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キャッシュレス


現金のみ支払いに戸惑う外国人(イラスト)買い物をする際、現金を使わずに電子マネーやクレジットカードで支払う「キャッシュレス決済」が全国各地で広がりを見せています。近い将来、消費者が現金や財布を持たなくなる時代がやってくるかもしれません。

●現金×、レジなし

店先の看板には「×現金 ◎クレジットカード ◎電子マネー」の文字。外食大手のロイヤルホールディングス(HD)が2017年11月にオープンした「ギャザリングテーブルパントリー」(東京都中央区)は、現金の支払いを一切受け付けない飲食店です。客は備え付けのタブレット端末でメニューを注文し、会計時には従業員をテーブルに呼び出し、スマートフォンの決済用アプリや交通系ICカード、クレジットカードを専用の端末で読み取ってもらい、精算します。現金を取り扱わないため、店内にレジはありません。

「現金を取り出す必要がないので精算がスムーズ」と評価するのは、交通系ICカードで会計を済ませた都内の31歳の男性会社員です。鉄道やバスなどの乗り降りに使う交通系ICカードは、事前に入金(チャージ)しておくことで買い物にも使えます。男性は「全国のいろいろな店で使えるようになればもっと便利です」と言い、店を後にしました。

ロイヤルHDの野々村彰人常務は、キャッシュレスの目的を「従業員の業務負担軽減と効率性向上のため」と話します。人手不足の解消は飲食業界の喫緊の課題です。「ITを活用して省力化をいかに実現するか、将来に備える実験的な取り組みです」と語ります。

"現金支払いお断り"を前面に掲げることに、当初は葛藤もあったそうですが、開店から1年近くたち、「現金を無くしたことで、売り上げ管理の作業数が減りました。時間をかけていた釣り銭の準備や現金輸送の手間も省力できました」とメリットを強調しました。

●世界遺産でも

世界遺産として知られ、多くの外国人観光客が訪れる高野山真言宗の総本山金剛峯寺(和歌山県)では、利便性向上や混雑緩和のため、昨春に米国企業の決済システムを導入しました。お守りなどの代金や一部の拝観料をクレジットカードで決済できるようにしました。寺の担当者は「現金を持たない外国人が多く、支払いができないという相談もありました。先進国の日本ではキャッシュレスが浸透していると思い込んでいるようです」と話します。

●海外と比べ遅れ

経済産業省によると、国内のキャッシュレス決済比率(15年時点)は2割弱です。一方、海外では韓国9割、中国6割、米国5割と、現金離れの傾向は顕著です。日本は治安が良く、偽札の流通が少ないなど、安全かつ容易に現金が使えることがキャッシュレス化が進まない要因とされています。また、ロイヤルHDの野々村さんが「小売店や飲食店にとっては新たに発生するコスト負担が不安要素です」と言うように、店舗側はキャッシュレス決済に対応した端末の導入コストや新たな決済システムを運用する企業に支払う手数料などがネックになっているのです。

こうした現状に危機感を抱いた政府は今年4月、「支払い方改革宣言」を発表しました。キャッシュレス決済比率を「大阪・関西万博」が開かれる25年に向けて4割に到達させ、将来的には世界最高水準の8割を目指す方針を打ち出したのです。今後、中小の飲食店に必要な端末を配布するなどキャッシュレス決済普及に向けた施策を検討しています。

海外で急増しているのがスマホを活用した「QRコード(二次元コード)決済」。縦横に配置された白黒模様のQRコードをスマホアプリで読み取り、売り手と買い手の間で決済情報をやりとりする仕組みです。売り手が店頭やタブレット端末にコードを表示するタイプと、買い手がスマホに表示するタイプがあります。国内ではIT大手の「楽天」(東京都世田谷区)や無料通信アプリを手がける「LINE(ライン)」(東京都新宿区)などが参入し、規格が乱立しています。政府はQRコードの読み取り方式の統一に向けても積極的に取り組む方針です。

神社でキャッシュレス化(イラスト)「『けしからん』と、おしかりの声を頂くこともありましたが徐々に浸透してきました」。そう話すのは愛宕神社(東京都港区)の権祢宜(ねぎ)、松岡里枝さん。愛宕神社では、14年から社殿のさい銭箱の横にクレジットカード決済に対応した「キャッシュレスさい銭箱」を年始限定で設置しました。今年は楽天のスマホ決済システム「楽天ペイ」も追加しました。「さい銭泥棒の被害が後を絶たないので対策になります。外国人が日本文化に親しみを持つきっかけにもなるのでは」と松岡さんは期待を抱いています。

●家計管理しやすく

キャッシュレス化の流れに消費者はどう向き合っていけばいいのでしょう。ファイナンシャルプランナーの風呂内(ふろうち)亜矢さんは「キャッシュレス決済は支出を漏れなく記録できるため、家計の管理はしやすいです。いつ、どこで、何にお金を使ったか忘れてしまうこともなくなります」と指摘します。また、購入額に応じたポイント還元サービスを活用できる場合があります。一方で、管理ができずに支出が増えてしまう人もおり、風呂内さんは「急に切り替えるのではなく、自分が管理できる範囲を逸脱しないように使うのがいいでしょう」とアドバイスしてくれました。


毎日新聞生活報道部

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