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女性だけの墓人気


納骨堂や霊園で「女性用」の区画が目につくようになりました。永代供養つきで価格も抑えたものが多いです。

●永代供養で低価格

静岡県の女性(64)は2年前の秋、埼玉県鳩山町に特定非営利活動法人スノードロップ(同県坂戸市)が運営する共同墓を予約しました。2人の子には離婚した元夫と自分の二つの墓の管理で負担をかけたくなかったのですが、実家の墓に入るのも違和感がありました。永代供養墓を探すうち「自分らしい最期」とあるホームページが目に留まり現地を訪ねました。田畑を見下ろす寺の敷地に庭園風の共同墓があり、ベンチで眺める風景が気に入って女性用の「なでしこ」を予約しました。「"女性用"にこだわりはなかったけれど、明るくこぢんまりとしていてひかれました。宗派は問わなくてもお寺なので安心感もあります。死後は子どもに連絡してもらうだけ。ほっとしました」

自分のお墓について考える女性(イラスト)スノードロップは、自分らしい埋葬を求める声や、身寄りが無く不安を抱く声が高まってきたため設立されました。2014年にできた「なでしこ」は、ガラスに花が彫られ女性らしいデザインの記念碑が建ちます。15人が生前予約し、親族により埋葬されたお骨も18件あります。離婚した母の遺骨用に求めた人、夫婦で訪れデザインを見て決めた人、夫に黙って予約した人もいます。使用料は個別日程納骨の場合で8万6000円。予約すると近況報告が郵送され、合同慰霊祭にも参加できます。

●夫がいても

佐賀市の大興寺も3年前、宗派を問わない庭園型墓地「佐賀ふれあいパーク」に女性専用集合墓「女性たちの碑」を設けました。御影(みかげ)石の記念碑をつるバラが囲みます。20年前、寺を継いだ田中浩樹さん(53)が直面したのは檀家(だんか)の減少。経済的負担やしきたりがわからないとの理由でお骨を手元に置いたままの人も多かったです。「人の集まる寺に」と模索するうちに、相談に来たり友人を誘ったりする女性が増えました。「日常の仏事を実際に務めるのは女性。形は変えても弔いの文化は残る。けん引役は女性だと思います」。埋葬済みの6件を含め40件の申し込みがありました。中には、死後は自由にしたいと夫に伝えたうえで予約した人もいます。永代供養料29万4000円のほかに埋葬料などがかかります。

新宿瑠璃光院白蓮華堂(東京都渋谷区)は昨年、女性専用区画を100区画設け完売しましたが、9割が子どもや離別した元夫が購入しています。JR新宿駅から徒歩5分のビルに、グランドピアノのある如来堂やカード式の参拝室などを備える納骨堂があります。七回忌の法要後は京都府宇治市の霊園の専用区画に納める形で50万円。見学に訪れ、介護の不安や「迷惑をかけるであろうおいやめいにお金を残したいです」と話す女性もいました。担当者は「こうした不安に応えることも大切にしたいです」と話しました。

お墓参りをする家族(イラスト)●「負担かけぬ」重視

日本葬送文化学会長の長江曜子聖徳大教授によると女性の墓はかつて、男性が多く戦死した世代の女性たちが建てた常寂光寺(京都市右京区)の志縁廟(びょう)に始まり、その後の世代のシングル女性たちがガーデニング式の霊園で始めた共同墓など、横のつながりから生まれたものでした。「近年増えたのは普通の霊園や納骨堂の一部の女性向け区画。個人単位に一定のニーズがあり、お墓を売る側が選択肢を用意したのではないでしょうか。ひとり暮らしの女性がペットと暮らすマンションもあり、ついのすみかの延長と考えればおかしくはないです」と話します。

家庭でみとりや供養が行われた時代は身近に死を学ぶことができたけれど、今は葬儀の簡素化や子どもに負担をかけないことが優先されがちです。「墓は生きている者にとっても悲しみを癒やし生を考える場。旅立つにはそれを手伝う人も必要。迷惑をかけないことだけでなく、残される人に命の大切さを伝えることを忘れないでください」と提案します。

第一生命経済研究所主席研究員の小谷みどりさんも「縁をつなぐことを考えてください」と話します。立地や価格で人気のある一部を除くと子孫への継承を前提とする従来の墓は売れているとはいえず、「女性専用区画が増えた背景には、家族の多様化に加え供給側の事情もうかがえます」。以前の女性たちの墓は、生前に仲間の関係があったが、今はそれも薄いそうです。「墓は残された人にも追慕の装置として大切。また、墓を買う以前に経済的な不安を持つ高齢女性の方が多いです。無縁墓ばかり増えるより、かつて日本の集落でも行われていたような、皆で入れる墓があればよいのではないでしょうか」と話しました。


毎日新聞生活報道部

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