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新たな和菓子の魅力


和菓子は企業や高齢者が贈答用に使う古典的なもの。そんなイメージはないでしょうか。実は和菓子が復権しつつあるのです。和生菓子の総小売金額は3年連続で増加。コンビニエンスストアで手軽に購入できるようになったことが大きな要因ですが、老舗の和菓子店が伝統を守りつつ、さらに次世代につなげようと新しい動きに出ていることも要因です。

「和菓子の自由な楽しさをもっと現代にひろげたい」。10月中旬、三越日本橋本店(東京都中央区)に全国から老舗和菓子10店が集まりました。「本和菓衆(ほんわかしゅう)」という会を作り、互いに切磋琢磨しながら、新しい和菓子を作っている店々です。ほとんどが創業100年を超えていますが、現状に危機感を持つ30〜40代の若手店主らが中心です。先代から代替わりしたあと、伝統を受け継ぐだけでなく、今の暮らしにふさわしい和菓子作りを目指しているのです。

和菓子を選ぶ女子高生(イラスト)●人気小説とコラボ

イベントは今年で4回目。参加店は若者を中心に50万部以上売れている人気小説「和菓子のアン」(坂木司、光文社)とコラボしたオリジナル和菓子を制作しました。

和菓子を作る様子もモニターで見られ、全国から来た店主が客に直接菓子をアピールするなど、工夫を凝らしています。

もともと、三越日本橋本店で伝統的に開かれている「全国銘菓展」後の懇親会で、若手が集まって和菓子を活性化しようと盛り上がったのがきっかけ。三越は「洋菓子に比べると和菓子のお客様は年齢が高いというイメージがありましたが、『和菓子のアン』を読んだ高校生が買い物に来るなど、客層は幅広いです。顔が見えるので個人個人の店主にもファンがつきます」と評価します。

発起人の田中屋せんべい総本家(岐阜県大垣市)の田中裕介社長(42)は「親世代は売れるお菓子を大量生産し、ルーティンで作りました。自分たちは和菓子をおもしろくしたかったんです。自分たちが楽しく作れば、いろいろなお客様がついてくる」と意気込みます。

田中屋は1859年に創業し、当時から続くみそせんべいが看板ですが、「本和菓衆」では、フランス産の栗ペーストを練り込み、ローストカカオをのせて焼き上げた「栗とカカオのおせんべい」を売り出しました。田中さんは「和菓子がおもしろい、和菓子作りが格好良いと伝わり、和菓子職人になりたい若い人が出てくれば、これほどうれしいことはありません」と話しました。

工夫は地元に戻っても続けられます。松江市の創業142年の和菓子店、彩雲堂は、ハロウィーンに合わせた生菓子を10月に地元で限定発売しました。山口周平専務(41)は「日本人はお祭りが好き。世の中の動きにいち早くアンテナを張り、老舗だけどおもしろいと思ってもらえれば」と狙いを語りました。

和菓子をほおばる女子高生(イラスト)●370年ぶりに新商品

三重県亀山市の深川屋は江戸時代の創業以来、「関の戸」という1種類の餅菓子しか作ってきませんでした。当主が襲名するときは、「味を変えるべからず」という文書に血判を押すほどです。しかし、14代目当主の服部吉右衛門亜樹さん(51)は一昨年、370年ぶりとなる新商品「お茶の香 関の戸」を出しました。三重県や農協と提携して、地元の伊勢茶を配合した餅菓子です。店には反対意見もありましたが、確実に客層は新しくなったといいます。

新しい和菓子は他の店にも広がりつつあります。創業から667年続く塩瀬総本家(東京都中央区)は、2年ほど前から人気キャラクターをあしらった可愛いまんじゅうを販売。和菓子になじみがなかった人たちを取り込み、人気商品となりました。取締役会長の川島英子さんは「昔ながらの作り方や材料を守りつつ、時代に合った新しいものを作っています」と話します。

東京都江東区で200年以上くず餅を作っている船橋屋は、くず餅が発酵食品であることに注目。植物性の乳酸菌からなるサプリメントを開発中です。真空パックにすれば賞味期間も延びます。芥川龍之介らの文人に愛された味が、海外でも楽しめるようになるかもしれません。青木優海・経営戦略企画室長代理は「和菓子は低脂質で、健康志向が高まる中、注目されています。こういう商品を入り口に興味や関心をもってもらえれば」と語ります。

●伝統忘れぬ職人魂

ただ、新しい和菓子といえども、伝統を忘れないことも重要です。服部さんは「和菓子とは日本の四季や風景を表した日本茶を引き立てる脇役で、洋菓子とは違います。その本分を忘れないようにしつつ、魅力を引き立てるようにしたいです」と気を引き締めていました。


毎日新聞生活報道部

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