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子どもの脱毛


「7歳からできる」「3歳からOK」などと子どもに施術可能だとうたう脱毛サロンや美容皮膚科が話題になっています。どんな子どもが利用しているのでしょう。体に悪影響はないのでしょうか。

腕の毛に悩む女の子(イラスト)●母親の誘いで

東京都墨田区に住む女子中学生は先月、小学3年生の妹と一緒に地元のエステティックサロンに初めて行き、腕の脱毛をしてもらいました。1年ほど前から気になり始め、自分でそったり母親にそってもらったりしていました。部活動はテニス部に所属。腕や足を出すので、さらに気になってきたのです。

エステに誘ったのは母親です。「自分が毛深くて苦労しました。娘たちは今から脱毛を始めたほうが、後で楽だし毛穴もきれいになると思ったのです」。姉妹は少し尻込みしたが、施術を受けてみると痛みもなく「すっきりした!」と妹。女子中学生も「受ける前と肌の感触が全然違う。また来たい」と喜んだそうです。母親は「情報はインターネットでよく調べました。値段も手ごろ。美容室に連れてくるような感覚で、特別なこととは思いません」と話します。

子どもの脱毛を手がける医療機関・エステサロンは大手、中小含めて数十社はあります。エステ大手のTBCが運営する「エピレ」(全国13店舗)は、2011年の開業当初から7〜15歳の「キッズ脱毛」を扱っています。11年は新規顧客のうちキッズ脱毛は0.6%に過ぎませんでしたが、昨年は7.6%まで割合が増えました。夏前の需要が多い大人とは違い、水泳やバレエの習い事、体育の授業など子どもが肌を出す機会は一年中あり、季節を問わずニーズがあるのです。キッズ脱毛利用者のうち中学生は約3割。10〜12歳が約半数を占め、7〜9歳が約2割います。

「毛の濃さに悩み、周囲からの指摘を気にして訪れる。深刻に悩む子どもも多いです」とTBC広報の担当者。また、子ども時代に悩んだ経験がある母親が「娘に同じ思いをさせたくない」と訪れるケースも同じくらいあるそうです。一方で、おしゃれ感覚で通う子どもも少なくありません。「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の影響もあって、今の子は美容に敏感。母親世代は脱毛やエステに親しみがあり、娘が通うことへの心理的ハードルが下がっているのです」と説明してくれました。

同店の施術は、出力の弱い光を毛根に当てる方式です。2カ月に1度の来店を勧め、4〜6回の施術で効果が感じられるそうです。事前のカウンセリングや施術方法、効果、価格といった内容は大人と同じです。異なるのは、カウンセリングや施術に保護者の同伴が必要なことです。また、日焼けをしていたり皮膚に傷や虫さされがあったりすると施術を受けられませんが、子どもはその頻度が高いので毎回よく確認する必要があるそうです。

「脱毛した肌をうれしそうに見る姿は大人の女性と変わらず、こちらもよかったなと感じます」と担当者は話します。ただ、エピレはキッズ脱毛をテレビCMなどでは宣伝していません。ニーズには応える半面、「毛があるのはよくない」という価値観を子どもに植えつけないためだといいます。

●処理後は保湿を

ムダ毛処理にはいろいろな方法があります。家庭でできるのは、カミソリや電気シェーバーでそる▽毛抜きで抜く▽除毛クリームを使う▽脱毛ワックスで取る▽家庭用脱毛器で取る――などです。ほかにエステや医療機関での脱毛があるが、毛根などの構造にダメージを与えることは医療行為とされ、いわゆる永久脱毛は医療機関でしかできません。

小児皮膚科医である馬場直子・神奈川県立こども医療センター皮膚科部長の元にも「アトピーがあるが脱毛してよいでしょうか」「自分で脱毛して傷になってしまいました」などの相談が時折あるそうです。

脱毛について馬場さんは「肌に大きなマイナスはないけれど、プラスもありません。肌を傷つけずに脱毛するのは難しく、やらないに越したことはないのです」という立場です。カミソリでそるのが簡単ですが「顕微鏡で見れば肌は傷だらけ」。それでも脱毛したければ処理後に保湿剤を塗ることを勧めます。「エステは業者によって『ピンきり』でお勧めできません。半永久的に脱毛したいのなら医療機関で、家庭で処理するなら電気シェーバーを使うのが肌にやさしいのではないでしょうか」

一方、脱毛に詳しく日本美容皮膚科学会理事を務める尾見徳弥・日本医科大客員教授は「強く勧めはしませんが、毛のことで悩んだり自信を失ったりするくらいなら脱毛してもいいのではないでしょうか」ととらえます。

毛抜きやワックスで抜くと毛のう炎という毛穴の炎症を起こしやすく、脱毛クリームはかぶれやすいです。毛の脱色はさらに肌荒れを起こしやすいものです。また、家庭用脱毛器は、分類上は「雑貨」の扱いで「医療機器のような電気的安全性の評価も受けていません」と尾見さん。家庭で行うなら電気シェーバーやカミソリが肌にやさしいといいます。カミソリの場合はよく泡立てたせっけんをつけて、刃は風呂場に放置せず数日使ったら替えます。ただ、肌に炎症があると悪化の恐れがあり、「医療機関での脱毛が最も肌への影響が少ないです」と話します。

日本皮膚科学会では美容皮膚科・レーザー指導専門医を認定しており、信頼性が高いです。最寄りの専門医は学会ウェブサイト(https://www.dermatol.or.jp/modules/spMap/)で探せます。数は少ないですが国の承認を受けた脱毛用レーザー機器もあり、「その機器ならトラブルが起きないということではないですが、安心材料にはなる」と尾見さんは助言しています。

本人が気にしたら脱毛もありかも?(イラスト)●本人が気にしたら

国民生活センターによると、20歳未満のエステ・医療機関で受けた脱毛による健康被害の相談件数は、08年からの10年間で計43件あります。「施術で低温やけどを負った」「施術の刺激が原因でかゆみや発疹が出た」などですが、10件を超えた年はありません。

毛の濃さに関しては、親心から先走って案じることに馬場さんは懸念を示します。「実際には周囲の人には気にならないことも多いです。親が気にすれば子どもは気になってしまいます。心で思っても口にはしないで、本人が気になった時に初めて一緒に考えてあげてください」とアドバイスしています。


毎日新聞生活報道部

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