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自動ブレーキ


いわゆる自動ブレーキとして知られる「衝突被害軽減ブレーキ(AEB)」。危険を察知して被害を軽減・回避する仕組みで、新車搭載を義務付ける国際基準が、日本を含めて来年初めにも発効しそうです。国内では普及が進む半面、技術開発は途上にあります。

シニア向け運転講習会(イラスト)●センサーの限界

「ハンドルを動かさず、ブレーキを踏まないようにしてください」。東京都江戸川区の葛西橋自動車教習所で「日本自動車連盟」(JAF)が開いたシニア向けの運転講習会。時速約20〜30キロの車が約20メートル先の障害物(緩衝材)に次々とぶつかると、驚きの声が上がりました。「止まると思ったのに、怖い……」

参加者が体験したのはAEBの機能です。いわゆる自動ブレーキで、国土交通省によると、2017年に生産された普通・軽乗用車の約8割についています。なぜ車は止まらなかったのでしょう。JAFの担当者は(1)逆光(2)運転者によるハンドルやブレーキの操作――の二つが考えられると説明しました。

AEBは、車に取り付けられたセンサーが障害物を検知し、運転者が回避操作をしない場合には危険と判定して制御します。まずコントロールパネルに「ブレーキ!」などと表示され、警告音が鳴ります。それでも運転者が何もしなければブレーキが作動します。逆に、どこかの段階で運転者がハンドルを動かしたりブレーキを踏んだりすると、「人が操作している」と判定して機能しないことがあるというのです。

センサーには2眼カメラや赤外線レーザー、ミリ波レーダー(電波)などが使われ、複数を組み合わせた車もあります。性能に大きな違いはないとされますが、2眼カメラは人間の目と同じように対象を捉えることができる一方、豪雨や霧、逆光など視界を遮る気象条件に弱いです。ミリ波レーダーは雨や霧の影響を受けにくいのです。

検知を難しくする要因としては(1)背の低い子ども(2)近距離の飛び出し(3)フロントガラスやセンサー部分の汚れ――もあり、注意が必要です。カメラのレンズ部分などについてJAFの担当者は「汚れ具合によっては交換が必要になります。自分で拭いたりせず、専門業者にメンテナンスをしてもらった方がいいでしょう」と勧めます。

●対人は時速35キロで

また、検知条件が整っている時でも車が安全に止まれる速度差には限界があります。たとえば、体験に使われた「SUBARU」(スバル)は対車で時速差50キロ、対人(身長1〜2メートル)では35キロまで。時速50キロで走行し、前方に止まっている車に運転者が気づかなかった場合でも、衝突前に止まることができるとしています。

講習会の体験車は2眼カメラを使ったシステム。「人の目と同じで、見えないと作動しない」という説明に、参加者からは「見えないところをカバーしてほしい」「100%ではないと思うと怖い」などという声が上がりました。東京都墨田区の小林進さん(69)は「CMで止まるところを見ると、『安全』というイメージを持ってしまいがちですが、実際に乗ってみて、頼るわけにはいかないと感じました」と話します。JAFの善養寺雅人係長は「(自動なら)機械に任せた方がいいのではないですかと言われることがありますが、それは間違い。(AEBは)支援する機能で、運転は人がするものです」とクギを刺しました。

自動ブレーキを過信せず安全運転を(イラスト)◇「いつも作動と誤解」4割

「自動ブレーキ」という言葉の認知度は高いです。JAFが16年2月、車の所有者約3万5000人を対象に実施したアンケートでは、81%が「知っている」と回答しました。その一方で、作動しない場面などの注意点を知っているのは25%にとどまりました。国民生活センターには「AEB付きの新車を購入したのに事故を起こした。作動しないことがあるとは知らなかった」などと、自動ブレーキに関する相談が12年4月から17年11月までに119件寄せられています。

業界団体の「自動車公正取引協議会」(東京都千代田区)のアンケートでも、「あらゆる状況で作動する」と誤解している人が約4割いました。自動ブレーキという言葉自体が「過信」を招いているのではないだろうか――。懸念した協議会は昨年11月、運転支援機能の広告表示に関するガイドラインを新たに作成しました。テレビCMなどでの自動ブレーキの表記や、自動運転の技術レベルで1と2に当たる機能付きの車について、「自動運転」と称することを1月から禁じました。国交省も昨秋、現在販売されているレベル2までの車については運転者が操作する必要があるとして、自動運転ではなく「運転支援車」に統一しています。消費生活アドバイザーの辰巳菊子さんは「ニュースで見聞きする自動運転のレベルと、自分の車の機能が結びつかず、過大な期待をしてしまうのではないでしょうか。特に支援機能のニーズがある高齢者に対して、どこまで説明できるかが課題です」と話しました。

一方、AEBの普及に伴って事故の被害が軽減していることも分かってきました。交通事故総合分析センター(東京都千代田区)は昨年9月、車同士の追突事故を対象に自家用AEB搭載車の事故率を初めて分析。未搭載車に比べ、死傷事故件数(10万台当たり)が53%低いという結果が出ました。

自動車評論家の川端由美さんは「今は技術の変わり目。買う時は機能を確かめ、時々でいいので講習を受けてほしい。人間の心掛けとシステムを組み合わせ、事故ゼロをめざさなければならなりません」と話しました。

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◇自動運転の技術レベル(国土交通省の資料から)

<レベル0>
 運転支援装置(システム)なし
<レベル1>
 一つのシステムが一つの操作(ブレーキや車線維持など)を支援
<レベル2>
 複数のシステムが複数の操作を支援
<レベル3>
 システムがハンドルやブレーキ、アクセルを操作するが、システムの要求があれば運転者が対応
<レベル4と5>
 基本的にシステムが全ての操作を行う
 ※現在、国内で市販されているのはレベル2までです。「先進安全自動車(ASV)」「安全運転サポート車(サポカー)」などと呼ばれます。衝突被害軽減ブレーキ(AEB)のほか、ペダルを踏み間違えた時に加速を抑制する機能や、設定速度で走行して車間距離を一定に保つ装置などがついています


毎日新聞生活報道部

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