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親と子の「ダブルケア」が起きています


高齢化や晩婚化、きょうだい数の減少に伴い、親の介護や子育てを同時進行で行う人が出てきています。この状態は「ダブルケア」と名付けられ、特に40歳前後の女性に負担がかかりがちになっています。「団塊の世代」が75歳を超える2025年をにらみ、新たな支援が必要なのでは、と指摘されています。

「ダブルケア」によって慌てる主婦(イラスト)●晩婚化などに伴い、40歳前後が直面

ダブルケアと名付けたのは横浜国立大大学院の相馬直子准教授(福祉社会学)らです。この状態に関する政府の調査データはまだありません。

相馬准教授らは2012年から14年にかけ、3回にわたって横浜市、静岡県、京都府、香川県、福岡県などで子育て中の女性ら1833人を対象に調査を実施しました。

その結果、「現在ダブルケアに直面している」と回答した割合は7.9%。「数年先に直面」が17.8%、「過去に直面していた」は6.3%でした。

「現在直面している」と回答した方の平均年齢は41.13歳で、団塊ジュニア世代にあたります。第1子の平均年齢は7.74歳と、まだケア(子育ての世話)が必要で、特に40歳前後がダブルケアの負担を負っていることが分かります。

また、40歳前後の女性の特徴として、働いている人が多く、「現在直面」と回答した方の51%がパートやアルバイトを含む何らかの仕事をしていました。さらに「数年先に直面」と回答した人のうち、2割以上は「正規職」でした。

こうした結果から、ダブルケアの人に対しては、企業が仕事とケアを両立できるように支える必要のあることがうかがえます。

●子どもが不安定に

横浜市に住む42歳の主婦は約4年前に74歳の父が脳出血で左半身まひになりました。女性は当時、幼稚園年長の長男と1歳3カ月の次男の子育て真っ最中。「父が倒れるのが少し早くて、私が子どもを産むのが少し遅めだったことが重なっただけで、ダブルケアになりました」と当時を振り返ります。

父の意識が戻るまでは毎日、父の足のマッサージに通いました。意識が戻ってからは洗濯物を回収するためなどで、やはり病院に通ったそうです。午後3時からの面会可能時間に病院に行くためには、長男を預けておきたいのですが、幼稚園の延長保育は時間が短くて使えず、子連れで病院へ通いました。父が退院した後も最初は車椅子での移動だったため、ベビーカーを使えず、子どもを抱いて病院へ行ったこともありました。

外出していても、父が転倒すると起こしに自宅に帰るなど、父の都合を優先せざるを得ない日々が続きました。長男はいつの間にか我慢し、ささいなことで泣き出して情緒不安定になったそうです。女性は涙ぐみながら、「母として一番つらいのは、子どもたちの笑顔がなくなること。介護保険を申請する自治体窓口で、一時保育についての情報提供などがあれば楽になったと思います」と話しています。

●行政の支援急務

こうしたダブルケアに直面している人を支援しようと、任意団体「ダブルケアサポート横浜」(事務局・NPO法人シャーロックホームズ)は当事者の体験談を集めた冊子「ハッピーケアノート」を今年度内に完成させ、支援者向けの研修を始める予定です。一時保育に子供を預けるお母さん(イラスト)

内閣府が6月にまとめた「女性活躍加速のための重点方針2015」でも、「1人の女性に育児と介護の負担が同時にかかる、いわゆる『ダブルケア』問題の実態について調査を行い、その結果等も踏まえ、対策の検討を進める」としており、今年度内には実態調査が行われる予定です。

ダブルケアの人への支援については、「緊急かつ柔軟に使える一時保育や保育園の優先入所など保育側のニーズを満たすことが最優先」と指摘されています。ダブルケアは突然発生するうえ、特に都市部では保育所不足が深刻なためです。子どもにしわ寄せが行くことは、ケアする人の心理的な負担や葛藤が高まる原因にもなります。

長期的な施策として「介護を中心とした地域包括ケアシステムと、子育て期全体の支援をする子育て世代包括支援センターの双方を束ねる仕組みが必要だ」との声もあります。


毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2015年11月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。