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AIでコーディネート


洋服のコーディネートに悩む女性(イラスト)ファッションの世界でも、人工知能(AI)によるコーディネート提案などのサービスが生まれています。最新事情を追いました。

●「店員」が提案

「友達申請ありがとうございます!ショップ店員のMika(ミカ)です」。スマートフォン(スマホ)の無料通信アプリ「LINE(ライン)」にメッセージが届きました。送り主は人工知能ショップ店員です。

ファッションに特化したAIを提供する「ニューロープ」(東京都渋谷区)が開発したミカは写真共有アプリ「インスタグラム」に投稿されたコーディネートを学習。それを基に、同社が運営するウェブサイトで扱う約100万点のアイテムの中から着こなしを提案してくれます。

例えば、自分が持っているスカートをスマホで撮影して送信、画面上で「フェミニン」「ボーイッシュ」など10項目の中から好みのテイストを設定すると、そのスカートに合うトップスや靴、バッグなどが提案されるのです。それぞれの類似商品を紹介するサイトにつながり、購入もできる仕組みです。価格は1000円台から4万円台までと幅広いです。

学生時代にさまざまなファッションを楽しんでいた社長の酒井聡さんは、服装が制限された会社員時代に「自分らしさを出すにはどうしたらいいだろう」と考えるようになったそうです。「自分をどう見せるか、というのは生き物として本質的な部分。ファッションは影響力がある分野で、市場も大きい」と2014年に起業し、17年10月にミカの運用を開始しました。「スタイリングの提案は正解がないので非常に難しいです。それでも多くの人に受け入れてもらえる提案ができるよう精度を高めていきたいです」。現在、大手アパレルなど約10社の通販サイトと提携しており、30代女性の利用が多いそうです。

●天気×好み

その日の天気に合わせた服装をAIが提案してくれる無料サービス「テンキュール」を提供するのは、デジタルマーケティング会社「ルグラン」(東京都渋谷区)です。

プロデューサーの山本了大さんは「いい靴を履いて出かけたら雨が降ってきてテンションが下がった、といった気象と服装のミスマッチによる不快感を解消するのが狙いです」と語ります。働く女性を対象に17年5月にサービスを開始したところ、20〜50代の幅広い世代で利用者が増え続けています。

サイト上で好きなスタイルを選択する「マッチング」を行い、AIが利用者の好みを学習します。気象情報会社「ハレックス」(東京都品川区)による約1キロ四方、全国約40万地点ごとの気象データを分析して3時間ごとの天気、気温、降水量を表示、その日の天候と利用者の好みに合ったコーディネートを810種類のイラストの中から提案するのです。「デニムとシャツのシンプルなコーデ。雨が気にならない足元で」といった具体的なアドバイスもしてくれます。3日分の気象情報が提示されるため前日にコーディネートを決めることも可能です。

さらに、提案されたコーディネート画面で「保存」をクリックすると、その服装をカレンダーに記録します。実際着た服の写真を上書きすることもでき、後でカレンダーを見れば、どの日にどの服を着ていたかひと目で把握できるのです。「先週も会った人に同じ服を着て会うことは避けたい」という働く女性たちの声を参考にしました。今月から英語、中国語、韓国語版の運用も開始しました。今後は世界の気象データも取り入れ、全世界対応のサービスにする予定です。

●持続可能な産業に

AIで洋服をコーディネート(イラスト)一方、テクノロジーを取り入れたファッション教育に力を入れる専門学校もあります。昨年開校した「東京ファッションテクノロジーラボ(TFL)」(東京都渋谷区)では、大学生から40代会社員まで幅広い世代の受講生がデザインやビジネスを学んでいます。

11月には、韓国の3D(三次元)デジタルデータソフトを扱える人材を育成するコースを新設します。服の素材感などを反映した実物そっくりの3Dモデルが画面上で作成できるソフトです。活用すれば通販サイト上でのバーチャル試着体験が可能になり、サンプル品製作の経費削減や服の大量廃棄をなくすことができます。TFL代表の市川雄司さんは「環境に負荷を与えている産業なので、テクノロジーを取り入れることで持続可能な服作りにつながります」と説明してくれました。

一般財団法人日本ファッション協会企画事業部の伊藤史江課長は「デジタル化やAIの登場でファッション業界は今がまさに転換期。利用者にとって便利なサービスが生まれていますが、一方で自分の好きな情報しか受け取らず目利きの力やセンスが磨かれない懸念もあります」と指摘します。「ファッションに限ったことではないが、AIやIT(情報技術)に頼りすぎず、お店で実際に商品を見たり触ったりしていいものを直接見る機会も持つようにしてほしいものです」と話しています。


毎日新聞生活報道部

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