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シルバーで働く


働くことを通じたシニア世代の生きがい作りのために始まった「シルバー人材センター」が、「本格的な仕事を提供する場」へと変わりつつあります。介護や保育など人手不足の分野を中心に、センターからの「派遣」として働く人が増えているのです。

シルバー人材って?(イラスト)●介護や保育業務も

シルバー人材センターからの派遣が増えたのは、2015年の労働者派遣法の規制緩和で、60歳以上は派遣期間の制限を受けないことになったためです。センターは定年がないため、90歳を過ぎた会員もいるなど長く働けるのです。12年に1万4753人だった派遣の就業者数(実人数)が16年には5万3410人まで増えました。派遣契約では、最低賃金や労働者としての権利が守られています。

業務は多岐にわたります。スーパーやコンビニエンスストアでの品出し、レジ業務、清掃、総菜の調理補助など、地方や中小零細の人手が集まりづらい企業からの希望が多いそうです。

都市部では介護や保育業務のニーズがあります。全国シルバー人材センター事業協会の担当者は「現役世代を支えるための介護や保育の補助業務開拓に力を入れています。保育士資格はあるもののブランクがある人、資格はないが子育て経験を生かして働く人が活躍しています」と話します。国も、介護や保育の派遣業務開拓に補助金を出しています。

●受け入れ側も歓迎

埼玉県北本市の特別養護老人ホームでは、市のセンターから20人が派遣されています。施設職員は「人手不足で、なかなか新人が来ないなか、シルバー会員がいてくれて助かる。年代も入所者に近く、話し相手になります」と歓迎しています。

12月初旬、奥泉三千子さんの仕事に同行しました。夕食時の午後5〜7時が勤務時間で、1グループ10人を施設職員と奥泉さんの2人で担当します。午後5時、食堂に10人分のお茶や名札を用意し、集まった入所者の手を消毒し、エプロンをつけていきます。一人一人の名前を呼びながら、「はい、お茶どうぞ。もうすぐご飯ですからね」とお茶を配るのです。その間、職員は介助が必要な入所者に食事を食べさせています。職員は資格が不要な業務に追われることなく、介助に集中できるのです。

午後5時半ごろ、調理された食事が運ばれてくると、一気に忙しくなります。職員と2人で、のみ込む力が弱い入所者には食事を切り分け、ご飯やおかゆ、みそ汁を器によそいます。入所者によって食事の硬さが違うため、顔と名前を覚えて、その人に合った状態の食事を素早く出します。食後は食器を乾燥機に入れ、掃除を済ませます。奥泉さんは「テーブルを拭く時も、お茶を出す時も、一人一人に声を掛けながらやると、やりがいを感じます」と話しました。

保育の現場でも、活躍しています。埼玉県新座市の光第二保育園で働く牧喜代美さん(64)は、化粧品メーカーを定年退職後、市の広報を見てシルバー人材センターに登録しました。メーカーで働いていたころは、始発から終電まで働いていた時もありました。「シルバー人材センターは、働く時間が短く、プレッシャーもなく、気楽さがあります。長く続けられるのもよいです」といいます。

週3日、午後3時半から午後6時半まで、0歳児を中心にミルクをあげたり寝かしつけたりオムツを替えたりしています。牧さんが入る時間は、お迎えが集中し保育士は多忙です。2人の娘を育てた経験を生かし、子どもの様子を見てオムツを替えたり、絵本を読み聞かせたりします。

山本恵子園長は「牧先生は頼れる存在。早番の保育士が上がった時間帯でもあり、助かっています。子どもたちもなついています」と感謝します。牧さんも「(資格の有無で)できることとできないことを、保育士が把握していてカバーしてくれます。小さい子はかわいく、元気をもらえるのです」とやりがいを感じています。

シルバー人材派遣が老後の生きがいに!(イラスト)●課題は人手不足

仕事が拡大するシルバー人材センターですが、課題は人手不足です。60歳以上人口が増加し続けているのに、会員数は09年をピークに減少傾向にあります。定年年齢が上がり、企業で働き続ける人が増えているうえ、シニア世代が楽しめる余暇も増えました。一方で、少しでも稼ぎたい人にとっては、労働時間の制限がネックです。会員不足で、仕事の依頼がセンターにあっても断るケースもあるといいます。

センターでは、高齢者が集まる場で説明会を実施したり、登録までの手続きを早めたりするなど人材確保の努力をしており、成功事例を全国で共有しています。全国シルバー人材センター事業協会の担当者は「草むしりなどがシルバーの仕事で、ホワイトカラー系の仕事はないという大いなる誤解がまだあります」と話していました。


毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2018年1月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。