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デジタル遺品 放置せず対応を


故人がパソコンなどに残したデータ「デジタル遺品」がもとで、トラブルが起きたり遺族に損害が及んだりすることがあります。不測の事態にどう備え、対処すればいいのでしょうか。

デジタル遺品に戸惑う女性(イラスト)●株やFXで損失

「夫はパソコンで株取引をしていたようだが、よく分からなくて困っている」。日本セキュリティ・マネジメント学会の萩原栄幸理事は10年以上前、夫を亡くした女性から相談を受け、デジタル遺品の問題にかかわるようになりました。このケースでは、パソコンのパスワードを解析して、株取引や有料サイトの登録を止めるようアドバイスしたそうです。萩原さんは「『デジタル遺品』が危ない」(ポプラ新書)を書いて警鐘を鳴らしましたが、スマホの普及もあり、相談が急増しているといいます。

相談には次のような深刻なケースもありました。

(1)故人がネットで外国為替証拠金取引(FX)をしており、外国通貨を保有していたため、暴落に巻き込まれ1000万円以上の損失を出した

(2)故人がネットオークションをしており、代金は振り込まれていたが、商品を送っていなかったため抗議が来た

(3)自宅で仕事をしていた故人のパソコンに、勤務先から持ち出してはいけないデータが含まれていた。さらにパソコンがウイルスに感染して、データが外部に流出。遺族のもとに弁護士らが調査に来た

いずれも遺族は指摘されるまで知らず、二重のショックになりました。

有料サイトへの登録があったり、通帳のないネット銀行の口座に遺族が気付かなかったりしたケースもありました。遺族がまずなすべきことは、遺品のパソコンとスマホを調べることだといいます。

萩原さんは、放置したままだとリスクの高いものから対応することを勧めています。メールや閲覧履歴、お気に入りをチェックして、銀行や証券会社と取引があるか、ネット通販やネットオークション、有料サイトの利用があるかどうかを確認します。利用があれば関係先に相談し、デジタルの知識がない場合は弁護士などの専門家に頼ってもいいでしょう。

パソコンのパスワードがわからない場合は、パソコンに詳しい人、もしくはデータ復旧の専門会社に依頼する必要があります。ただし、遺族といえども勝手にパスワードを破れば、トラブルになることもあります。事前に相続人全員の了解を得て、弁護士に立ち会ってもらったほうが良さそうです。

●SNS悪用の危険

故人がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やブログをしていた場合も、対応を考える必要があります。ブログやホームページは放っておくと、悪意のある第三者に乗っ取られて悪用される危険もあるのです。相続人同士で故人のサイトをだれかが管理するのか、あるいは閉鎖するか決めます。

ネットの利用者は、日ごろから不測の事態に備えておくことが大切です。まずは見られたくないデータをパソコンに残さないこと。萩原さんは、「年齢にかかわらずエンディングノートを書いて、そのなかでデジタル遺品やパスワードも、遺族に分かりやすいように残したらよい」とアドバイスします。また遺族に遺言状を見せる代わりに、特定のファイルを削除するソフトもあるといい、秘密を守りたい時に利用する手もあります。

復元した写真を見る女性(イラスト)●思い出にも

こうした問題に関心をもってもらおうと、ネット環境に詳しい専門家らが今月、「一般社団法人 デジタル遺品研究会ルクシー」を発足させました。デジタル遺品に関する生前準備の必要性の啓発や、遺品の復旧作業の仲介をします。

中心となったのはパソコンのデータ復旧会社の元社長、阿部勇人さん。東日本大震災の際、亡くなった家族の写真をパソコンから取り出してほしいとの依頼を数多く受けたそうです。「デジタル遺品というと、トラブルになると思われがちだが、亡くなった人をしのぶことにもつながる。ニーズは今後高まるとみられ、残された人が不幸にならない方法を模索していきたい」と話しています。

「故人サイト」(社会評論社)などの著書がある、研究会理事でフリーライターの古田雄介さんは「デジタルならではのリスクは要点を押さえれば怖くない。肩肘張らずに考えてもらうきっかけになれば」と語っています。


毎日新聞生活報道部

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