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ふるさと納税 返礼品競争はいま


ふるさとへの恩返しや、地方行政を応援する制度として導入されたはずの「ふるさと納税」。実際には、寄付に対するお礼がカタログギフトのようになり、自治体間の返礼品競争が過熱しています。総務省は「お礼の品は寄付額の3割以内」と通知しました。豪華な返礼品は、これからどうなるのでしょう。

ふるさと納税は、居住地以外の自治体に寄付すると、寄付額の大部分が所得税と住民税から控除される制度。実質的な自己負担2000円で、所得額に応じた一定の限度まで、寄付先の自治体からさまざまな返礼品を受け取れる状態になっています。この「お得感」から利用者が急増し、寄付総額は制度が導入された2008年度に81億円だったのが、16年度は約3000億円に上ったとみられます。

総務省は、高額な返礼品による自治体間の寄付獲得競争に歯止めをかけようと、今年4月、返礼品の調達価格を寄付額の3割以内に抑えるよう全国の自治体に通知しました。5月には、商品券▽電子機器や宝石類▽価格が高いもの――といった返礼品を見直していない約100自治体に対し、個別に見直し時期や方向性を確認しています。

総務省は「そもそも返礼品を準備することを求める制度ではありません。寄付を当て込んで予算を組んだ自治体もあるかもしれないけれど、制度の趣旨に反する返礼品は是正してもらう必要があります」と説明します。制度の趣旨に沿って全く返礼品を送っていない自治体は、16年度は全国の9.4%しかありませんでした。

地域で異なる返礼品(イラスト)●通知後に駆け込み

返礼品には地元の特産品が多く採用されています。ふるさと納税による15年度の寄付額が全国1位だった宮崎県都城市。返礼品のうち5割が宮崎牛などの肉類、3割が地元特産の焼酎でした。これまでは寄付額の5〜6割を返礼品に充てていましたが、総務省の通知を受け6月から3割に減らしました。従来は寄付1万円に対するお礼だった品を、寄付2万円への返礼品に変更。寄付件数の8割を占める1万円の返礼品として、上限ギリギリの3000円相当の品を新たにラインアップに加えました。

市総合政策課は「総務省の通知後、4〜5月は『駆け込み寄付』といえる状況で、寄付額は前年同期比2倍になりました。6月以降はどれだけ減るか正直読めません」といいます。とはいえ、担当者は「返礼品は都城のPRになり、地域活性化にもつながっています。これからも質の高い返礼品をそろえ、『肉と焼酎の町』を全国にアピールします」と寄付を集める意欲満々なのです。

●見直しはまちまち

三重県志摩市は、真珠製品が「資産性が高い」として総務省に見直しを求められていますが、「真珠は市の特産品で水産物。宝飾品ではない」(市総合政策課)と主張し、取り扱いをやめていません。現在も寄付額100万円への返礼品として送っている「アコヤ真珠のネックレスとイヤリングのセット」の調達価格は、「3割を超えていない」そうです。3割を超えていた返礼品については見直しを検討する方針です。

市内で製造されるパソコンを返礼品に採用している山形県米沢市では、16年度のふるさと納税35億円のうち、金額ベースで約8割の納税者がパソコンを希望しました。総務省には「見直す方針」と回答したものの、「いつになるのか時期は示せません」(市総合政策課)。自治体の見直し時期や対応はまちまちです。

●町への興味に期待

返礼品の上限引き下げで、どんな影響が出るのでしょう。ふるさと納税ポータルサイト「さとふる」の運営担当者は「もらえる量が減っても、少ない自己負担で価値あるものが手に入ることに変わりはありません。ふるさと納税を『しない』という判断にはつながらないでしょう」と指摘します。さとふるの昨年1月のアンケートでは、「ふるさと納税をした理由」(複数回答)の1位は「特産品がもらえるのはお得」で、77.5%に達していました。担当者は「寄付をきっかけに、その町に興味を持ち、使い道に関心を寄せるようになります」と話します。

ふるさと納税による収入の活用方法は、放課後に学校で塾講師らが宿題を見る「子ども学校塾」や、小中学校の給食費の全額助成などの事例が知られています。高齢者の移動支援や、太陽光発電に生かしているケースもあります。また、寄付者に実際に足を運んでもらう仕組みを整えることで、観光客増加による経済効果だけでなく、将来的な移住者増加につなげたいと青写真を描く自治体もあるのです。

返礼品を継続か取りやめかで悩む男性(イラスト)◇取りやめで寄付額9割減

返礼品の原資は、自治体や国庫に納められた税金です。ふるさと納税の利用が進めば進むほど、居住地の自治体は税収が減るのです。しかも減収になった分のうち従来は平均4割程度、今後は最大3割が、返礼品に形を変え、寄付者に払い戻されます。ふるさと納税は、一部の納税者を対象とする事実上の「節税ノウハウ」となっているのが現実です。

このなかで返礼品を廃止した自治体もあります。埼玉県所沢市は「返礼品を競い合うのは、ふるさと納税の本来の趣旨とは違う。原点に立ち返る」と、今年4月に返礼品を送るのをやめました。もともと、ふるさと納税の収支は赤字だったのが、返礼品廃止後の4〜5月の寄付額は前年同期比で90%減と大きく落ち込みました。

返礼割合の上限を3割に制限したところで、その範囲内で返礼品競争が続くのは自明です。「減るのはある程度予想していました。今後は市の事業をより理解してもらえるよう努めていきます」(市財政課)。市には「なぜやめたんだ」と残念がる声と、決断に賛同する声の両方が寄せられているそうです。

火山噴火による全島避難を経験した東京都三宅村(三宅島)は、ふるさと納税の制度が始まって以来、一度も返礼品を送っていません。「検討中で、方針が決まっていないから」(村企画財政課)ですが、それでも15年度は10人から計87万円が寄付されました。島外の人からの純粋な応援とみられます。

自治体の事業に共感した人が、返礼品目当てでなく応援を継続し、住民との交流へと発展していけば、理想的な形なのかもしれません。


毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2017年7月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。