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Q 37年前の中絶、今も後悔

若げの至りだったのです。23歳の時でした。ひょんなことから妊娠。結婚していたわけではなかったので中絶しました。誰にも相談できず、心の中に納めてきたのですが、最近後悔の気持ちが強くなって……。(60歳・女性)

・・・悩む女性の様子(イラスト)A 精いっぱい生きることが供養に

37年たった今も罪悪感に苦しめられていることを知り、胸が痛みます。この欄でもしばしば登場する「男女の生活と意識に関する調査」(2012年)によれば、女性の14.7%が中絶を経験し、そのうち36.3%が中絶を繰り返しています。1回目の中絶を受けた平均年齢は24.5歳。「最初の人工妊娠中絶を受けることを決めた理由」の1位は「相手と結婚していないので産めない」(31.4%)、「経済的余裕がない」(15.7%)、「相手との将来を描けない」(10.8%)と続きます。さらに「最初の人工妊娠中絶を受ける時の気持ち」を聞くと、「胎児に対して申し訳ない気持ち」(53.9%)、「人生において必要な選択である」(14.7%)、「自分を責める気持ち」(13.7%)となっています。

このような数字を羅列して、「あなただけではないこと」を強調するつもりは毛頭ありません。でも、考えてみれば、100%確実な避妊法がこの世に存在しない限り、性行為のある誰にも妊娠の可能性があり、それが計画外であった、諸事情で妊娠を続けられない、その結果、中絶することはあり得るのです。

以前、高野山奥の院(和歌山県高野町)を訪れた時、数え切れないほどの水子地蔵が祭られている場所を見つけました。老女や、時に若い女性が花を手向ける姿を見て、「もういいでしょうに」と声を掛けたくなりました。不思議なことに、そこには男性の姿がありません。妊娠は男女の営みの結果なのに、女性がその責任を一手に引き受けているのです。供養することで少しでも心が癒やされるのであれば、それを否定はしません。ただ、石はただの石でしかありませんし、今を精いっぱい生き続けることこそが供養になるのではないでしょうか。

水子地蔵に手を合わせる女性の様子(イラスト)

診療の場で中絶の相談を受けることがあります。そんな時、妊娠している女性の健康が維持されなければ胎児の正常な発育は保証されないこと、従って身体的、精神的、社会的に、妊娠の継続が困難な女性は、中絶を余儀なくされる場合もあることを話し、中絶をモラルとしてではなく、性と生殖に関する健康と権利の視点から捉えるようにと助言しています。

少子化時代に「家族計画」もないだろうという方がいます。でも、意図しない妊娠をゼロにできない以上、「産みたい時に産めるように、産めないのであれば避妊を男性任せにしないで確実な避妊を!」の声を上げ続けなければなりません。(日本家族計画協会クリニック所長、北村邦夫)

毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2015年1月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。