

この女性自身も妊娠しており、臨月に入りました。妊娠しても働き続ける女性を見て「妊婦でも元気で働けるんですね」と認識を改める経営者も多いといいます。

ある病院の男性医師は「仕事をすることは母体には特段、悪くない。普通の1日8時間労働である限り、妊婦が働くことに問題はない」と太鼓判を押します。

ただし、体重が重い大人を抱き上げる機会の多い介護職などは配慮が必要になります。厚生労働省の外郭団体、女性労働協会は、断続作業で重さ10キロ以上、継続で6キロ以上の荷物を扱う作業は、腰痛予防のため禁止すべきとしています。妊婦は血管が緩みやすく、長時間の立ち仕事はむくみや冷えを引き起こします。立ったままにならず、本人の意思で休憩できる体制が求められています。

「妊娠中は疲れやすい。職場での運動量は普段の7〜8割にすべきだ」と男性医師。疲れがたまると、流産の原因にもなる細菌感染を起こしやすくなります。この他にも職場で避けるべき事項は、月40時間を超える残業▽受動喫煙▽流れ作業など自分の意思で中断できない業務▽夜勤などです。

●初期は無理させず

労働経済ジャーナリストの女性は「正社員は雇用が守られているはずだが、一方で残業が当たり前になっている。残業ができない社員への風当たりは強く、妊婦が無理をする例が絶えない」と指摘します。著書「ルポ職場流産 雇用崩壊後の妊娠・出産・育児」では、出血しても出張や残業をこなすうち、血の塊がぼとっと流れ出て流産したことに気づく女性らが登場します。

契約社員など有期雇用では、契約が更新されないことを恐れて妊娠を上司に言い出せないケースもあります。ジャーナリストの女性は「妊娠初期は労務管理から抜け落ちやすく、流産しやすい問題が十分に知られていない」と話したうえ、「有期雇用も含め全ての人に法律で産休取得が保障されていることを、企業も女性も知って」と訴えます。働く女性を守るのに役立つ法律は労働基準法、労働契約法、育児介護休業法など多数あります。

お先に失礼します。お疲れさま 早めに退社する妊婦の様子(イラスト)●企業に国の支援も

産休中の社会保険料は、今年4月から企業負担分も免除になりました。中小企業で育休から初の復職者が出ると国の助成金が出る制度もあり、企業への支援も広がっています。従業員の産休取得に関するコンサルティングを中小企業向けに行うNPO法人「アローアロー」は「妊婦のリスクはある程度想定できる。見えるリスクに対応できない企業が、社会の変化に対応できるでしょうか」と企業の一層の対応を求めています。

妊婦は、おなかが張って出血が起きた時は必ず受診が必要です。男性医師は「切迫流産・早産などの異変は、早く気づいて管理・治療すれば防げる。だからこそ企業は妊婦の支援を」と話しています。

◇こんな時はどうする?

・別の社員が妊娠した際はバリバリ働いていたのに今度の妊娠した女性は違う
→妊婦の状況は千差万別。前例は参考にならない。妊婦自身も前例に合わせて無理しないよう注意を。

・体調不良で遅刻や欠勤が多いことに、妊娠を知らない同僚から不満が出た
→上司が個別に同僚に説明を。妊婦本人が関わると社内の人間関係が悪くなることがあり、復職後にも影響する。

・男なので妊婦の気持ちや体調が分からない。尋ねてセクハラにならないか
→仕事の負担感や母体のリスクを知る上で本人とのコミュニケーションは必須。できれば結婚・妊娠前から人生設計を話し合える関係づくりを。

※アローアロー関係者の話を基に作成

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2014年9月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。