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滞在型空間目指す「駅ナカ」


「移動」から「滞在」へと、駅に向かう目的に変化が生まれています。駅構内に出現した「駅ナカ」が、乗客を引き留めるだけでなく鉄道を利用しない人も集めているのです。その魅力を確かめるため、改札を入りました。

駅ナカでお惣菜を選ぶ女性(イラスト)●東京駅に新施設

日本各地を鉄道で結ぶJR東京駅。皇居に近い丸の内側から地下改札に入ると、商業施設「グランスタ」に通じます。今年7月、約970平方メートルを増床、改札外の「グランスタ丸の内」も新規オープンしました。化粧品や雑貨を中心におしゃれな店舗が連なる商業施設です。初日からスーツケースを片手に江戸情緒のあふれた手ぬぐいを品定めする旅行客や、高級ハンドクリームを試す女性らが行き交っています。それぞれにゆったりと買い物を楽しんでいるようです。

「グランスタ」は2007年に開業しました。運営する鉄道会館営業本部によると、東京駅はビジネスマンの利用が多い駅。出張の必需品である弁当やお土産、持ち帰り総菜を中心に力を入れています。利用客は男性が6割。増床エリアでは周辺で働く女性たちの心をつかむことが目標だといいます。「グランスタ丸の内」と合わせ今夏、新たに23店舗が開業し、来年夏までにカフェなどを含め計約120店舗となる予定だ。「入場券を買ってでも改札内に入り、滞在を楽しんでもらえるような施設にしたい」と担当者は意気込みます。

「駅ナカ」とは、基本的には改札内の施設のことを指します。開発の先陣を切ったJR東日本ステーションリテイリングの「ecute(エキュート)」は大宮駅を皮切りに、品川、立川、日暮里、東京の各駅に展開。05年の1号店の開業から10年が経過しました。「高価値・高価格の商品を駅構内で販売することは当時は新鮮でしたが、今では当たり前に受け止められるようになりました。次の段階としては、『過ごす駅』を目指したい」と営業部の広報担当者は話します。

鉄道会社の経営に詳しい評論家の佐藤信之さんは、その発展の端緒は1987年にJR各社が誕生した国鉄の分割民営化にあると解説します。「国鉄時代の駅にあったのはキオスクぐらい。民業を圧迫してはならないとする縛りがあった。JR時代になると縛りが解け、客側も目新しいことを待っていた。JRは駅の客を独占してビジネスができることに気づいてしまった」。駅ナカの成功にはそんな背景があるというのです。

帰宅途中に駅ナカで一杯(イラスト)●帰宅途中に一杯

各社が次の段階として目指す「滞在型」としては、JR西日本の新大阪駅も存在感を放っています。昨年から今春にかけ、同社の在来線改札内で最大の商業施設「エキマルシェ新大阪」がオープンしました。たこ焼きや串カツを立食で味わえる飲食店や上方の銘菓などを扱う36店舗が並びます。在来線と新幹線を乗り換える長距離移動客だけでなく、ビジネスマンの集いの場ともなっており、夕方になると店内で帰宅途中に杯を上げる利用者で「ラッシュ」になります。

一方、「駅ナカ」をもっとゆるやかにとらえ、「駅構内」を指すとする説もあります。東京メトロは05年、表参道駅改札外に飲食店や雑貨店を中心とした商業施設「Echika(エチカ)表参道」を開業。ここでも「過ごす」ことが最大のテーマの一つになっています。

パリのシャンゼリゼ通りを模したというフードコートは乗降客だけでなく、資料に没頭したり商談したりするビジネスマンで朝からにぎわいます。ワイングラスを傾けてくつろぐ大人の女性の姿もあり、表参道の場所柄を意識させます。

「買い物も飲食も駅で完了、というのではなく、地上にない場作りをしたかったのです」と運営するメトロプロパティーズの担当者。開業に向け、駅周辺で働く人たちと会議を持ち、方向性を練ったといいます。「高級だが気軽で、快適な空間」。狙いは当初から当たりました。その後も池袋駅に同規模の施設を開業。また、もっと小ぶりの「Echika fit(エチカフィット)」を東京、銀座、永田町駅に構えました。

「駅ナカ」の魅力はますます膨らんでいくでしょう。


毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2016年9月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。