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教えてワークルール・固定残業代 問題点は


●法規制なし、月100時間含む例も

多くの新社会人がデビューしました。初めて給料をもらう人も少なくないと思います。最近は賃金支払い明細を見て、首をかしげるケースもあります。求人要項と明細が違うというのです。その原因の一つが「固定残業代」です。どのような問題があるのでしょうか。

Q 基本給が求人要項の半分の賃金だったという友人がいます。

A それはおかしいですね。どういう契約でしたか?

Q 就職説明会の資料には「基本給30万円」って書いてあったそうです。しかし、初任給の明細をみたら「基本給15万円」「固定割増手当15万円」だった。もらう額は30万円ですが、何かおかしい。

A 「固定残業代」という手法で、最近増えています。残業代をあらかじめ決めた額で支払うもので、あなたの友人のように基本給に混ぜ込む方法や、基本給とは別に、独立した手当として支給する方法もあります。友人は賃金の半分が残業代ですね。

Q 入社した月の残業が150時間で翌月は200時間だったそうです。だから残業代がたくさん出るかと思ったら30万円の賃金だけだったそうです。

理想と現実の違いに困惑する様子(イラスト)A 会社は「固定残業代を支払っているから」と言ってきちんと払わないんですね。150時間や200時間と言ったら、固定残業時間を大きく超えているはずです。

Q 残業代は、残業したら支払うものではありませんか。

A そうです。1日8時間の労働時間規制を超えたら支払うことを義務づけています。健康を守るための規制なので、残業を見込んで定額を払うのは脱法的な方法にみえます。けれど法的規制がなく、違法か適法かの判断基準はありません。ただ、裁判の判決で適法かどうかを判断する基準はできつつあります。

Q どんな基準?

A ポイントがいくつかあります。(1)固定残業代の金額が明確かどうか。別表の求人票にあるように「固定残業代含む」では、それがいくらなのか分かりません(2)額が分かっているとして、残業代の何時間分に当たるのかが明確なこと(3)その時間分の残業を超えた場合に残業代が払われているか(4)固定残業代の内容について合意があるか(5)残業代が法律で決まっている割増率(25%以上など)や最低賃金を上回っているか――が挙げられます。また「固定」残業代なので、規定の残業時間に達しなくとも定額が支払われなければなりません。

Q ポイントを満たしていなかったらどうなるのですか。

A 固定残業代として無効になる可能性が高いです。無効なら、残業代を新たに請求することも可能になります。

Q 固定残業代を導入するのはどうしてですか?

A 一つは基本給の中に混ぜ込めば、一見すると基本給が高く見えます。あなたの友人も基本給が30万円なら良いと思ったのでは。また、基本給などを低く抑えることで、残業代も低く抑えられるということもあるでしょう。

厚生労働省が昨年出したハローワークなどへの連絡では、ハローワークの求人で1000件中、145件の求人で固定残業代を巡り不適切な記述があったとしています。

また、NPOや弁護士で作る「ブラック企業対策プロジェクト」が、京都府内のハローワークで固定残業代を含む約200件の求人を調べたところ、77%が前述のポイントを満たさない求人であったとの結果が出ています。

Q 広がっていますね。

A 中には80時間や100時間という過労死ラインの残業を固定残業とする企業すらあります。求人票に固定残業やそれがうかがわれる記述があったら、内容を詳しく聞く必要がありますね。

◇求人票を見る際のポイント求人票の様々な表記に困惑する様子(イラスト)

例1【大卒・短大卒】月給25万円(固定残業代含む)
  ポイント 固定残業代の表記があるが、何万円分か何時間残業か分からず、基本給も不明

例2【大卒】月給30万円、月50時間を超えた時間外労働には別途手当あり
  ポイント 固定残業の表現はないが、月50時間以上別途手当とあり、月給30万円の中に50時間までの固定残業代が含まれている可能性が大=制度の有無の確認が必要

例3【大卒】基本給20万円(うち深夜手当4万円含む)、諸手当有り
  ポイント 固定残業代の表現はないが、深夜手当が何時間分に相当するかが不明確=深夜手当は1.25倍の割増手当がつく相当数の深夜労働がある

例4【大卒・短大卒】月給22万円(基本給15万円、職務給2万円、OJT手当5万円)
*OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)手当は時間外50時間相当額として定額で支給、50時間に満たなくとも支給する。
  ポイント OJT5万円が固定残業代。50時間に満たなくとも支払うとされている。50時間を超えた残業代は別途請求できる

※固定残業代に関する厚生労働省の連絡文書などを参考に作成


毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2015年4月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。