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空き家の管理


空き家(イラスト)家が子や孫への「負の遺産」になりかねない時代です。人口減少に伴い、空き家は全国で増える一方。親が高齢化して死亡し、相続するケースが多いです。誰も住まないからと放置すれば、後々大きなツケが……。

●ふるさと納税利用

「まず郵便受けの中を見て……。玄関の鍵は? よし、ちゃんと閉まっている」

山あいの盆地に位置する埼玉県秩父市。市シルバー人材センターの登録メンバー、黒沢友一さん(77)が、1軒の平屋建て住宅の周囲を丹念に点検しています。ここが空き家になったのは数年前。住んでいた女性が介護施設へ移り、所有者は東京都内で暮らしています。ひび割れを透明テープで応急手当てした窓ガラスや草刈りされた庭。所有者の依頼でセンターが家を手入れしてきた痕跡が、随所で確認できました。

市財政課によると、市内の住宅約3万戸のうち空き家は1割ほどです。センターに所有者が独自に管理を依頼するケースもありますが、「放置された空き家は、木が隣家の敷地まで伸びたり建物が倒壊しかかったりと、地域住民に迷惑をかけてしまいます。放火などの事件現場になる恐れもある」と頭を悩ませた市は2016年、空き家の見回りサービスをふるさと納税の返礼品に加まえした。作業の担い手はセンターです。市は「空き家の管理に役立つうえにシルバー世代の働く場づくりにもなります。故郷に貢献できる返礼品として、ふるさと納税本来の趣旨にも沿っています」と期待しています。

同様の返礼品は近年、増える一方です。全国の返礼品を紹介するウェブサイト「ふるさとチョイス」の検索欄に「空き家」と入力すると、該当件数は256件(6月20日現在)もありました。寄付する金額によって見回りの頻度などに差はあり、秩父市は3万円以上ですが、1万円前後の寄付で利用できる自治体もあります。

背景には、地方か都市かを問わず、人口減少で空き家の増加が止まらない現実があります。国が5年に1度行う住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は13年に820万戸と、30年前の2.5倍に上りました。住宅総数の中の空き家比率は13.5%になります。居住者の入院や死亡などで管理や撤去が必要な「その他空き家」は、このうち約4割を占めているのです。

動画で確認(イラスト)●委託し動画で確認

民間サービスを利用して空き家を管理する人もいます。東京都江東区の男性会社員(53)はその一人です。

ともに90歳近い両親は福島県相馬市で暮らしていましたが、父は認知機能が衰え始め、腰を痛めた母は買い物にも行けず「家に食べ物がない」と電話でこぼすことも。「このままでは無理だ」と昨夏、首都圏のサービス付き高齢者住宅に2人を転居させました。一人息子として「両親が新しい所になじめなければ帰れるよう、相馬の家をそのままで残しておいてやりたかった」といいますが、自身は家族も仕事もある東京を離れられないのです。インターネットで見つけたのが全国で空き家管理事業を展開する「日本空き家サポート」でした。

庭木の手入れや室内への風通し、水回りの点検など、実際の作業は、運営会社のL&F(千葉市)が業務提携する地元の不動産業者が担います。作業ぶりは動画で撮られ、パソコンやスマートフォンで会員専用サイトから見られるので安心感もあります。料金は月1万800円。男性は「自分で相馬に通って手入れするよりお金も時間もずっと節約できます」と実感しています。

ただ、悩みもあります。いずれ両親が他界し、家を相続した時のことです。「アパートなどに改修して活用するか、別荘として自分で使うか……。売れればいいけれど、仮に売れても田舎なので二束三文でしょう」と男性は苦笑しました。

L&Fによると、契約した顧客の大半は、親の介護や入院により空き家になった実家を親の死後に相続しているといいます。L&F社長は「空き家が負の遺産になるという問題は誰もが直面し得るのです」と指摘します。相続放棄した財産でも次の所有者が決まるまでの管理責任は負うとした民法の規定や、更地は税負担の軽減措置(住宅用地特例)が適用されず、固定資産税が最大6倍に跳ね上がることを理由に、「いざとなれば相続を放棄するか建物の解体をすれば解決すると、安易に考えない方がいいでしょう」と語ります。

●行政代執行は23件

家がいかに大きな「負の遺産」になり得るかを示す話があります。高松市の香川大に近い住宅地に建つ5軒続きの木造長屋。近隣住民から「今にも倒れそう」などの苦情が寄せられてきました。市は適正な管理を所有者に繰り返し求めたのですが改善しなかったとして、15年施行の空き家対策特別措置法に基づく「行政代執行」で建物を強制撤去する方針を決めました。議会で承認され次第、工事の準備に入る予定です。

市によると、登記上の所有者は数十年前に死亡しているため、3人の孫が存命している法定相続人として管理責任を負っています。行政代執行された場合、市の見込みで1200万円になる工事費は全額3人に請求されます。国土交通省の調べでは、同法施行後から今年3月31日までに実施された行政代執行は、既に全国で23件に上っています。

空き家問題に詳しい中井洋恵弁護士は「空き家になる前に売却や活用のめどを付けておくことが重要です。今住んでいる家、買おうとしている家を将来どうすべきか今すぐに考え始めてほしい」と早めの対策を呼びかけています。

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◇空き家対策特別措置法に基づく流れ
自治体      空き家所有者への影響
(1)助言・指導
 ↓
(2)勧告    固定資産・都市計画税の負担軽減(住宅用地特例)の対象外に。
 ↓
(3)命令    空き家所在地を公表。
 ↓       違反すれば50万円以下の過料。
(4)行政代執行 代執行に要した費用を全額負担。


毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2018年7月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。