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思い伝わる手書きの手紙


手紙の価値が見直されています。色あせた紙や手書きの文字にぬくもりを覚える人も多いでしょう。言葉を簡単にやり取りできる時代だからこそ、季節の節目や記念日にはお気に入りのペンと紙を選び、気持ちを伝えてみてはいかがでしょうか。

母からの手紙を読む娘(イラスト)●家族結ぶ絆

「これは宝物なんです」。会社員の松田明日香さん(30)は、テーブルの上に手紙の束を広げました。2005年4月の大学入学から11年間、毎週欠かさずに父から届いたはがきの数々。松田さんが好きなキャラクターの切手を選んで貼ったものもあります。

<仕事はだんだん責任が重くなってきて、おもしろくなるとともにプレッシャーも大きいでしょう>

<ガンバッテいるみたいですが、寒さが続いているので心配してます>

毎週届く父の文字。最初はうっとうしかったけれど、社会人になったころから受け止め方が変わってきたといいます。東日本大震災後の計画停電の中、真っ暗な部屋に戻ると、変わらず父から手紙が届いていました。「心細い時も仕事がうまくいかない時も、見守ってくれている人がいると思うと頑張れた」と松田さんは振り返ります。

以来、心細くなったり迷ったりすると、無造作にしまってあった父のはがきや時折届く母からの便箋を読み返すようになりました。両親は仕事が忙しく、家族が離れて暮らすことも多かったといいます。特に仲が良かったわけではないけれど、家族を結ぶ確かな絆。「液晶の文字では感じられない愛情が伝わってくる。何にも代え難い、プライスレスな宝物です」

昨年2月に調査会社「ネオマーケティング」が全国の20〜50代の男女800人に実施した調査では、7割以上が手紙を受け取った際に相手への好意度が高まると回答しました。最もうれしいと思う相手からの手紙は、あえて金額に換算するなら「3000円以上」が3割を超えました。

一方で、2人に1人は過去5年間に手紙を書いたことがなく、受け取る頻度も「5年に1回以下」が半数を占めました。手紙を書いたり受け取ったりすること自体が珍しくなったからこそ、希少価値が高まったともいえるでしょう。

母に送る手紙用に便箋を選ぶ娘(イラスト)●復権後押しの動き

手紙文化の復権を後押しする動きもあります。日本郵便は昨年7月に明治大と産学連携で「手紙の利用促進プロジェクト」を開始。12月には電子メールやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に親しんだ若者に手紙の魅力を伝えようと、学生が考案した寄せ書き型レターセット「ふみGRAM」(248円)を発売しました。

大きさや色、形が異なるメッセージカードをパズルのピースに見立て、0から7の番号が振られた封筒で1枚ずつ送ります。カードを組み立てるとアルファベットや数字、ハートやトロフィーなどの形になります。投函する日をずらせば、受け手は説明書きをもとに届いたカードを少しずつ完成させて楽しめるというわけです。

メールやSNSで当たり障りのない短文の送受信に慣れた若者にとって、いきなり便箋に手紙を書くのはハードルが高いかもしれません。でもハレの日にメッセージを寄せ書きするのは手軽です。日本郵便でプロジェクトを担当した宇治田修一さんは「ふみGRAMは写真映えするので若者が手に取りやすいのでは。これからの時期、入試や卒業に合わせて激励メッセージにも使ってもらいたい」と期待します。

15年にリニューアルオープンした文房具店「銀座・伊東屋」(東京都中央区)は、売り場に手紙を書くためのスペースを用意しました。紙に凹凸の文字や模様を浮き彫りにするエンボッサーや万年筆も利用できます。オリジナルの切手を貼って店内のポストに投函してもいい。季節に応じた便箋やカードの選び方、用途に応じた文例も多数展示されています。

伊東屋の広報担当者は「紙やペンを選ぶところから相手のことを考えるのが手紙。文面から得られる情報だけでなく、選んで書いて投函する時間や感情のすべてを書き手と受け手で共有できる。手書きの文化をもっと身近に感じてもらいたい」と話しています。


毎日新聞生活報道部

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