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男性の育児を阻む「パタハラ」


育児と仕事の両立に悩む男性が増えています。政府は2020年までに男性の育休取得率13%を目標に掲げていますが、14年度の取得率はわずか2.3%。「イクメン」を後押しする取り組みも増えてきた一方で、育児参加しようとする男性社員へのパタニティー(父性)・ハラスメント(パタハラ)の問題も表面化しています。

●仕事か家庭か迫る

上司に仕事か家庭かを迫られる会社員(イラスト)「君だけだぞ、何を考えているんだ」

建築関係の企業に勤める30代の男性は昨年、同僚の前で上司からこう叱責されたそうです。育児を理由にフレックス勤務にしているため、職場の会合に参加できなかったのです。欠席の理由を説明し、会合を出勤時間帯に変えてもらえないか頼んだのですが、聞き入れてもらえなかったのです。

男性は共働きの妻と2人の子どもを育てるため、会社の制度を利用して朝は6時台に出社し、午後4時過ぎに帰宅する生活を数年間続けています。同僚は理解してくれましたが、上司は「チームワークが乱れる」と批判的でした。一方的に退社後に設定された会合は中身がなく、仕事か家庭かを迫る「踏み絵」だと感じたそうです。

男性は「同僚を巻き込むわけにはいかず、誰にも味方してもらえないのがつらかったです。それでも後輩のためにも、自分が風よけにならなくてはと思いました」と振り返ります。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で同じ悩みを持つ人とつながったことが、心の支えになったそうです。

●6割が泣き寝入り

「パタハラ」とは、男性が育児をする権利や機会を侵害する言動を指します。連合が13年末に行った調査では、子どもがいる男性の11.6%がパタハラを受けた経験があり、そのうち6割以上が誰にも相談せずに泣き寝入りしていたことが明らかになりました。

だが、パタハラはようやく可視化されつつある問題で、この数字は氷山の一角に過ぎません。ある男性団体職員(38)は昨春、連合の調査結果にショックを受けたのを機に「パパ友」らとともに「パタハラ対策プロジェクト」を発足。昨年6月から子育て中の男性らを対象に実態調査をする中でさらに衝撃を受けたそうです。育休や時短・フレックス勤務を申請した際に降格などの不利益な待遇をされたことがある人は23%、同僚や上司から否定的な発言をされたことがある人は45%に上ったのです。パタハラという言葉を知っていたのは、わずか33%でした。

この男性は「育児は母親が担うべきもの、という意識がパタハラを生んでいます。パタハラが横行する状況が続けば、育児参加したくてもできない男性がどんどん増えます。結局は少子化対策も女性活用も絵に描いた餅になってしまいます」と危惧しています。

●企業の意識改革を

男性の育児参加をめぐっては、政府は少子化対策として2020年までに育休取得率13%、配偶者の出産後休暇取得率80%を数値目標として挙げています。企業にも後押しする動きが出てきています。

大手飲料メーカーは昨夏から「イクメンイクボス実践委員」と題したプロジェクトを始めました。自薦他薦の委員11人が、職場と家庭で実践している両立の知恵を、社内に波及させようという取り組みです。

委員の一人で、5人の子どもの父親でもある39歳の男性は「思い返すと、男性同士で仕事と家庭の両立について話したことはありませんでした。良い情報共有の機会になったし、会社の方向性を知ることができたのは励みにもなりました」と話しています。男性社員の育休に寛大なイクボス(イラスト)

大手ポータルサイトでも、昨秋行った育休取得者向けの座談会に、初めて男性社員が参加しました。同社の昨年度の男性育休取得率は7.8%と、前年の約3倍。座談会では男性取得者同士で情報交換したり、育休中の女性社員と夫婦の協力体制について話し合ったりしました。

ただこうした動きはまだ一部です。あるNPO法人が昨年6月に行った調査では、1歳半以下の子どもを持つ20歳以上の男性1030人のうち、46%は、妻の出産時に育休を取るのではなく、有給休暇など別の制度を利用して休んでいました。また大半が妻の入院中に1〜3日間休んだだけで、取得の時期も期間も、希望(退院後、1週間から1カ月)にはほど遠い状況でした。

この法人は、「妻の妊娠を伝えられたら『育休はいつ取るの?』と必ず聞くなど、決まり事にしてしまうことが必要です」と訴えています。


毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2016年2月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。