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乳幼児のネット使用 節度守って


混んだ電車内やスーパーで、スマートフォン(スマホ)で遊ぶ幼児の姿をよく見かけます。IT企業らでつくる「安心ネットづくり促進協議会」の調査では、就学前の乳幼児の64%が、スマホやタブレットでインターネットを利用しているといいます。子供がデジタルにどっぷり漬かると、どんな影響があるのでしょうか。

タブレットに夢中な女の子(イラスト)●「1日2時間まで」に

童謡を聞く。着せ替えごっこをする。仮想世界で動物を育てる……。乳幼児が暇つぶしできる子育てアプリが、スマホにはあふれています。ぐずる子供をあやせるため、利用する親も少なくありません。

「スマホに子守りをさせないで!」。日本小児科医会は2013年にそんな呼びかけをしました。会ではテレビやDVDなども含めて、幼児のメディアの利用を1日2時間までに制限することを提唱しています。スマホで音楽や映像を見せあやす癖をつけると、育ちをゆがめる可能性があると指摘。親子で会話や体験を共有する時間を奪われ、親が子供の安全への気配りがおろそかになることも問題視しているのです。

内海裕美常任理事(小児科医)によると、幼児からスマホを使いすぎて生きたコミュニケーションが少ないと、成長してもスマホ依存になったり、社会性がうまく育たなかったりする恐れがあります。テレビと違い間近で見るため、目への悪影響も大きいとみられます。外遊びが少なくなると運動能力にも悪影響が出ます。小児科医会が3年間啓発を続けてきて、こうした問題点を聞いた保護者はスマホ利用を控える傾向にあるものの、知らないままの人も依然おり、保護者間の差が広がっているのが現実です。

特に親の年齢が下がればスマホとの親和性が高くなります。親の利用を見て子供も積極的に使う場合も出てきます。内海さんは「スマホはおもちゃではないので、保護者がコントロールし、子供が生まれたら保護者自身の生活も見直す必要があります」と指摘します。会では、ネットにこもるのではなく親や友達と遊ぶことを推奨しており、「遊びは子供の主食です」という新たなポスターを制作する予定だといいます。

時間を決めてスマホで遊ぼう!(イラスト)●依存心配しつつ許可

幼児はどの程度スマホを使っているのでしょう。安心ネットづくり促進協議会が昨年12月〜今年1月に郵送で調査したところ、0歳〜小学3年の保護者1184人から回答がありました。未就学児の保護者の64%がなんらかの方法で子供にネットを使わせており、端末別ではスマホが38%、タブレット端末は23%でした。一方、59%が身体・運動機能の発達面について、54%がネット依存を案じており、心配しながらも使用を許している状況が浮き彫りになりました。

また、IT企業のデジタルアーツのネット調査では、3歳以下の子をもつ母親103人のうち8割が、子供が動画を見たり、カメラを起動させたりするなど想定外の使い方に驚いたことがあるといいます。同社は「子育て中のスマートフォン利用ミニガイドブック」を作り、家庭内で使用ルールを決めることが大事だと訴えます。スマホには、時間制限をかけたり通信時間を控えたりする機能制限もついており、活用を提案しています。

気になるのは視力への影響です。文部科学省の学校保健統計調査によると昨年、裸眼視力が「1.0未満」の幼児は26.8%で、10年前の20.3%に比べて増えていました。坪田一男・慶応大医学部教授(眼科)は「屋外で過ごす時間が少ないと近視のリスクが高まります。メカニズムは不明だが、サーカディアンリズム(体内時計)が崩れることも理由のひとつ。夜にブルーライトを受けても体内時計がおかしくなります」と指摘。外遊びの時間を確保し、夜間は使わないようにアドバイスしています。

●活用する保育施設も

限定的ながら、デジタルを取り入れる保育施設もあります。9月9日、東京都内でリクルートの「こどもみらいラボ」セミナーが開かれ、鹿児島県鹿屋市のつるみね保育園の杉本正和園長が保育関係者ら約100人に、デジタルを使った体験教育について説明しました。園は「9割のアナログ保育と1割のデジタル保育」を掲げ、自然豊かな農村という立地をいかしつつ、iPad(アイパッド)端末を用いた遊びを実践しています。

具体的には、テレビ電話や翻訳アプリを使い、米国の高校生や中国の幼稚園生とおしゃべりしたり、山形県の保育園とネット中継で結び、スキーを楽しむ園児たちを雪のない鹿児島の園児が見て楽しんだりします。

表現力や思考力を高めるために、アイパッドに取り込んだ写真や動画をスクリーンに映して発表する「プレゼンタイム」も作りました。農家の子供は、ブタが出産している写真をもとに家での作業を説明。見ている子供たちからも質問が出ました。AR(拡張現実)を使ってデジタル絵本を制作し、自分が色を塗った恐竜が立体的な映像で動くのを見るなど、さまざまな試みをしています。

杉本さんは「最初に端末を使ったときの子供たちのうれしそうな表情をみて、絶対に必要だと思った」と振り返ります。デジタルはコミュニケーションを深めるためのものであり、週1回15分程度に限定しているといいます。

情報化時代でデジタルの活用が進んでいますが、幼児期は意識して節度を守らせることが大切でしょう。


毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2016年11月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。