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就業体験で新規事業を開発


新卒採用意欲の高まりを背景にインターンシップを導入する企業が増えています。キャリア形成に前向きな学生ほど積極的に参加する傾向があり、企業も人材を見極める場として重視しているそうです。インターンを通じた双方のマッチングが前倒しで進んでいます。

「アイデアは面白いが、これでは利益が出ない。どうやってもうけるかを明確に」

東京都新宿区に本社がある人材サービス大手が、来春の大卒予定者を対象に起業家育成型インターンシップを開きました。学生の事業提案発表に、審査役の同社幹部から厳しい意見も飛んでいます。

インターンでビジネスコンテストを(イラスト)●実現性を問う

このインターンシップは新規ビジネスプランを策定する1カ月半のプログラムです。書類選考などを経て30人が参加しました。3人ずつのグループに分かれ、メンター役の社員からサポートを受け、合宿や週2回のワークショップなどで課題に取り組みました。

大学生らが事業アイデアを競う「ビジネスコンテスト(ビジコン)」をインターンに取り入れる企業は多くありますが、このプログラムは、実際にビジネスとして成り立つかを重視しています。審査で承認を得れば、事業化を前提に、立案した学生を責任者として迎える「入社確約」をします。入社するかどうかの判断は学生に任せます。

学生らは、市場調査でニーズの裏付けがあるか▽利益計画はどうか▽競合他社とどう差別化するか▽事業に社会的意味があるか――などを検討します。最終審査では2グループが合格となりました。

エンジニア系学生の採用支援事業が認められた都内私立大3年の男子学生は「在学中に営業の長期インターンシップを経験し起業に興味を持ちました。今回はチームで意見の食い違いを乗り越え目標に向かうことを学びました。ぜひ実現化させたい」と意気込んでいます。

名古屋市の3年生の女子大学生は不合格となりましたが、「1カ月半全力で取り組んだ経験は大きい」と感慨深げでした。「やりたいことへの思いがあっても、きれいごとではもうからない。ビジネスの現実を知りました」。ITベンチャーへの就活を目指すそうです。

このインターンシップは、学生の就業体験というより当社の新規事業開発が目的です。「事業化するなら熱意を持った立案者に手掛けてほしい。新規事業や人材活用に積極的に取り組んでいることを学生に伝える意味もあります」とこの会社の担当者は話しています。

●面接を廃止面接を廃止。インターンシップのみの選考に(イラスト)

多くの学生は社会人として働いた経験がありません。このため新卒一括採用は、面接などで志望理由や自己PR、学生時代の取り組み、キャリア観などを多角的に聞くことで、学生の人物像を総合的に判断するのが主流となっています。でも企業の欲しい人材と学生が描くキャリア像をすり合わせていくのは難しく、時間もかかります。現在の「売り手市場」という環境もあり、ITや新興企業を中心に、実践的なインターンを活用して、求める人材を見いだそうという動きが強まっています。

東京都内のスマートフォン向けゲーム開発会社は、17年春新卒採用で面接を廃止し、インターンシップのみの選考にしました。インターンは、ビジネス企画など3コース。社長や事業責任者らがメンターとなり学生を指導します。第1弾は既に終了し、2月から内定を出し始めました。

企業と学生が時間をかけ課題に取り組むことで、企業は学生の適性を判断でき、学生も現実の仕事を知ることができます。相互理解が深まれば人材の成長も期待できます。

●6割「企業に好感」

東京都内の採用支援企業が今年2月、昨年10月以降にインターンに参加した学生に行った調査によると、参加動機は、特定企業をよく知るため▽志望企業・業界で働く経験をする――などが多く、66%は「その企業で働きたい」と好感を持っていました。国や日本経団連は、インターンは「就業体験であり採用選考とは関係ない」と位置づけていますが、キャリア形成に意欲的な学生ほどインターンを自己表現の場と見なす向きは強く、企業もそうした学生層にアピールするためさまざまな動きを進めているのです。


毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2016年4月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。