お役立ち情報/情報ものしり帖


チーズの魅力


近年、チーズの国内消費量が伸び続けています。切り売りする専門店が増え、スーパーでの品ぞろえも国産品・輸入品ともに充実してきたからです。

色々な種類のチーズ(イラスト)●輸入品など多様化

「いらっしゃいませ! 冬限定のトリュフ入りチーズが入りましたよ」

東京都中央区の「メゾン デュ フロマージュ チェスコ高島屋日本橋店」は、フランス産を中心に輸入チーズなど約100種類をそろえています。パーティー用に数種類をまとめ買いした40代の女性会社員は「この店は初めてだけれど、チーズは大好き。よく専門店で購入します」と話しました。

「成熟したものが好きとかヤギチーズがいいとか、ここ数年、こだわりのある人が増えました」と野木智子店長。ナチュラルチーズの売れ行きが好調だといい、くせがなく、グラタンなどの料理に使いやすいコンテやゴーダ、いろいろな種類が入ったアソートも売れ筋です。客単価は2200〜2300円で、購買層は40〜50代が多いそうです。

国内のチーズ消費量は増え続けています。農水省の調査によると、2017年度は33万8000トンに上り、1990年度の15万3000トンから倍以上になりました。

チーズは、ナチュラルチーズとプロセスチーズに大別されます。ナチュラルは、牛やヤギ、羊の乳を乳酸菌や酵素で発酵させて水分を除いたもの。熟成させていない「フレッシュ」▽表面が白カビに覆われた「白カビ」▽カビを植え付けて熟成させた「青カビ」▽ヤギの乳を使った「シェーブル」▽酒や塩水で洗って熟成させる「ウオッシュ」▽長期間熟成させ、凝固物を脱水する際に圧搾した「セミハード」▽同じく脱水の際に加熱して圧搾した「ハード」――の7タイプがあります。一方、プロセスはナチュラルを加熱・加工したもので、くせが少なく保存性に優れているのが特徴です。消費量はナチュラル、プロセスとも伸びています。

いったいなぜなのでしょう。

「日本人の中にチーズの味が浸透してきたことに加え、EPA(経済連携協定)の発効を視野に、EU(欧州連合)諸国が積極的に売り込みをかけてきているからです」。輸入業者などでつくる「日本輸入チーズ普及協会」(東京都千代田区)の日置(ひおき)健吾専務理事は、そう明かします。

日本とEUは7月にEPAに署名し、来年3月までの発効を目指しています。チーズの輸入には現在29.8%と高い関税がかけられていますが、EPAでは、日本はEU産チーズに初年度2万トンの低関税輸入枠を設け、16年目には3万1000トンにまで拡大します。枠内税率を段階的に引き下げ、16年目に撤廃する目標です。歴史が長い欧州産チーズは主力輸出商品で、地理的表示(GI)保護制度により、26品目が知的財産として指定されています。

チーズを食べる女性(イラスト)●栄養価も高く

加えて、「完全栄養食」といわれるほど栄養価が高いのもチーズ人気の理由です。たんぱく質や脂肪、ミネラル、ビタミンが豊富で、皮膚や粘膜を健康に保つビタミンAを多く含むことから美肌効果があるとされます。カルシウムの吸収効率は小魚や野菜より高く、骨粗しょう症予防にも一役買っています。「お年寄りは少量でも良いものを選ぶ。今の日本人に合っているのではないでしょうか」と日置さんは指摘します。

●こだわりの国産を

輸入品が攻勢をかける一方で、国産チーズも負けていません。小規模なチーズ工房は06年の106カ所から昨年には306カ所と、11年間で3倍になりました。酪農だけでは経営が厳しく、付加価値を付けるために事業を拡大した人や、チーズ作りの奥深い魅力に引かれて他業種から参入する人が多いそうです。自家牧場で放牧した牛の乳だけを使ったり、カフェを備えたりと、個性的な工房も目立つようになりました。「国産はうまみがあるといわれ、海外のコンクールで入賞するなど技術も向上してきました」と、国産メーカーなどでつくる「チーズプロフェッショナル協会」(東京都千代田区)の吉安由里子理事は太鼓判を押します。農水省は今年度からEU産チーズの輸入増加に対抗するため、チーズ工房の規模拡大や、生産性向上に向けた施設整備に対する補助事業を本格的に実施し、国産を後押ししています。

増えたとはいえ、日本人1人当たりの年間消費量は2.6キロにとどまります。世界トップのデンマーク(28.1キロ)、2位アイスランド(27.7キロ)、3位フィンランド(27.3キロ)と比べると、まだ10分の1以下なのです。ただ、吉安さんは「逆に伸びしろがあり、日本食に合ったメニューの開発などで、さらにチーズ文化を定着させたいものです」と前向きです。


毎日新聞生活報道部

Copyright© 2003 - 2018 Kyoei Fire&Marine Insurance Co.,Ltd. All rights reserved
※掲載されている情報は2018年12月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。