美容を目的とした医療サービス「美容医療」に関するトラブルが増えています。特に、安い値段を提示しながら高額の施術を強引に迫るなど販売方法や契約、広告に問題のある相談が各地の消費生活センターで目立っています。「規制を強化すべきだ」との声も高まっていますが、消費者はどのように気をつけたら良いのでしょう?
●広告と異なる料金
国民生活センターによると美容医療の契約で最近、こんな典型的な相談がありました。
<事例1>
近畿地方に住む20代の女子学生は脂肪吸引を希望し、インターネットで「80万円のところモニター価格25万円」とうたった広告を見つけました。クリニックを訪れると料金は80万円だと告げられ、「払えない」と伝えても「若いうちに受けると太らない」などと何度も説得され、「今日なら50万円にする」といわれて契約してしまったそうです。
<事例2>
南関東地方の40代女性は、ネットで見つけたクリニックで「目の下の膨らみやたるみ、ほうれい線を目立たなくした方がいい」と100万円の手術を勧められました。断ったところ「モニターになったら安くできる。いくらなら払えるか」と問われ、50万円で契約。その日のうちに金融機関で現金を引き出し、渡してしまったそうです。
このほか、広告の値段と違う▽数時間、勧誘され続けた▽ローンを組まされた――など、強引で説明不足、高額という契約の相談が相次いでいます。
こうした問題に取り組むある弁護士は「美容医療を受けても周囲に言いたがらない人が多いのです。誰にも相談できずに悩み、そこにつけ込む形で法外な料金を請求しています」と指摘しています。
各地の消費生活センターに寄せられた美容医療に関する相談件数は、2009年度には1740件でしたが、14年度には2465件に増えました。相談のうち、およそ半数が販売や契約、広告に問題がある内容でした。
「美容クリニックを訪れるきっかけ」となった広告媒体は、09年度から14年度の間にホームページなどといった電子広告が約2倍に急増し、主流となりました。一方、雑誌広告は半減しました。
契約した人の平均年齢は36歳。男女別では女性が約4分の3を占めました。
そもそも美容医療は、いわゆるエステティックとどう違うのでしょうか。
●中途解約の対象外
美容医療とは「医療機関による脱毛、脂肪吸引、シミ取り、二重まぶた手術、包茎手術など、美容を目的とした医療サービス」のことです。「医療」とあるように医師が施術を行います。法律上の資格要件を必要としないエステティックとは規制内容が異なります。
例えばエステは、特定商取引法に基づいてクーリングオフや中途解約の対象となっていますが、美容医療は対象外です。一方、美容医療は広告で医療法上の規制を受けますが、エステには同法上の制約はありません。
特商法は悪質商法の被害防止のため商取引を規制しています。現在、見直し作業が消費者委員会の専門調査会で続いています。委員の間では、トラブルが続く美容医療も特商法でエステと同様の規制対象とすべきだとの意見が根強くあります。
●契約は持ち帰って
消費者はトラブルを避けるため、何に気をつけるべきなのでしょうか。
前述の弁護士は「とにかく納得しないうちは契約しないこと」と強調します。「美容医療に緊急性はほとんどないはずで、訪れたその場で即日、契約して施術を受けるのはおかしいと考えてほしい。見積書をとってメリット、デメリットを検討するのが本来のあり方です」と指摘し、「クリニックの提案は一度、持ち帰る勇気を」と訴えています。
国認定の適格消費者団体・消費者機構日本(東京)は、「急がない医療なので、施術の効果の程度やリスクなどを検討するため、必ず(他の医療機関で相談する)セカンドオピニオンを得るべきです」と提案しています。
公益社団法人・日本美容医療協会は、毎週木曜日の午後7時〜同8時半に電話相談(03・3239・9710)を受け付けているほか、ホームページ上でオンライン相談室(http://www.jaam.or.jp/soudan/top.html)も開設しています。
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