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理想の上司は「イクボス」です


育児との両立など部下のワーク・ライフ・バランス(WLB)に配慮しながら仕事で結果を出し、自分自身も仕事と私生活を楽しむことができる上司を「イク(育)ボス」といいます。長時間労働を減らし、誰もが仕事とプライベートの両方を大事に働ける風土を作るため、「イクボス」が浸透することに期待が寄せられています。

●合理性追求の結果

子持ちの部下に慕われるイクボス(イラスト)「部下や自分のWLBは必ず直面する問題。クリアして部のパフォーマンスを上げなければという危機感がありました。合理性を追求した結果のイクボスです」

こう語るのは、優れたイクボスに贈られる厚生労働省のイクボスアワード2015のグランプリを受賞した、42歳の男性部長です。時短勤務や在宅勤務で、働く育児中の社員を積極的に部下として受け入れながら、業績を上げています。

なぜ、あえて制限勤務の社員を受け入れるのでしょうか?

この方は「人数は力になります。少人数では周囲に理解されにくく浸透もしませんが、大勢いれば共感も理解も進みます。もとから職場にいた育児中の社員の力をより発揮するため、自分のマネジメントスキルを上げるため、なのです」と話されています。限られた時間で最大限の成果を上げようとする制約社員の働き方に影響され、自然と部全体の生産性が高まりました。

昨年、長男が生まれ、今は自身も出社を1時間遅らせる時短勤務で働いています。夜は遅くても午後7時には退社しています。無駄を省くために会議を減らし、バックアップの意味を込めて全員のスケジュールやメールを全員で共有。必要に応じて確認し、疑問があればすぐに尋ねます。上司であるこの男性部長の働き方が変わったことで、部下もさらに時間や効率を意識するようになったそうです。

能力があれば、勤務形態にとらわれずに登用しています。2012年には、長男の育休明けで時短勤務の40歳女性を、3カ月の「スタートダッシュ期間」を与えた後すぐにリーダーに抜てきしました。彼女には「周囲からどう見られているかを気にしながらコミュニケーションを密に仕事を進める」ようにアドバイスしたそうです。この女性も期待に応えました。アワードでは、この女性を課長に推薦し、イクボスの連鎖を生み出したことも評価されました。

●本人の価値観が壁部下の突然の休暇にも寛容なイクボス(イラスト)

ただ、彼のような上司はまだ少数派です。男性の子育てを推進するNPO法人が、今年3〜4月に行った調査によると、理想の上司を「イクボス」と答えた割合は94%に上りますが、実際に現在の上司が「イクボス」だと回答したのは43%にとどまりました。イクボスが生まれない阻害要因を尋ねた項目(複数回答)では「上司自身の価値観」(48%)が最も多く、管理職層へのWLB意識の浸透の低さをうかがわせる結果となりました。

一方、人材確保の観点などからイクボスの有用性は認められつつあります。最近は会社の枠を超えたイクボスの連帯の場も広がってきました。

このNPO法人が昨年末に大手11社で発足させたイクボス企業同盟は、加盟社が37社にまで増えました。自治体では、全国で初めて北九州市の全管理職がイクボスを宣言。市を挙げて企業への啓発に取り組んでいます。

「全員がWLBについて相互理解を深めながらモチベーションを高く働くにはどうすればいいか」「仕事の振り方や怒り方に自信がない」――。9月に開かれたイクボス他社交流会は、21社から約100人の管理職が参加して盛況となりました。日ごろの悩みや愚痴を語り合い、解決方法を探ったそうです。

そこではこのような声も。「(どれだけ時間がかかっても9回までゲームが続く)野球から(90分以内にいかに多く得点するかで勝敗が決まる)サッカーへ仕事のやり方が変わってきました。今後は『イクボスでなければ上司ではない』という時代になります」。

■イクボス10カ条

(1)理解 部下の私生活を理解
(2)ダイバーシティー 部下の多様なWLBを尊重
(3)知識 社内制度や関連法の知識
(4)組織浸透 組織全体にWLBを勧める
(5)配慮 私生活に影響する人事への配慮
(6)組織改善 情報共有やモバイル活用などで育休中の人手不足を補う
(7)時間作り 無駄な業務の削減
(8)提言 上司にWLB重視の経営を提言
(9)有言実行 業績向上を実証し、イクボスを社会に広める
(10)隗(かい)より始めよ 自ら仕事と私生活を楽しむ
*五つ以上でイクボス
(NPO法人の資料から)


毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2015年12月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。