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読み終わった本、「寄付」しては?


読み終わった本の処分方法に、「寄付」という選択肢があります。愛着のある本や、まだまだきれいな本。古本屋に安く売るよりも、無償でも必要としている人に譲りたい。本好きな人の気持ちの受け皿になろうと動き始めたNPOや企業を取材しました。

読み終えた絵本を寄付(イラスト)●新設の保育園に

神奈川県茅ケ崎市の保育園に最近、段ボール箱3箱に入った計120冊ほどの絵本が届けられました。すぐに箱の近くに集まってきた園児らは、興味津々で絵本を開き始めました。今年4月に開園したばかりで、本棚に並ぶ絵本は20冊ほど。園長は「絵本は先生方の持ち込みがほとんど。買うと高価なので、寄贈していただき本当にありがたいです」と話しました。

届けたのは、2007年に同市で設立されたNPO法人です。このNPOは古本の寄付を募り、本を必要とする団体の求めに応じて、寄せられた古本を届ける事業を手がけています。

寄贈先は、保育園や病院、障害者福祉施設など市内15カ所のほか、東北や熊本の地震で被災した小学校など。読書以外にも、バザーで販売して資金確保に活用してもらっています。

受け入れているのは週刊誌やパンフレットなどを除くほとんどの図書。市内からの寄付だと無料でスタッフが回収に出向きますが、市外からだと寄付者が送料を負担します。

回収した本はアルコール拭きします。思いのこもった本は状態の良い場合が多く、ほとんどが活用できるといいます。傷みがひどい場合などは古紙として自治体に「寄付」するそうです。

「活字離れと言われていますが、本の需要は多い」と担当者は話します。本の愛好家が寄付する蔵書は量も多く、内容も幅広いといいます。

●ネット書店でも

インターネット古書店の中には、買い取り手がつかなかった本を利用して福祉活動への支援を行う企業もあります。

古本の買い取り、販売を行う「バリューブックス」によると、大量に出回った有名作家の過去のベストセラーや、ISBN(国際標準図書番号)コードのない本、傷みのある本などは、需要と供給で価格が変わるインターネットの古書市場では買い手が現れにくいといいます。しかしながら、古くても長く読み継がれてきた名作や絵本、市場価値が低くてもきれいな本は、喜ばれることが多いそうです。そのため、値がつかなかった本の一部を病院や高齢者施設などに寄贈しています。

また同社は本業に加えて2010年に、古本を換金してさまざまな団体に寄付する「チャリボン」という事業を始めました。あらかじめ同社と提携登録している団体から寄付先を選び、同社に古本を送ると、査定額が団体への寄付金となります。本はネット市場で売却されてお金に換わりますが、この仕組みのおかげで、大学やボランティア団体などに古書募金の輪が広がっています。同社の担当者は「団体、寄付者、会社にとって『三方良し』になればうれしい」と話しています。

絵本を選ぶ親子(イラスト)●老舗店舗は苦戦

古書売買と寄付を組み合わせたシステムは以前からありましたが、インターネットによる古書取引の普及で急速に拡大しました。

一方、古くからの古書店は客を奪われ、経営に影を落としています。1953年に東京都葛飾区に開業し、この道63年という店主は「古書市場は社会現象を映す鏡。本の処分にも歴史があります」と教えてくれました。

第二次世界大戦後から70年代半ばごろまでは本不足の時代で、古本も高値がついたが、その後20年で「読み捨て時代」に移行。近年では古本は買い手より処分したい人の方が上回るようになったといいます。「高く売りたいなら、その本に合った古書店を探すのが一番良い。パソコンやインターネットの影響を考えれば、この先は肉筆原稿に特化するなど古書店は一層、専門的になっていかざるをえないでしょう」と話しました。


毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2016年8月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。