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食中毒対策は念入りに


気温が上がるこの時期、食中毒対策を忘れたくないものですね。最近は、生の魚介類に付く寄生虫アニサキスによる被害が話題になりましたが、弁当づくりや常備菜の作りおきも注意が必要です。

アニサキスの食中毒報告は、厚生労働省によると2016年に124件ありました。07年の6件から急増しています。法令改正で13年からアニサキスによる食中毒が届け出対象になり報告件数が増えたためです。また、生の魚介類の流通の多様化も一因といわれています。新聞報道後、著名人がテレビ番組で経験談を語り、ネットなどで注目されました。

食中毒は、アニサキスのような寄生虫のほか、細菌・ウイルスでも起き、対策は異なります。東京都健康安全研究センターの食品医薬品担当者は「調理器具を経由し菌が別の食材に移る2次汚染や、加熱が不十分なため起きる事例もあります」と正確な理解を呼びかけています。

もしかして食中毒!?(イラスト)●寄生虫は「冷凍」で

刺し身は4度以下での保存が基本ですが「買ってきたらすぐ食べることです」と担当者は呼びかけます。

以前は腸炎ビブリオ菌による被害が多かったそうですが、冷温流通の普及で減りました。一方、アニサキスは寄生虫による食中毒の大半を占めています。魚介の内臓にいて、火を通すか十分冷凍することで死にますが、温度管理が悪いと内臓から筋肉部分へ移り、刺し身やすしを食べた人が腹部に激しい痛みを訴えるのです。原因の多くはサバですが、サケ、サンマ、アジ、イカ、カツオなど、日本近海でも150種類以上の魚に寄生することがわかっています。対策は(1)マイナス20度で24時間以上冷凍する(2)見て確認し取り除く(3)完全に火を通す――ことです。「酸に強いのでシメサバでも報告されている。塩やワサビで死ぬこともありません」と担当者は警鐘を鳴らしました。

●室温解凍にリスク

細菌やウイルスは、冷凍しても増殖しないだけで死滅はしません。解凍時にしみ出るドリップ(汁)が包丁やまな板に飛び散り、別の食材につく2次汚染が多いと考えられています。冷凍した肉や魚介を室温で解凍するのは避け、冷蔵庫で。急ぐときは電子レンジの解凍機能を使うか、密封容器に入れ流水にあてましょう。

●熱に耐える菌も

今年3月、東京都世田谷区の私立幼稚園では、前日に調理したカレーライスを昼食に提供したところ、園児28人が嘔吐(おうと)や下痢の症状を示し、ウエルシュ菌が原因と報告されました。加熱で生存に適さない環境になると菌が"殻"のような芽胞を作り熱に耐えます。火を止め50度くらいになると、芽胞から発芽し、菌が活動を再開するのです。専門家は「一度火を通したので大丈夫、と安心する人が多いですが、温度が下がる過程で、菌が増えやすい温度帯(30〜47度)を短時間で通過するのが望ましいです。早く冷まし、粗熱が取れ次第冷蔵庫に入れ、食べる前は、よく混ぜて十分に加熱してください」とアドバイスします。

肉類の加熱は75度で1分以上。目安は、肉の色の変化ですが、ハンバーグやかたまり肉は串を刺して出てくる汁が透明かどうかで判断しましょう。

◇作りおき、だしで炊かない

日々の台所で押さえたいポイントを2人の料理研究家に聞きました。

飲食店に関わる仕事も多い河合真理さんは「まな板は食材ごとに分けています。木製なら毎日、天日干しし、他の素材なら2日に1度は塩素系漂白剤で殺菌しています」。調理中に使うタオルや布巾類も必ず、手拭き用、食器用、調理台用に分けます。ぬれると菌が増殖するので、布類は常に洗って乾かし、まめに新しいものに替えるようにしたいものです。

弁当作りの際にも食中毒対策は念入りに(イラスト)調理の際は「食べ切れる量」を心がけ、余った場合は冷めてから小分けして冷蔵庫へ。「箸をつけた残りをそのまま冷蔵庫に入れるのは危険。保存の前に必ず再加熱を」と河合さんは呼びかけます。解凍したものは特に傷みやすいので一度に食べる分ずつ小分けして冷凍しましょう。

弁当作りは特に心配なものです。弁当レシピの本が多い長谷川りえさんによれば、汁気の多いものはよく汁を切る▽水蒸気がこもらないよう冷ましてから詰める▽詰める時は手で触らず、箸やスプーン、ラップを使う――のが基本となります。

「保冷のため、冷凍したゼリーや果物を入れる方法もありますが、水滴が出るので容器に直接入れるのは避けましょう」と長谷川さん。生野菜は洗って水気を拭いて入れるのが基本です。プチトマトはヘタの根元の雑菌が取れにくいので、ヘタは取って入れます。練りものや海藻は傷みが早いので、塩や酢、梅干し、大葉などと合わせ、加熱できるものは火を通すほうがいいでしょう。

忙しいときに備え、保存のきくおかずを作っておく「作りおき」レシピが人気ですが、やはりこの時期は気をつけたいものです。保存容器は必ず3分間ほど煮沸消毒し、冷蔵庫にしまっておいたものは弁当に入れる前はもちろん、1〜2日に1度は加熱するほうがよいでしょう。

覚えておきたいのが、だしで炊くと、より傷みやすくなるということです。「たとえばヒジキは、酢やトウガラシなどで調味を。切り干し大根もこの時期はだしで炊かず、戻してから酢やしょうゆなどを加えて一煮立ちさせ、漬物のようにして保存しましょう」と専門家は勧めています。


毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2017年6月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。