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デジタル終活


自分が死んだら、パソコンやスマートフォンのデータはどうなるのでしょう。残された家族にもめ事が起きないようデジタル分野に気を配り、日ごろから対策を考えておきたいものです。何からどう手をつければいいのか、専門家に教わりました。

デジタル終活について考える男性(イラスト)●中高年にこそ

デジタル分野の終活のことを「デジタル終活」といいます。「デジタル終活は、終活のファーストステップになります」と弁護士の伊勢田篤史さんは話します。いま家族の死後、デジタルデータに関わるトラブルに直面しやすいのは、デジタル分野に不慣れな高齢者ではなく、日常的にデジタル機器を使う40〜50代だからです。葬儀や墓には現実味がなくても、パソコン、スマホの「生前整理」は手をつけやすいでしょう。

伊勢田さんによると、デジタルデータを遺族が整理する際、3段階の壁があるといいます。▽パソコン、スマホを開くためのパスワード▽必要なデータの保存場所▽本人が希望するデータの処理方法の三つを、いずれも把握しておく必要があります。

自分のデータ管理の状態を見直し、万一の時に家族に分かるようにこの三つをあらかじめまとめておくことから、デジタル終活は始まるのです。

●パスワード管理

まずパスワード。一般的には他人に教えないものですが、自分が急死した場合を想定し、重要なものをリストアップしましょう。家族がパソコンを開き、必要なデータを見つける手がかりになります。利用している会員制交流サイト(SNS)やネット通販、写真などのデータ共有サービスといったウェブサービスの名称とアカウント、パスワードも同様です。

データを整理する対象は、主に▽パソコンやスマホ▽SNSやウェブサービスの二つに分かれます。両者の違いは相続できるか否かにあります。伊勢田さんによると、パソコン、スマホは「物」として相続できます。そのため、中にあるデータも遺族が処分可能です。一方、ウェブサービスは規約に基づきデータが本人のみに帰属するケースがあり、遺族でもデータを取り出したり、アカウントを削除したりできないことがあります。利用者にとってはアカウントとパスワードさえあれば使えるウェブサービスの便利さが、本人以外にはハードルになるわけです。

●保存場所を伝える

次の段階として、「パソコンやスマホ」と「SNSやウェブサービス」それぞれで、自分がどんなデジタルデータを持っているか挙げてみましょう。その中から家族に必要なデータを分類するためです。写真や住所録、電子メール、趣味や健康上の個人的な記録、仕事の書類などが考えられます。

残したいものは保存場所を伝えます。見せたくないものは、見つかりにくいように保存します。伊勢田さんによると、昔の写真や健康上の記録などを見られたくないというケースがあるそうです。

データ量が多い場合、すべてを分類するのは難しいでしょう。また、データは日々増えていくものです。必要なデータだけ選んで保管場所を決めておくのが現実的な方法でしょう。/p>

ウェブサービスは、規約を確認した上でどのサービスにどんなデータがあるか、利用者が調べて整理します。自営業で仕事のデータをウェブサービスに預けている場合、家族が引き継げなかったり、利用料を払い続けてしまったりする恐れがあります。個人情報が削除できず、いつまでもネット上に残ることもあります。

ネットをよく使う人はさまざまなサービスに登録しているはずで、利用者本人であってもすべて確認し、整理するのは手間がかかりすぎます。伊勢田さんは「有料サービスと個人情報を公開しているサービスだけ整理すればよいでしょう」と助言します。

注意が必要なのはネット上の金融商品の扱いです。購入した本人が亡くなり相続の話し合いをした後になって、ネット証券に100万円の金融商品を持っていたことが分かったり、亡くなった時点から金融商品の価格が目減りしていたりすると、遺族の不和の元になります。運用でマイナスになり得る契約をしている場合、「ネット上に金融商品を所有している」と必ず家族に伝えておきましょう。

家族への伝え方として誰にでもできてお勧めなのは、ノートに書いておくことです。終活用のエンディングノートを使ってもいいです。ポイントは、削除や保存といった希望するデータの処理方法とともに「なぜ、そうしてほしいのか」を家族へのメッセージとして書いておくことです。箇条書きからは感情が読み取れません。本人の気持ちが伝わると、相続トラブルが丸く収まることもあるそうです。

遺言を動画で(イラスト)自分で書くのは難しいという人には、動画で「遺言」を残すサービスがあります。2016年から遺言動画のサービスを提供する映像制作会社グランツ(東京都渋谷区)の村上倫弘社長は「遺言の気持ちの部分を動画で補いたい」と話します。法的には動画だけの遺言は認められませんが、「遺言書に動画を加えることで故人の気持ちが伝わり、家族が相続で争わず、仲良くできればいい」と願っています。

●カード停止も一策

家族が突然亡くなって、データについて何も聞いていなかった場合はどうすればよいのでしょう。パソコン、スマホはパスワードが分からなくても、有料の復元サービスでデータを取り出せる可能性があります。窮余の策はクレジットカードを止めることです。支払いが続くことは防げます。ウェブサービスは、内容を知らないまま安易に契約を解除すると、データにアクセスできなくなることがあるので注意したいものです。

絶対に家族に見られたくないけれど、削除もしたくないデータがあったら――。伊勢田さんは「必要なものを取り出したら、家族にハードディスクを壊すよう頼んでおきます」と話し、「自分の死後、頼んだ通りにやってくれるような関係を家族と築くことも終活の一つ」と指摘しました。一番大切なのは人間関係なのです。


◆家族に伝えておくこと
・使用中のサービス名とそのアカウント、パスワード
・どこにどんなデータを保存しているか
・希望するデータの処理方法
・ネットで売買している金融商品と金融機関名


毎日新聞生活報道部

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