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強まる求人意欲 既卒者に追い風


在学中の就職活動がうまくいかなかったり、就職したものの早期離職してしまったりした既卒者は、新卒に比べ雇用機会が狭まりやすいと言われます。でも近年、企業の求人意欲は高まっており、中小企業の中には既卒者の採用に積極的に乗り出す動きが出てきています。

●中小企業、積極的に

就職先がなかなか決まらない既卒者(イラスト)「周回遅れの就活は厳しかった」。東京都内にあるネットサービスの中小企業で働く24歳の男性は言います。東京都内の中堅大学に在学していた時は大手企業を目指しましたが内定を得られず、昨年春の卒業後も就活を続けました。しかし、1年後輩の現役学生らの選考開始と重なり、大手企業には応募しても選考にも至らない「既卒の壁」を味わいました。志望先を中小企業に切り替え、昨夏、現在の会社に入社を決めたそうです。「中小企業のほうが、じっくり話を聞いてくれました。今は満足しています」と話しています。

就業経験のない学生と企業とを結びつける「新卒一括採用」のシステムは、在学中に就職できずに卒業してしまうと、就職の機会が狭まりやすい弊害があります。

2008年のリーマン・ショック後、雇用が悪化した2010年、政府は、卒業後3年以内の既卒者は新卒扱いするよう企業に求める指針を定めました。でも、ある採用支援会社が昨年9月に有力企業に行った調査では、3年以内既卒者の応募を受け付ける企業は66%を占めるものの、内定を出したのは14・2%にとどまりました。

しかし、景況が改善してきて企業の求人意欲が強まり、特に人材確保に苦労する中小企業には積極的に既卒者採用に乗り出す動きが出ています。既卒者には追い風が吹いているのです。

●面接会で人柄見て

「卒業後は、どんな活動をしていましたか」。今年8月上旬、東京都内で開かれた合同面接会で、若い人材を採用したい中小企業12社と既卒者20人が顔を合わせました。

面接会を運営する採用支援会社によると、知名度の低い中小企業は、募集広告を出したり説明会を開いても、新卒者が集まりません。そのため、既卒者に着目する企業がかなり増えているそうです。

参加した既卒者は事前に2週間の営業研修を受講しています。小冊子を販売する飛び込み営業も経験し、仕事への自信もつけました。

首都大学東京を今春卒業した25歳の男性は、地方公務員を志望していましたが昨年は6自治体の選考で全敗し、民間企業に志望を変更しました。「就活は未経験ですが、面接会なら人柄を見てもらえそう」と期待を寄せています。

東京工科大を今春卒業した22歳の男性は、大学院への進学を控えていましたが、経済的な事情であきらめ、今年2月に慌てて就活を始めて住宅設備会社に就職しました。しかし就業条件が当初の説明と食い違ったため1カ月で離職。「企業研究が未熟だったため、失敗してしまいました。長く働くことができるような職場を見極めたいです」と真剣です。

就職ショップでコーディネーターの面談を受ける若者(イラスト)●意欲ある若者を紹介

「毎日の仕事を頑張れますか」。面談ブースでは、正社員を目指す若者がコーディネーターの話に耳を傾けています。別の採用支援会社が運営する「就職ショップ」の店舗です。同社が2006年に始めた、中小企業向け人材紹介サービス事業で、首都圏・関西圏で計9店舗を運営しています。

これまでに若者9万人が登録しました。9割が20代で、半数以上は正社員経験がありません。多くは新卒時に就職環境が厳しく、▽アルバイトや非正規雇用で働いている▽公務員試験に挑戦していたが、民間企業へ就職したい▽留学先から帰国したが就活の仕方が分からない――といった事情を抱えています。一方、中小企業側は「企業の魅力が伝えられない」「若者の応募がない」などの悩みを抱えています。

若者にはコーディネーターが必ず面談し、仕事の潜在力などを見極め、希望に見合った企業を紹介しています。契約する企業の8割は若者との面接にこぎ着けており、採用に結びついているそうです。若者の中には正社員として働いた経験がないため自信を企業側に伝えられず、働く意欲が失われて不安を1人で抱え込んでいる人が多くいます。この店舗は、可能性のある人材に「働く覚悟」を培ってもらい、社会に送り出すきっかけになっています。


毎日新聞生活報道部

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