お役立ち情報/情報ものしり帖


「機能性表示食品」登場 もっと消費者目線を


体にどのようによいかを国の審査なしに企業の責任で表示できる「機能性表示食品」の届け出が4月に始まり、消費者庁は受理した食品を公表しています。5月14日までにサプリメントを中心に21品目あり、6月半ばにも市場に出てくるとみられています。表示の科学的な根拠も同庁のホームページで公開されていますが、専門用語が多く、読み解くのは容易ではありません。専門家は「消費者の問い合わせに応じる何らかの制度づくりが必要」と指摘しています。

●食品に科学的根拠

機能性表示食品の手続きの特徴は、「体にいい」という科学的根拠などを、販売前に原則として公開すること。消費者に情報をオープンにして、消費者自身に判断してもらおうという趣旨です。このため、公表された情報を消費者が読み解けるかどうかは、制度を有効活用するための重要なポイントとなっています。

公表された21品目をみると、18品目はサプリメント(栄養補助食品)。ほか3品目はノンアルコール飲料と清涼飲料水で、「体にいい」成分は、食物繊維(難消化性デキストリン)などです。

同庁ホームページにはこの21品目について「一般向け」と「有識者向け」の2種類の情報が公開されています。分量が多く、中には英語の論文もあります。

臨床研究の分析が専門の大学教授(生物統計学専攻)は、公表された根拠や論文を分析しました。その結果、「質の低い論文を採用したものや、臨床試験の症例数が少ないケースがあります。一般の人が読んで内容を深く理解することはまず不可能ではないでしょうか」と指摘しています。何らかの解説がなければ、どの製品のどの表示が的確かを見極めることは極めて難しいのです。

●説明に微妙な差表記の違いにとまどう主婦(イラスト)

機能性に関する説明では言い回しの意味を知っておくことも必要になります。例えば、「ラクトフェリン」に関する説明では「高めの体格指数(BMI)の改善に役立ちます」とあります。一方、ノンアルコール飲料に含まれる「難消化性デキストリン」の効果では「食後の血糖値の上昇をおだやかにすることが報告されています」とあります。

どちらも体にいいことを同じように表現しているように読めますが、「○○の改善に役立ちます」と、「○○が報告されています」には大きな違いがあるのです。

今回の「ラクトフェリン」に関しては、届け出た大手化学メーカー「ライオン」がヒトの臨床試験を実施しているため、これこれの機能があると直接的な表現で書かれています。

しかし、「難消化性デキストリン」は届け出た大手飲料メーカー「キリンビール」などがヒトの臨床試験をやっていないため、過去の複数の研究結果を基に「○○の効果が報告されている」と間接的な表現にとどまっています。この表現の仕方は消費者庁のガイドラインに沿ったものですが、この微妙な差を理解している人は少ないと思われます。

●隠れた情報も

表示されている内容以外に隠された事実があるのを知っておくことも重要です。例えば3品目は「ヒアルロン酸は肌の水分保持や潤いに役立つことが報告されています」とうたっています。これを読む限り、ヒアルロン酸は肌だけに効果があるように読めますが、国内外では膝の関節に関する臨床論文も多くあります。膝に関する記述が出てこないのは、機能性表示食品制度では病気の予防や疾病リスクに関する表示ができないためなのです。

つまり、病人を対象にした臨床研究で効果があっても、そのデータは機能性食品には活用できないのです。機能性食品はもともと、健康な人が表示を見て選択する制度だからなのです。

消費者は食品の安全性が一番大切(イラスト)健康食品問題に詳しい大学教授は「ヒアルロン酸を長期間摂取した場合、膝にどんな影響があるかを消費者は知りたいところですが、今度の表示ではそこまでの深い情報は分かりません」と言います。第三者的な解説か幅広い関連情報の公開がなければ、消費者としても選択の幅が限られてしまうのです。

食品の安全性やリスクに詳しいNPO法人「食の安全と安心を科学する会」は、「今度の制度は、情報が十分に公開されていなかったトクホに比べ、情報公開が進んで大きなプラスだ」と評価しています。一方で「消費者から見ると安全性が一番重要なので、少なくともサプリメントについては、米国の制度と同じように、医薬品と同等くらいの品質管理基準(GMP)を義務づけるべきでしょう」とも言います。

「消費者からの問い合わせに応じる体制もつくってほしい」と、消費者庁に、消費者の視点に立った対応を求める声もあります。


毎日新聞生活報道部

Copyright© 2003 - 2015 Kyoei Fire&Marine Insurance Co.,Ltd. All rights reserved
※掲載されている情報は2015年6月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。