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就職戦線:企業がほしい学生に接触するように変化


新卒の採用で、学生側が主導権を持つ「売り手市場化」が進むなか、企業の採用手法は多様化してきています。学生の応募を待つ「受け身」型から脱し、企業から「欲しい人材」にアプローチする「ダイレクトリクルーティング」を取り入れる動きが出ているのです。

2017年卒の採用数は16年卒よりもさらに拡大しそうな様相です。民間調査会社が企業4794社を対象に行った調査では、採用数が「増える」(13.4%)との回答は「減る」を9.2ポイント上回りました。今後の景気動向に左右される可能性はありますが、「採用意欲が低下する要因は見当たらず、当面堅調に続くでしょう」とこの調査会社はみています。

新入社員獲得に苦労する採用担当者(イラスト)16年卒の採用では、大手企業でも採用計画数の新卒を確保するのに苦労したところが多かったようです。そのため、学生から応募を待つ受け身型では人材確保が難しいとみて、企業から学生に接触を図る「ダイレクトリクルーティング」を取り入れる動きがあります。

●専用サイトに登録

大阪市の人材支援企業が運営する新卒採用サイトは、ダイレクトリクルーティングの草分け的存在です。サービス開始から3年目の16年卒の就活は、導入企業約1200社、登録学生数が約2万人に成長しました。日産自動車など大手企業の活用も増えているそうです。

このサイトでは、学生が文章や動画で自己表現し、採用担当者が興味を持った学生に面談希望のオファー(申し出)をする仕組みになっています。

学生には、従来のエントリーシートの枠を超え自由に自分をアピールできる利点があります。内容は随時更新できますので、応募企業ごとにエントリーシートを作成する手間もいらなくなります。

企業側としては、採用効率が高まることが期待できます。一般的に、新卒採用では面談した学生のうち採用基準を満たすのは1割程度とされています。これに対しこのサイトでは企業が学生に面談を申し入れた際、学生が応じる割合は4〜9割と高く、面談した学生の4割は採用基準を満たすそうです。

従来の手法では応募してこなかったようなタイプの学生や、地方在住の優秀な学生を「発見」できるのもメリットです。「出会えていなかった学生に出会えたという声が3割。満足度は高いのです」とこの人材支援企業は説明しています。

●双方向の働きかけ

別の、東京の人材支援企業が運営する新卒採用サイトは、17年卒からダイレクトリクルーティングに特化する予定です。有力大の就活生223人に今年の就活の不別の満を聞いたところ、@時期が後ろにずれ学業時間が確保できない(37%)Aどの企業が自分に向いているか分からない(15%)B選考後の対応が不誠実(14%)といった声が上がりました。この支援企業は「情報の少ない学生から、企業に働きかける一方通行の手法が学生たちの不満につながっています。ダイレクトリクルーティングで双方向の流れができれば、多く問題は解消可能なのです」と話しています。

ダイレクトリクルーティングは欧米では転職や新卒採用で広く普及しており、その一例である、米国発のビジネス型ソーシャル・ネットワーキング・サービス「リンクトイン」には世界で約3.5億人が登録しています。海外ではリンクトインにプロフィルを載せていることがインターンシップへの参加要件になっているといいます。

求めていた人材を獲得した採用担当者(イラスト)●一部に有利な面も

日本では2000年ごろから就職サイト経由の採用が主流になりました。応募の門戸は広がりましたが、「ミスマッチ」はかえって広がり、企業と学生双方が不満を募らせている面があります。人材採用活動を研究している大学教授は「学生は報われるエントリーシートを書きたい、企業は意味のある採用活動をしたいと願っています。企業には将来、戦略としてダイレクトリクルーティングを増やす動きが出ています」と分析しておられます。

一方、ダイレクトリクルーティングは、自己アピールの上手な学生、人気のある企業に有利に働くという面も指摘されています。このため、上記の二つの人材支援企業のサイトでは、企業からのオファー数に制限を設けています。「情報弱者が不利になるようでは意味がありません。企業と学生とがじっくり向き合える仕組みをつくりたいですね」と話しています。


毎日新聞生活報道部

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