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売り手市場で「内定ブルー」


就職活動(就活)を終えても、社会人生活への不安や入社への迷いを抱える学生は少なくありません。特に、今年の就活は強い売り手市場となった結果、学生が自分のキャリア観を深められなかったという指摘があります。企業や大学には学生への支援が求められているのです。

内定獲得後に悩む就活生(イラスト)●内定後に迷う学生

「自分の選択は正しかったのだろうか」

今夏に第1希望の大手銀行の内定を得て、来春入社を控えた早稲田大の22歳の男子学生は、「もやもやした思い」を引きずっているそうです。

彼は8月の大手銀行の選考をゴールと定め、7月までに大手メーカーなど3社の内定を得ました。「大学受験と同じ。まず内定を目指し、安心したいという気持ちで突っ走りました」。結果には満足しており、両親も「いい会社に入れた」と喜んでいるそうです。

だが、辞退したメーカーの方が、「ものづくりへの思いに共感できた」と感じています。内定者懇談会では、金融事業への夢を語る同期らと接し「先を越されている」という焦りと「自分は向いているのか」という疑問が交錯したそうです。「入社すればそんなことを考える余裕もなくなるんでしょうけれど」

●不十分な絞り込み

就活を終えた今、社会人生活への不安や入社への迷いがわき上がる、そんな「内定ブルー」を抱える学生は少なくありませせん。企業の内定者フォローに特化した、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を提供する東京都内の企業によると、学生は内定獲得後に意欲が低下しやすく、「9割の学生は人事からのアクションを期待しています」。

多くの学生にとって、就活は自分のキャリアについて初めて真剣に考える機会です。企業や業界の研究を深め、自分の内面の志向を探り、就職へとすりあわせていくのです。その過程が不十分であれば、内定後の迷いや、入社後の早期離職に結びつきやすくなります。

今年の就活は「学生が十分なキャリア観を形成しにくかった」という指摘があります。人材支援会社が就活生を対象に行った調査では、3月から8月にかけ各業種の志望割合の変化は少なく、特に「金融業」はほぼ横ばいでした。

同社の担当者は「通常は就活が進めば志望先が絞り込まれ、各業種の志望割合は減ります。十分な絞り込みが行われなかったり、自分が何に向いているか、総合的な判断が進みにくかったりしたのが横ばいとなった理由でしょう」と分析しています。

強い売り手市場となり、複数内定を得る学生も多く、多くの選択肢の中で、迷いが生じやすくなっているともいえます。

●企業と大学の支援

企業にとっては、内定を出した学生への支援が重要になっています。別の人材支援会社の担当者は「入社意志の強い学生は、自分の志向・仕事観の理解が深いのです。企業は学生に自分のキャリアへの理解を促し、その志向に合わせた情報提供を行う必要があります」と指摘しています。「働く」を考える就活生(イラスト)

ポイントは時期です。学生の気持ちは、選考中は内定獲得を最優先する「受験モード」にありますが、内定後は入社先を見極める「検討モード」に切り替わります。「選考中の学生には仕事への充実感を伝え、内定後は仕事でどのような経験をしたいかを問いかけ、考えさせる、対話の切り替えが重要なのです」。

大学にも、内定後の学生の支援に乗り出す動きが出ています。都内のある女子大学は今年3月、卒業前の4年生を対象に「入社前研修」を初めて開きました。キャリア専門家が、社会人として仕事に対する心構えやキャリア設計について説き、学生らに考えさせたのです。ここ数年、入社前に迷いが生じたり、入社後に悩みの相談に来たりする学生が増えていることに対応しました。

同女子大のキャリアセンター担当者は「これまで大学のキャリア支援は『内定獲得まで』を軸にしていましたが、内定はゴールではありません。人生という長いキャリアへの支援に踏み込むことが課題なのです」と話しています。


毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2015年12月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。