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ツイッターが産後を救う


赤ちゃんの夜泣きに悩むママたちが、すっぴんにパジャマ姿で集い、本音でおしゃべり――。そんな「夜泣き小屋」が、ネット上の仮想空間にあります。「ツイッターが産後うつを救うことを伝えてほしい」というメールをもらい、取材を始めました。

子供の夜泣きに悩む母親(イラスト)●欲しいのは「同志」

「親世代や先輩ママからの『昔はこうだった』『いずれ楽になる』というアドバイスが、かえって苦しい時もあるんです。だからといって同情してもらっても何も解決しません」。そう訴えるのは東京都内の会社員。ツイッター名はうまきさん(35)です。5月に長女(1)の育児休業から復職しました。少子化や核家族化の影響で、初めて触れる赤ちゃんが我が子という人は少なくありません。「いい母親」になるためのアドバイスは世の中にあふれています。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で見かける友人たちのカラフルな離乳食や手作りの育児グッズに、小さな罪悪感を抱えた経験がある人もいるでしょう。

「妊娠前からの友人に育児の弱音は吐けないし、現実のママ友に心配をかけるのも怖いんです。結局きれいごとを言ってしまい、悪い母親の自分を見せることができないんです」。2児の母、うまきさんは「同じ時間軸で悩みを抱え、本音を言ったり経験を語り合ったりできる同志がほしいのです」と強調します。

ツイッターでは、同じ月齢の子を育てる者同士でつながることができます。うまきさんが勧めるのは、育児や子どもについての投稿を専用とした「育児アカウント」の作成。例えば夜泣きで起きたら「夜勤発生」とつぶやくと、すぐに反応が来ます。「この世界に泣いている我が子と自分が2人きりなのではないかと錯覚するほど孤独な時間に、あちこちで夜勤が発生していると思うと気が楽になるんです」

ツイッターが産後を救う(イラスト)●交流会でも「共有」

ツイッターで知り合った友人が実際に顔を合わせて交流する「オフ会」も各地で開かれています。記者も、うまきさんが主宰するオフ会に連れて行ってもらいました。よちよち歩きの子どもを連れた女性4人が、おしゃべりに花を咲かせていました。なぜ彼女たちは見知らぬ相手との交流に居場所を求めるのでしょうか。

「夫はすごく忙しい仕事で産後1週間で出張に。夜中3時ごろに子どもが泣き叫んでどうしていいか分からず、もう死のうかなと思いました」

たれぞうさん(26)が真剣な表情で語り始めると、年上の3人が「本当に大変そうだったよね」とうなずきます。「ただねぎらってもらいたいんです。『今が一番大変だよ』とか『でも子どもはかわいいよね』みたいな励まし、みえはいりません。認めてもらってつらい気持ちを共有すると、ゆっくりでももう一歩進んでみようかなと前向きになれるんです」

●「弱い自分」漫画に

今春、「夜泣き小屋」という漫画が話題になりました。宮城県の30代女性、かねもとさんが自身の育児経験をもとに描き、SNSで3万件以上拡散されました。「授乳してもダメ、抱っこしてもダメ、置いてもダメ」。夜泣きの我が子を抱っこして家の中を歩き回りながら、せめて楽しい空想を、と思いついたそうです。かねもとさんは「現実には小屋は作れないけれど、ツイッターはオンラインの夜泣き小屋になり得るんです」と話します。

「夜泣き小屋」の魅力は、誰でも飾らない自分をさらけ出せる点です。出入りも自由で、緩く広くつながれます。顔が見えない状態で本音を吐けるツイッターも、最初から「弱い自分」を認め合ったうえで、気が合う相手と関係を築くことができます。うまきさんは「ツイッターで出会った友人はママ友ではなく、子ども以外の話もできる友人なんです」と強調します。

子どもを抱きながらスマートフォンを見ている親の姿を不快に感じる人もいるかもしれません。「授乳中は子どもの目を見て」というアドバイス、一度は聞いたことがあるはずでしょう。だが、こんな善意が、育児に悩む母親を追い詰める場合があるのです。小児科医の森戸やすみさんは「これだけ広く生活に浸透しているスマホを禁じるのは非現実的。小さな子を抱えるお母さんは、ただでさえ自分を責めがちです。スマホは外の世界とつながる貴重な手段になるのです」と指摘します。

ただし、ツイッターで得られるアドバイスや情報が正しいとは限りません。気休めにはなっても、無条件で信じ込むのは危険です。情報の取捨選択は利用者自身に委ねられているのです。「育児に正解はない」と森戸さん。どの子も正解です。ありのままの我が子を受け止めるための手助けとして、ツイッターは大きな可能性を秘めているのかもしれません。


毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2017年12月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。